大日本印刷の椎名隆之事業企画室長
環境問題、貧困、ジェンダー、働き方...。国際社会は今、数多くの難題に取り組んでいる。こうした中、持続可能な社会の実現のために国連サミットで採択されたのが2016年から2030 年までの国際目標「SDGs」だ。
持続可能な社会・経済を作り上げるために、日本は何ができるのか。BSテレ東では『日経スペシャル SDGsが変えるミライ~小谷真生子の地球大調査』と題し、日本の進むべき道を考えるシリーズを2020年3月からスタートさせた。
1月21日の放送では、三重県・多気郡での大日本印刷の取り組みを伝えた。
大日本印刷が取り組むオンライン診療、AIタクシー
三重県・多気郡。山間の道を走る一台のユニークな車、この車を使ってある実証実験が行われています。
「診療所までくる足も大変な方もいるので、診療所が実際に患者さんのところに伺って、オンラインで診療するというコンセプトです」(大日本印刷の椎名隆之事業企画室長)
車には看護師や研修医が同乗し、病院に来ることが難しい患者の元へ向かいます。訪ねたのは1人暮らしの高齢者。看護師に付き添われ、車に乗り込みます。心電図や血圧など、車内で測定したデータは即座に離れた診療所へと送られます。検査や診察が必要な場合は、車に同乗した看護師や研修医が診療医に代わり行います。
この実証実験は、三重広域連携スーパーシティ構想の一環で、6つの町が共同で取り組むのは全国初。日本郵便、ソフトバンク、JAL、住友林業など30を超える企業が関わっています。大日本印刷はその取りまとめ役で、椎名さんは現地に入り浸りで奮闘しています。
椎名さんが次にやってきたのは、道の駅。オンライン診療に加えてもう一つ、AIタクシーの実証実験も行っています。設置されたデジタルサイネージ(電子看板)に事前登録した会員カードの番号を入力するだけでタクシーが配車されるサービスです。
「普通だと1人乗せたら到着しその人を降ろして次の人を拾いにいくんですが、このタクシーでは1人乗っている間に次の人が呼び出すとその人も乗せます。リアルタイムに最適なルートで、乗せて降ろしてを繰り返すシステム。これをAIが判断します」(椎名さん)
相乗りすることで、過疎地の移動を効率化しようというサービスで、その名も「あいのり号」です。公共交通機関のバスは1時間に1本程度というこの地域にとって、AIタクシーは住民にとって貴重な移動手段です。
オンライン診療にAIタクシー。大日本印刷がなぜこうした事業を手がけているのでしょうか?
「デジタル技術やメディアの力、モビリティを駆使しながら、地域課題を解決し、社会貢献できる新しいサービスを作っていく。それは今までやってきた事業と根幹は変わりません」(椎名さん)
「第3の創業」を行う大日本印刷
大日本印刷の北島義斉社長
東京・新宿区にある大日本印刷の本社。その敷地に、かつての工場を復元した建物があります。活版印刷機や活字など、往年の印刷技術を集大成した資料館です。
創業から約150年。現在の大日本印刷の立ち位置について、北島義斉社長は次のように話します。
「創業から約70年間は出版関係の印刷だけで、事業を行ってきました。それから70年経ち、事業拡大した時が『第二の創業』。約150年経った現在は、今後事業を拡大していくために『第三の創業』ということで、企業風土を変えていく取り組みをしているところになります」
大日本印刷はこれまでに培った印刷技術を応用して、パッケージ、エレクトロニクス関連、情報セキュリティ分野など多角化を図ってきました。
北島社長は「第三の創業」にかける思いについて「印刷産業は、典型的な受注産業。受注をいただいて製造する。今後、得意先から言われることだけを開発していても、なかなか大きく業態を伸ばすことはできない。我々が直接、社会課題を解決するものや、人々を幸福にするものを、積極的に開発をしていく必要がある」と話していました。
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