雛人形を愛するアメリカ人女性が京都で職人の技に感動!雅叙園の豪華絢爛お雛様に「オーマイガー!」:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

続いて紹介するのは、アメリカ・フロリダ州に住む「雛人形」を愛してやまないジュディさん。

nipponikitai_20220307_06.jpg
ニッポンの伝統行事のひとつ、3月3日の雛祭り。平安時代、貴族の子どもたちが紙で作った人形で遊んだ「ひいな遊び」が起源と言われています。人形を飾って雛祭りを祝うようになったのは、江戸時代。京都御所や大奥で雛祭りが行われ、やがて上流階級から町民へと広まったそう。

数ある雛人形の中で、代表的なものは4種類。江戸時代中期、享保年間に作られた「享保雛」は、豪華絢爛だったご時世に合わせ、きらびやかな装飾が特徴的。その後、平安時代の宮廷文化を受け継ぐ「有職雛(ゆうそくびな)」が登場。公家の装束を忠実に再現しています。

次郎左衛門という名の人形師が売り出した「次郎左衛門雛」は、団子のような丸顔が上品で可愛らしいと人気に。公家や大名がこぞって買い求めたとか。18世紀後半になって作られた「古今雛」には、目に水晶やガラスがはめ込まれるようになり、より生き生きとした表情に進化しました。

ジュディさんがニッポンの雛人形と出会ったのは、今から25年ほど前。長女・イレインさんのために人形を探していた時に雛人形を知り、ニューヨークのアンティークショップで購入。娘のために買ったにもかかわらず、ジュディさんの方が夢中になってしまいました。古くから受け継がれた伝統があり、雛祭りという行事に必要な威厳のあるものだというところに魅了されたそう。

nipponikitai_20220307_07.jpg
大学講師を務めるジュディさんは、「ニッポンの人形を通して日本文化を教えるクラス」を受け持ち、雛祭りの時期に、学生たちと雛人形の飾り付けもしています。これほど雛人形を愛してやまないジュディさんですが、まだニッポンには一度も行ったことがありません。

いつかニッポンで大好きな雛人形を手にしたい。そんな夢を持つジュディさんを、ニッポンにご招待! 2年前、待望の初来日を果たしました。

向かったのは、「ホテル雅叙園東京」。この日は「百段雛まつり2020」が開催される前日。ジュディさんの熱意を伝えたところ、特別に見せていただけることに。
ホテルの方に案内されたのは「百段階段」。1935年に建てられた木造建築で、雅叙園のシンボル的な場所です。階段の途中に7つの部屋があり、それぞれにお雛様が飾ってあります。

nipponikitai_20220307_08.jpg
百段雛まつりで最も賑わいを見せる「座敷雛」。内裏雛を中心に、色々な人形と小道具を使って庭園を表現する飾り方です。ジュディさんは「オーマイガー! こんなのは今まで見たことがないです!」と驚きの表情。

飾り付けをした人形研究家・瀬下麻美子さんによると、今回は江戸のお雛様が様々なニッポンの神話や民話を眺めているという壮大なコンセプトだそう。ジュディさんは、浦島太郎やヤマタノオロチなどの世界が目の前にあることに大興奮! 「喜んでもらって嬉しいです」と涙を見せる瀬下さんとハグを交わしました。

別の部屋には、江戸時代から令和に至るまで、それぞれの時代を象徴するお雛様が並びます。まん丸な体が特徴的な享保雛に、有職雛……アメリカでは見ることができない雛人形を、細部まで存分に堪能しました。

京都で人形職人の最高の技術を体感! 人形を通じて思わぬ縁も

続いて向かったのは京都。「京都の職人さんの繊細な仕事を見てみたいです」というジュディさんの熱意を伝え、有職京人形司歴60年の大橋弌峰(いっぽう)さんに協力していただきました。

早速、大橋さんの作品を見せていただくことに。奥の部屋にあったのは、有職雛の5段飾り。お値段は約700万円だそうで、「想像もしなかったお値段にちょっとびっくりしています」。

nipponikitai_20220307_09.jpg
ここで大橋さんから、飾り付けの決まりごとについて教えていただきます。京都の紫宸殿にならい、男雛が向かって右側。「君子南面す」と言って南側に向かって座り、東側が上手、位の高い人や目上の人が立つ位置になります。そのため桜や橘も、東の太陽が当たる方の花が咲き、日陰の方がつぼみになっているのです。

東京では左右が逆になっていますが、これは大正天皇が催事の際、西洋のスタイルにならい向かって左に立ったことから、お雛様を飾る時もこのスタイルが取り入れられたそう。そのため現在では、どちらも間違いではないとのこと。

ここで雛人形の職人の仕事を見せていただくことに。京都の雛人形は、顔・髪・手・体の4つのパーツをそれぞれ専門の職人が手作り。大橋さんは言わば総責任者で、組み立てと体、仕上げを担当。その他のパーツは制作を依頼しています。

