温泉を愛するモロッコ人男性が温泉に感動!サウナで”ととのう”体験も:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

ニッポンに行きたくてたまらない外国人を世界で大捜索! ニッポン愛がスゴすぎる外国人をご招待する「世界!ニッポン行きたい人応援団」(月曜夜8時)。毎回ニッポンを愛する外国人たちの熱い想いを紹介し、感動を巻き起こしています。

今回は、「ニッポンにご招待したら人生変わっちゃった! スペシャル」をお送りします。

南紀白浜の露天風呂に、秋田の湯治宿...初めてのニッポンで温泉を満喫

紹介するのは、モロッコに住む、「温泉」をこよなく愛するムスタファさん。

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レストランで接客の仕事をするムスタファさんは、約六畳一間の賃貸アパートに一人暮らし。子どもの頃からニッポンのアニメに興味を持ち、学生時代は日本語を専攻。そこで出会ったのが、温泉だったそう。

心と体を温める温泉。都心からわずか1時間で行ける箱根や、日本一の自然湧出量を誇る草津など、ニッポンの温泉地の数は約3000ヵ所。源泉数は27000本以上! 温泉は、いにしえから日本人が紡いできた癒しの場なのです。

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ニッポンへ行って温泉に入り、ニッポンの方とおしゃべりをするのが夢だというムスタファさん。モロッコではハマムという伝統的な蒸し風呂で体を洗うため、浴槽に浸かる習慣はないそう。ちなみにムスタファさんの日課は、露天風呂をイメージして部屋でリラックスすること。

そんなムスタファさんを、ニッポンにご招待! 3年前、念願の初来日を果たしました。

向かったのは、和歌山県・南紀白浜。日本三古湯と呼ばれる有馬、道後、白浜は日本書紀にも記録が残され、同じ時代に書かれた風土記では温泉を神湯と表現するほど大切に扱われていました。南紀白浜には日本最古の露天風呂「崎の湯」が残されており、その歴史はなんと1300年以上。

ムスタファさんは、ここで人生初の温泉に入ることに。出迎えてくださった塚田秀行さんに入り方を教えていただきます。脱衣所から暖簾をくぐると、温泉の近くに海が!
「こんなに海が近い場所に温泉があるなんて驚きです」。

「崎の湯」には自然にできた湯舟が2つあります。昔ながらの景観を損なわないよう、男女ともにシャワーはなく、石けんやシャンプーの使用は禁止。あるのはかけ湯のみです。
かけ湯を知っているか心配する塚田さんでしたが、ムスタファさんは事前にYouTubeを見て勉強してきたそう。かけ湯には、汚れを流すとともに、ほかの人に自分は清潔であると見せる意味もあります。

いよいよ人生初の温泉に入ります。湯つぼに浸かり「温泉はこんなに気持ちいいんですね」と、モロッコの自宅で思い描いていた温泉ポーズを実現! ニッポンの温泉に入る夢を叶えました。

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ちなみに温泉のポイントは、自分の肌に合っているかどうか。それは、温泉分析書のpH値を見ればわかるそう。pH値は水の性質を表し、数値が低いほど酸性で、高いほどアルカリ性ということ。群馬県の草津温泉はpH値が2.1。肌の表面にある古い角質を柔らかくしてくれる酸性です。埼玉県にある都幾川温泉は11.3と強アルカリ性で、美肌の湯として知られています。崎の湯は7.9なので、肌にやさしい温泉であることがわかります。

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続いて、波打ち際の湯舟へ。先に入っていたお客さんに「こんにちは! 私はムスタファ、日本語教えてください」と気さくに話しかけます。会話も弾み、ニッポンの方とおしゃべりをする夢も実現。こうして露天風呂を満喫し、初めて入った温泉で美しい夕日を見ることもできました。「この場所で温泉に入ったことは一生忘れません」。

次に向かったのは、秋田県の仙北市。「湯治」の文化について知るためにやってきました。湯治とは、温泉に入り病気を療養すること。北海道の登別温泉は腰痛や冷え性に、長崎県の雲仙温泉は湿疹や切り傷に良いと言われ、昔から医療のひとつとして使われてきたのです。

