マンションに戻った2人。翌朝、寝坊してしまった真由美は慌てて資源ごみを出そうとするが、ごみ箱を覗くとすでに出された後だった。
ハッと周りを見渡すと、堤司の姿はすでにない。朝ごはんが作り置きされ、
『せっかく有給申請したんだから、今日はゆっくり休め。俺は会社の前に寄る所があるから早出する』
堤司のメモが置かれていた。行くあてもなく、公園を歩く堤司。
(同棲ってもっと楽しいものだと思ってた…)
昨夜、真由美が荷物を取りに行っている間、拝島と2人になった時のことを回想する。
「俺、さっきフラれましたから。あいつ、俺のこと好きって言ったけど」
「好き? お前のことが好き?」
「だからそういう意味じゃなくて。友だちとして好きなんだって、全部顔に書いてありましたよ」
「……」
「今日のところは、さっさとまるこを連れて帰ってください。一緒にいると辛いんで…。明日はあいつにとって特別な日だし」
「え?」
「けど俺、このまま引き下がるつもりないですよ。仕事でも恋愛でも、一度断られてからが本当の勝負だと思ってるんで」
思い返しながら立ち尽くしていると、ゴムボールが飛んできて堤司に当たる。
「すみませーん……堤司先輩?」
振り返ってハッとする堤司。ボールを取りに来たのは、かつての部下・根津(上川周作)だった。
子どもを連れて公園に来ていた根津。忙しく働く妻に代わり、専業主夫になったという。堤司が社畜だった頃、根津は営業部で堤司の下で働いていた。しかし根津は、あまりの激務に精神を病み、会社を辞めてしまった。堤司はその出来事が心に引っかかり、社畜から一転、定時上がりを徹底するようになったのだ。
「すまなかった。本当に…すまなかった」
頭を下げる堤司に、「先輩は何も悪くないですよ。僕が勝手に潰れただけです」と根津。
「先輩みたいになりたかった…けどなれなかった。僕には仕事が向いてなかった、それだけです」
「根津の仕事は新入社員のレベルを遥かに超えていた。だから俺は、もっともっと君ならやれるって」
「そんなの買いかぶりですよ。でも…その言葉、7年前に聞きたかったな」
「……!」
子どもに呼ばれ、根津はペコリと頭を下げて去って行った。
(根津を止めるチャンスは何度もあった…)
根津のゴミ箱に栄養ドリンクの空瓶が溢れるほど入っていた時、インスタントとドリップの粉を間違えてコーヒーを淹れているのに気づいていなかった時…。いつから寝てないのか尋ねても、「よく覚えてないんですよね」と寝不足の目を爛々とさせていた根津。堤司は、彼が潰れていくのを止められなかった。
◆
呆然としながら会社へ向かう堤司。
営業部には、有給申請していたはずの真由美と拝島が出社していた。
「さすがにハイジは休むと思ってた」
「たかが箱根だろ? 余裕で間に合ったわ」
「さすが社畜」
結局、宿泊しなかった真由美と、朝イチで東京に戻ってきた拝島。
「本当に営業部って社畜の溜まり場ですね〜」
営業部を覗いていた草野優一(永田崇人)が堤司に言う。堤司は真由美が出社していたことに驚き、何かを決意する。
人事部では、会社のコンプライアンスにうるさい諫山基(丸山智己)が、「さすがは昭和脳の営業部ですね」と呟きながら2人の有給申請書を廃棄していた。そこにやって来た堤司が「今日、根津に会った」と言うと、諫山の顔色が変わる。
「あの根津くんですか? 元気にしていましたか?」
「立派なパパになってたよ」
「パパに…そうですか。それは良かったです」
「諫山。人事のことで、ひとつ提案がある」
堤司がした決断とは…。
3月9日(水)深夜0時30分からは、ドラマParavi 「部長と社畜の恋はもどかしい」第10話を放送!
堤司(竹財輝之助)から突然「同棲を解消したい」と告げられ、ショックを受ける真由美(中村ゆりか)。そんな中、真由美にマネージャーとして昇進の話が舞い込む。ますます皆に頼られて、忙しくなることを嬉しく思う真由美だったが、今までの仕事は他人に回され、やることがない日々に落ち込んでいた…。
しかし、拝島(佐野岳)の一言で、あるプロジェクトを思いつく。そして、堤司が定時上がりになった理由が明らかに…!?
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