2つの特区をつなぐ多摩川スカイブリッジ
3月12日、羽田空港のそばに1本の橋が開通します。多摩川の上にかかる多摩川スカイブリッジです。この橋の開通で先端医療を研究する大学や企業がつながり、新たな先端医療都市が生まれると言います。
多摩川スカイブリッジは、東京側にある羽田空港の第3ターミナル付近と神奈川県の川崎市を繋ぐ全長675mの橋です。東京都と川崎市がおよそ300億円をかけて整備しました。
これまで、羽田空港から川の南側に向かうには、大きく迂回する必要がありましたが、この橋の開通で、公共交通機関での移動時間は1時間からわずか10分程度に短縮されます。
橋の南側にあるのが国の特区になっている「キングスカイフロント」と呼ばれるエリアです。富士フイルムの医薬品研究開発拠点をはじめ、ベンチャー企業や大学など医療の研究開発に関わる70以上の機関が集まっています。
そのうちの一つが「ジョンソン・エンド・ジョンソン インスティテュート」。建物の中で行われていたのは、人の体に入れたカメラの映像を見ながら手術を行う「腹腔鏡手術」のトレーニングです。ジョンソン・エンド・ジョンソンは手術で使う電気メスなどの器具を扱っていて、こうした器具とシリコンゴム製の臓器を使い、若手の医師が訓練できる場所を提供しています。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの玉井孝直社長は「橋ができることで、国際的な活用もますますできる場所になると期待している」と話します。
多摩川スカイブリッジの開通は、アクセスを縮めるだけではありません。キングスカイフロントの開発に携わってきた「キングスカイフロント ネットワーク協議会」の野村龍太会長は「あちら(川の向こう岸)が羽田イノベーションシティという研究機関が集まる場所です。その中に、今度新しい医療機関もできる」と話します。
実は橋の向こう側にも東京都の特区があり、そこにある羽田イノベーションシティに、大学の先端医療センターが設置される予定です。川崎側が基礎研究、東京側が臨床という両輪が揃った新たな先端医療都市を目指します。
「川崎側で研究開発をする。羽田側で研究開発した成果を事業化していきたい」(野村会長)