営業部のオフィスに戻ってきた真由美は、かつて残業の鬼だった堤司が定時上がりになった理由を考えていた。すると、「残業カウンターリセット早々、残業再開ですか?」と、人事部の諫山基(丸山智己)が目を光らせながら入ってくる。驚いて立ち上がる真由美。
「君は最近、堤司君とずいぶん仲が良いようですね」
「え?」
「外で君たちが一緒に居るのを、たまたま見かけました」
「!」
「仲良くするのは勝手ですが、彼から変な入れ知恵されてないでしょうね」
「入れ知恵?」
「営業部のエースだった頃の堤司君は、超過勤務の代名詞でしたからね。就労管理システムのエラーをついては、超過勤務三昧。今思い出しても胃が痛い。そんな彼から、変な裏技を伝授されてはいないかと思いましてね」
「裏技!? そんなのあるんですか? ぜひ教えてください!」
「! 何を考えてるんですか、あなたは! なるべく早く切り上げるように」
その場を立ち去る諫山の頭に、7年前の出来事がフラッシュ・バックする。ボロボロになった堤司の部下が、「辞めます。俺、無理です。もう堤司さんの下では働けません」と言って去って行った日のことを…。
「彼女を彼の二の舞にするわけには行かない…」
気を取り直して、残業を再開する真由美。堤司は本当に残業が嫌いなようだ。パソコンに《部長=残業が嫌い》と打ち込み、続いて《私=残業が好き》と書く。
(あれ? けど、そしたら)
《部長=残業が嫌い=残業が好きな私が嫌い》
そこまで書いて、ガーンとなる真由美。
一方、帰宅した堤司は様々なデートスプランを検討していた。映画、美術館、話題のスポット…どれもパンチに欠ける。これでは良い企画にはならない。
(真由美のことを考えると、ひとりの時間がかき乱される。今までは、ひとりの時間があんなに心地良かったのに…)
残業を終え、疲れた顔で歩いている真由美。スマホが鳴り、見ると堤司からの「残業お疲れさん」というメッセージだった。『お疲れ様です。結局明日休出になっちゃいました』と返信するが、送ってすぐにハッとする真由美。
(こんなの送ったら、堤司部長に嫌われちゃうよ…!)
しかし、堤司からは『そうか。けどムリはするなよ』というメッセージと『ファイト』というスタンプが!
スキップで家路を急ぐ真由美。
「はい! わたし、ファイトします!」
◆
翌週の朝。出勤した真由美の耳に、給湯室から楽しそうに話す後輩の声が聞こえる。
「おめでとう! いつから付き合ってるの?」
「1ヵ月くらい前」
「最近はいつデートした?」
「2週間くらい前かな」
「えーっ!? 付き合いたてのおいしい時期を満喫しないなんて、もったいない!」
「どんなジャンルにせよ、ハマりたてが一番楽しいと思うけど」
そんな会話を複雑な思いで聞く真由美。本当は堤司も、付き合いたての時期を楽しみたいのではないだろうか。だからキャンプにも誘ってくれたのに…。
「よし! 今日は定時に帰ろう」
そう決意した矢先、上司が「おい! 親日ホテルの企画が動いたぞ」と皆に告げ、オフィスがざわつく。どうやら、大阪にいる真由美の同期・拝島高志(佐野岳)の手柄らしい。
「プレゼンは金曜日だ。みんな、今週は帰れない日もあると思ってくれ」
アシスタントたちが「えーっ」と声を上げていると、諫山が入ってくる。
「人事部としては、如何なる事情があろうとも、過重労働を許すわけにはいきません!…と言いたいところですが、親日ホテルの企画は、我が社の行く末を左右する非常に重要な案件です。皆さん体調に十分考慮した上で業務に励んでいただきたい。では」
諫山からも残業のお墨付きをもらった営業部。
(定時を願った途端、なんでこうなるの…? けど、今はやるしかない!)
◆
数日後。どんより疲れた顔で仕事している営業部の面々と、睡魔と戦いながら仕事している真由美。忙しすぎて、もう10日以上堤司の顔を見ていない。すると隣のデスクから、後輩の三森さとみ(小野莉奈)が「ライブ…ライブ…!」と呟く声が聞こえる。
「金曜日の夜、ライブがあるんです。鼻先の人参があるから、私がんばれる」
「鼻先の人参か…」
すると真由美のスマホがピコンと鳴る。堤司からのメッセージだった。
『仕事のアップ金曜日だよな。よかったらうちで慰労会をしよう。ローストビーフ作って待ってる』
(最高の人参、キターーーー!)
瞳に炎が宿り、猛烈な勢いで仕事をする真由美。
瞬く間に時は過ぎ、約束の金曜日に。資料は無事完成。担当者をプレゼン会場へ送り出し、ようやく営業部に安息の時間が訪れた。ライブに行けるとはしゃぐさとみと、待ちに待ったおうちデートのために持参したワインを見つめる真由美。
その頃、堤司は半休をとってディナーの仕込みをしていた。
「俺至上、最高傑作だ。俺+ローストビーフ…完璧だ。美味すぎて泣くなよ、真由美」
定時の18時を回り、そそくさと帰り支度を始める真由美だったが、その時、担当者がプレゼン資料を忘れたという連絡が入る。この時間帯は渋滞が多く、タクシーで駆け付けても間に合わない。
(そんな…このままじゃ、みんなの努力が無駄になっちゃう)
真由美は咄嗟に「私が届けてきます」と資料を手に取り、一目散で駆けて行く。向かったのは、社用自転車置き場。
「大丈夫。今の私は無敵なんです!」
猛烈なスピードで自転車を漕いで向かうが、足元が狂って…。
「うわわわわ!」
自転車ごと見事に転んでしまった。ワインの瓶は割れ、膝は擦り剥けて血だらけに…。
すると営業部から電話が入り「データは会場にメールで送ったから大丈夫だったよ」と言われ、呆然とする真由美。
ボロボロになりながら、自分の部屋へ。パタンとその場に座り込み、「普通、データで送るよね…私、疲れすぎててまともな判断出来なくなってたんだ」と呟く。
スマホには、堤司から『何かあったのか?』『連絡待ってます』とメッセージが入っていた。真由美は涙を流しながら『ごめんなさい。今日は行けません』と返信を入れる。
(怒ったよね…絶対、呆れられたよね。これで、部長とはもう終わりなのかな…)
果たして、すれ違う2人の運命は…!?
2月16日(水)深夜0時40分からは、ドラマParavi 「部長と社畜の恋はもどかしい」第7話を放送!
激務に追われ、部長とのデートをドタキャンしてしまった真由美(中村ゆりか)。そんな真由美を心配して家までやって来た堤司(竹財輝之助)が告げた言葉は、「健康的な社畜になりたいなら、俺と一緒に住め!」だった! そして、“お試し同棲”を始めることに…!
そんな中、長期の大阪出張から営業部現エースの拝島(佐野岳)が帰ってくる。真由美と同期ということもあり、「ハイジ」「ペーターまるこ」と呼び合うほど仲がいい2人。社内でじゃれあう真由美と拝島を見た堤司は、内心穏やかではなくて…!?
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