ムスタファさんが訪れたのは、乳頭温泉郷。ここには7つの温泉宿があり、それぞれ泉質が異なることから一軒一軒巡るのが人気です。中でも、最も山奥にあるのが約330年の歴史を持つ黒湯温泉。冬になると積雪が4mを超えて長期休業になることから、秘湯とも言われています。

黒湯温泉の自慢は混浴の露天風呂。お湯をよく見ると、硫黄の白い粉が浮いています。火山性の温泉地に多い乳白色のお湯は、関節痛などに効くと評判。早速、温泉をいただくことに。のぼせないように、濡らしたタオルを頭にのせて温泉を堪能。この混浴のお風呂には、黒湯温泉が紡いできたニッポンの湯治文化の秘密があるとか。

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黒湯温泉には、宿泊施設が2つあります。食事付きの温泉旅館とお客さんが自分でご飯を作って泊まる自炊棟です。茅葺き屋根の自炊棟は、大正時代に建てられました。自炊棟を利用しているお客さんの中には、28連泊中という人も!

実は、温泉場に長期滞在するのが湯治の始まり。湯治は病気の療養だけでなく、昔から農家の皆さんが疲れを癒すために、なくてはならない習慣なのです。収穫が終わると、山奥にあるこの温泉まで布団をかついでやってきます。家族や友人と自炊棟に泊まり、みんなで温泉に入ったため、湯治場では混浴が当たり前だったのです。

温泉が医療のひとつとして使われた江戸時代には、湯治は一週間一巡りが良いとされ、将軍徳川家康もそれにならい、熱海に一週間滞在したそう。「湯治は時間をかける方がより効果があることが分かりました」。

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源泉から湧き出る温泉をためておく、湯畑も見せていただきます。温泉を管理するのは、湯守・大川清一さんです。湯畑に温度計を入れると52.6度と、お風呂には熱すぎる温度。そこで、川の水で温度を下げるのですが、その方法はひたすらかき混ぜるという力仕事。
さらに、湯畑の底に溜まった硫黄もお湯に溶かすため、かなりの重労働なのです。ムスタファさんもこの作業を体験させていただき、予想以上の大変さにびっくり!

黒湯温泉には、混浴のほか男女別のお風呂もあり、それぞれ内湯と露天、4つの浴槽があります。温度の最終調整をするのも湯守の仕事。約50度まで下がった温泉をそれぞれの浴槽に送りますが、ポイントは浴槽までのパイプの長さ。これによって温度がさらに変わるため、距離を計算しながら水で微調整します。露天風呂、内風呂とも41〜42度になるようにしているそう。

天候や太陽の位置で目まぐるしく温度が変わるため、一日中調整に追われている大川さん。いつでもちょうどいい温度で入れるよう、1時間半おきにお風呂の温度を測っていることを知り、ムスタファさんは「素晴らしいお仕事です」と感動!

夕方、旅館に泊まるお客さんの夕食作りが始まります。ムスタファさんも料理の盛り付けをお手伝い。重たい食器を使う鍋料理は、2階にいる人が引き上げる手動のエレベーターで運びます。宿主・池田泰久さんいわく、機械にすると硫黄でモーターが故障し、ワイヤーも錆びてしまうそう。

忙しい合間を縫って、旅館の皆さんとまかないをいただいていると、女将の池田佳子さんが打たせ湯を勧めてくださいました。黒湯温泉には打たせ湯専用の浴場もありますが、毎分20ℓものお湯を使うため、豊富な湯量がないとできません。初めて打たせ湯を体験したムスタファさんは「この気持ち良さは癖になります」とうっとり。

この日の夜、皆さんが歓迎会を開いてくださいました。お酒が飲めないムスタファさんは、お気に入りの黒湯温泉の沢水で乾杯。秋田名物きりたんぽ鍋や温泉名物の黒たまごを囲み、楽しい宴会は夜遅くまで続きました。