まずは、人形の指先に魂を吹き込む手足師のもとへ。この道40年以上の澤野正さんは、手足だけを専門に作る京都で唯一の職人。

nipponikitai_20220307_10.jpg
作業場は6畳一間。桐の木をノミで削り、そこに穴を開け、のりをつけた針金を差し込みます。針金を曲げながら切っていくと、徐々に指の形に。ここから手の甲、手首、手のひらを形作り、左右の手の骨格が完成。

出来上がった手の骨格に、牡蠣の殻で作った胡粉(ごふん)という日本古来の顔料を塗ります。胡粉の色は、古来より日本人が好きな色味なのだそう。塗り終わると1日乾燥させ、塗っては乾燥を繰り返すこと3日。丸みを帯びた手になってきました。

ここからが仕上げ。丁寧に指一本一本を彫っていきます。繊細な息遣いで削った粉を吹き飛ばしながら指の形を仕上げ、人形が完成した時には隠れてしまう手のひらまで、一切妥協しません。澤野さんによると、掌底部分を彫ることで表の表情も変わるそう。ジュディさんは「そこまでこだわって仕事しているんですね」と感心します。

指の幅はわずか2mm。爪も慎重に作業します。仕上げとして爪に化粧を施し、雛人形の手が完成しました。普段意識されることは少ない雛人形の手ですが、「一番いい仕事とは、目立たせないし意識させない仕事だと思っています」と澤野さん。「素晴らしい手が作れないと素晴らしい人形は作れないと思います」というジュディさんの言葉に、「そんなこと言ってもらったのは初めてです」と嬉しそうな笑顔を浮かべました。

続いては、3000以上も筆入れをして顔を作る頭師(かしらし)のもとへ。川瀬猪山(ちょざん)さんは、100年以上前から雛人形の顔を作る家系の四代目です。

早速、作業を見せていただきます。材料は、桐の木屑とのりを混ぜ合わせたもの。それを専用の顔型に、空気が入らないように詰めて成形します。この状態で1日乾燥させ、いよいよ顔作りのスタート。ガラスで出来た目玉を成形した顔にのり付け。この時、目が少し下を向くようにします。

nipponikitai_20220307_11.jpg
続いては、胡粉を顔全体に塗る工程。顔の生地が粗いため、よく叩き込んで中に染み込むようにします。塗っては乾燥を繰り返すこと14回。かかる日数は約1週間。1回目と14回目を比べると、顔が柔らかな表情になってきました。

ここからが最も気を使う作業。小刀で表面を削り、目を作ります。削る部分が1mmずれると表情が変わってしまい、ガラスの目玉に少しでも刃が触れると全てが台無し。注意して削っていくと、目が隠れていた状態から優しい上品なお顔に!

仕上げにお化粧を施します。筆入れの回数はなんと3000回以上! 生え際には専用の筆を使っていて、他にも眉毛用など30種類もの筆を用途によって使い分けているそう。この筆は、全て川瀬さんの手作りです。最後に真っ赤な口紅を差し、雛人形の顔が完成。型で起こした骨格から完成までは、約2週間かかると言います。

nipponikitai_20220307_12.jpg
作業場に置かれたある人形が気になったジュディさん。川瀬さんによると、伝統的な技法で昔から作っているもので、昔は海外向けに販売していたとか。実はジュディさんが持っている人形に似ているそうで、その写真を川瀬さんに見せると「この人形はウチの! 間違いなくウチの!」とびっくり!

70年以上前に、先々代とその奥様が作った浮世絵人形。ニッポンの人形の良さを海外にも伝えたいという思いで、試行錯誤の末に完成したものです。川瀬さんは駆け出しの頃、先代から2人の苦労話をよく聞いていたそう。100体ほど完成したという稀少な人形を、なんと偶然ジュディさんが持っていたのです。

「初めて持っている方にお会いできて、本当に嬉しいです」と涙を流す川瀬さん。先々代ご夫婦の苦労を知る奥様の弘子さんも「嬉しい!ほんまにハッピーよ!」と感激。人形を愛する人たちの縁が、ニッポンで繋がりました。

別れの時。川瀬さんから雛人形の顔をいただいたジュディさんは「授業で使わせてもらいます。ありがとうございます!」と感謝を伝えました。

続いて、ミクロの技を持つ人形の美容師、髪付師のもとへ向かいます。作業を見せていただくのは、髪付師歴30年の井上正幸さん。

材料は、絹糸を黒く染めたもの。それを20cmに切り揃えます。次に頭を削って溝を作り、揃えた毛先にのりを付け、先ほどの溝に髪を押し込んでいきます。ここで取り出したのが、髪型を決める型紙。実際に日本髪を結う時も同じような詰め物を使うそう。のりを使い、型紙を頭に貼り付けます。

nipponikitai_20220307_13.jpg
ここからが、髪付師最大の見せ場。型紙にのりを付け、髪を整えながら貼り付けていきます。少しでも髪が乱れると、やり直しはできないそう。のりが白く固まってしまうので、手早くかつ慎重に作業します。