翌朝。旅館では早朝から朝食の準備に取りかかります。その頃ムスタファさんは、昨夜のお礼にと、お風呂掃除のお手伝い。「この仕事は大好きです。私は洗車が好きで、友人の車もよく洗っているんです」。手慣れた様子で作業を進める様子を、皆さんが笑顔で見守りました。

別れの時。モロッコのお土産を皆さんに渡すと、泰久さんから従業員の証、袢纏のプレゼントが! 「黒湯の一員としてお迎えしますので、いつでも帰ってきていただきたいと思います」という泰久さんの言葉に大感激。お世話になった皆さんに、感謝の気持ちを日本語で伝えました。

あれから3年。ムスタファさんからのビデオレターを池田さんご夫婦の元へ届けます。
いただいた袢纏を着て登場したムスタファさんは、帰国後、ニッポンで学んだ温泉の知識を広めようと、大学で授業を行ったそう。皆さん最初は裸になることを不思議に思ったようですが、温泉がコミュニケーションをとる場所であることや、ニッポンの健康維持に貢献してきたことを説明すると興味を持ち始め......最後は「温泉に入りた〜い!」と口を揃えていたとか。

初来日でニッポンの観光文化に魅了されたムスタファさんは、仕事にも変化が。以前はレストランで働いていましたが、帰国後は大型バスの訓練所に通い、3ヵ月かけて日本人向けの観光ドライバーに転職したのです。

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「この仕事を選んだのはニッポンの旅がきっかけです。モロッコに来た日本人にこの国の文化や伝統を伝えたいと思いました」。しかし今はコロナの影響で仕事がなく、日雇いの仕事で洗車などをして生活しているそう。

「この服を着ると、皆さんに会いたい気持ちが心の底から湧いてきます。黒湯温泉の皆さん、本当にありがとうございました」。池田さんご夫婦も笑顔で「必ずお会いしたいです。ぜひいらしてください」と呼びかけました。

憧れの"ケロリンの桶"に大喜び!

黒湯温泉に続いて、ムスタファさんが向かったのは、東京にある「戸越銀座温泉」。温泉密度を統計したランキングによると、箱根や別府などの人気の温泉地が並ぶ中、4位はなんと東京! 「東京にも温泉が出るので、せっかくなら銭湯という伝統的な浴場に入ってみたいです」と話すムスタファさんを、快く受け入れてくださいました。

するとそこに、番組レギュラーのサバンナ高橋茂雄さんが! 大のお風呂好きで知られる高橋さんのおススメ銭湯が、戸越銀座温泉なのです。

番台で入浴料を支払い、いよいよお風呂へ。かけ湯をしようとお湯をすくうと、色が真っ黒。昔から東京の温泉は、黒い濁り湯が主流。植物などが腐敗してできるフミン酸は、保湿成分があるため乾燥肌の方にぴったり。

壁一面に描かれた富士山を見ると「一度見たいと思っていました!」と大喜び。元々は風呂嫌いの子どもたちを楽しませようと、神田にあった銭湯のご主人が画家に依頼したのがきっかけ。その画家の故郷が静岡だったため、富士山が描かれるようになったのです。

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2人は、裸の付き合いすぐ仲良しに。戸越銀座温泉の名物・露天風呂に入り、サウナも! 高橋さんは、ニッポンではサウナと水風呂に入って心身ともに満足感を得た状態を「ととのう」と言うと、ムスタファさんに教えます。汗を出してリラックスできるサウナが気に入った様子。
サウナを出るとしっかり汗を流し、水風呂へ。「トトノッタ〜。すっごくトトノッタですね〜」とご機嫌なムスタファさんでした。

最後に、高橋さんからニッポンのお風呂セットをプレゼントされると、「ずっと私が欲しかったものです」とケロリンの桶に大喜びしました!

あれから3年、スタジオとムスタファさんを中継で繋ぎます!

高橋さんにいただいたお風呂セットは、いつもハマムで使っているそう。高橋さんが、別荘に作ったサウナにぜひ来てほしいと伝えると、「必ず行くので待っていてください」。日本式の指切りげんまんで約束し、最後は「トトノッタ!」と笑顔が溢れました。