一番難しいところは、生え際だと話す井上さん。頭師が作った顔は、実は左右対称ではありません。そこで髪を植え付ける際、左右対称に見えるよう調節しながらセットしていくのが、髪付師の腕の見せどころ。最後は髪に飾りをつけて、完成です。

この日は、最初に訪ねた大橋さんが、ジュディさんを夕食に招待してくださいました。食卓には、ちらし寿司やハマグリのお吸い物など、雛祭りにちなんだ料理が並びます。白酒もいただき、大橋さんのご家族とともに楽しいひとときを過ごしました。

雛人形のパーツが揃ったところで、ここからは大橋さんによる仕上げ。体の土台作り。材料は、畳にも使うイグサです。古い和紙にのりを付け、イグサに貼り付けます。なぜ和紙を使うのかというと、簡単には破れないから。洋紙の場合、引っ張るとすぐ破れてしまいます。

使っているのは、明治時代の和紙。このころは紙が貴重だったため、和紙をすく技術に優れ、薄くて丈夫なものを生産していたそう。大橋さんによると、100年以上昔の和紙はだんだん少なくなってきているとか。その紙を袋状にして、中にもみ殻を入れます。動物の骨などから抽出して作った日本古来の接着剤、ニカワをつけて閉じれば、土台の出来上がり。

この後、袴を履かせて襟をつけ、さらに針金を通して腕を作ります。雛人形に使われる着物の生地は西陣織。人形用に模様も小さく注文した特注品で、値段は高いもので70万円! どんな注文が来てもすぐ作れるよう、常に40種類以上の生地をストックしているそう。
この生地から十二単を作って人形に着せ、手足師の澤野さんが作った手をつけていきます。

nipponikitai_20220307_14.jpg
続いては、大橋さんが最も気をつかう腕折り(かいなおり)という作業。「二の腕の曲がり方が一番重要です。それで人形の良し悪しが決まります」と大橋さん。腕をたたむこの作業は、一発勝負なので失敗が許されません。少しずつ調整しながら、長年の経験と勘で慎重に折っていきます。今でもこの作業だけは、他の従業員には任せないとか。

最後に、頭師の川瀬さんと髪付師の井上さんが作った顔を挿せば完成。大橋さんは「顔を生かすのも胴ですし、胴を活かすのも顔。全体のバランスが良くていい人形になるんです」と話します。「分業して作っている意味がよくわかりました」。

別れの時。人形に使っている着物と小さな雛人形、西陣織の生地をいただいたジュディさんは大感激。「ありがとうございます」と感謝を込めて握手を交わしました。

あれから2年。大橋さん一家のもとに、ジュディさんからのビデオレターを届けます。

「ニッポンに招待してもらい、素晴らしい経験ができたことに感謝しています! 大橋さんには雛人形の大切な精神も教わりました」。帰国後、始めたことがあるとか。

ジュディさんの雛人形コレクションは、現在100体を超えました。そこで雛人形の素晴らしさを知ってもらおうと、コレクションを一冊の本にしたのです。各年代ごとに雛人形の特徴をまとめ、大学の授業の教材としても使う予定だそう。

nipponikitai_20220307_15.jpg
「大橋さん! コロナが収束したら、再びニッポンへ家族と一緒に行きます! そして私の雛人形ガイドブックを見てほしいです! 本当にありがとうございます!」

ジュディさんをニッポンにご招待したら、雛人形への情熱がさらに増し、雛人形の素晴らしさを多くの人たちに広める活動を行っていました!

3月7日(月)夜8時からは、ゲストに坂下千里子を迎えて、月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」“ご招待で人生変わっちゃった!”を放送!

「美味しい“お好み焼き”の作り方を勉強したい!」
イギリス・ロンドンで開催された「ジャパン祭り」で出会ったジェリーさん。大阪で行列必至の名店「美津の」へ。美味しく作るコツを教えていただく。さらに、もう一つのお好み焼き“ねぎ焼き”に「福太郎 本店」で舌鼓。そして広島へ!重ね焼きが特徴の広島焼の元祖「みっちゃん総本店」で特別に作り方を!あれから5年…お好み焼き作りが進化!

「本物の“わらじ”作りを学びたい!」
ココナッツ繊維のひもから独学でわらじ作りに挑戦しているハンガリーのクリスティアーンさん。山形県新庄市でこの道70年以上!わらじ職人の伊藤佐吉さんに作り方を学ぶ。
「まるで魔法みたいだ」と驚く、達人の手さばきが…!そして完成した“わらじ”を持って海へ!わらじを履き、大はしゃぎ!あれから6年…益々ニッポンの文化に興味がわき、ある驚きのモノを自作するまでに進化!

どうぞお楽しみに!