高野山高校で学ぶ未来の僧侶たちに密着!僧侶にはならない?...ただ一人、宿坊で働く生徒の将来の夢とは?

公開: 更新: テレ東プラス

名門校の知られざる姿を、生徒や親、教師など、さまざまな視点を通して紐解く密着ヒューマンドキュメンタリー「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回の主人公は、和歌山県の高野山にある「高野山高等学校(以下、高野山高校)」に通う小林佑くん(2年生)。生徒の多くは寮生活をしているが、佑くんは1人だけ寺院に住み込み、働きながら通っている。雪に埋もれた高野山で、今はほとんど見かけなくなった寺院に住み込む「寺生」の姿を追った。

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和歌山県の世界遺産・高野山。平安時代に真言宗の開祖・空海が金剛峯寺を開いて以来、1200年以上にわたって信仰を集めてきた、日本屈指の仏教の聖地。そんな歴史ある街に創立された高野山高校は、今年で創立136年の伝統校で全校生徒は120人ほど。毎朝、法界定印を結んで黙想、続いて般若心経を唱えて1日が始まる。

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全国各地から高野山に集まった生徒たち。そのほとんどが学校の寮で暮らしている。門限は夕方6時で、掃除の後は全員でお経を唱える(夕勤行)。もともとは空海の教えを広めるために設立された高野山高校だが、現在は宗教科の他に普通科を併設。「特別進学コース」や「吹奏楽」「スポーツ」などのコースが設置され、卒業後の進路も多彩だ。

宗教科では、一般科目に加えて週8時間ほど仏教について学ぶ。もちろん宗教科を卒業したからといって、すぐに僧侶になれるわけではない。卒業後も大学で仏教を学んだり、寺で修行などを積むなどして、ようやく一人前になれるのだという。僧侶になるためにはさまざまなことを学ぶ必要があり、お経に節をつけた「声明(しょうみょう)」という仏教の音楽の授業も。音程を取るのが難しく、寮に帰ってからも先輩に指導を受けて練習に励む生徒の姿もあった。

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宗教科に通う多くの生徒が、僧侶や仏教と関わる道を目指している。生家が寺で、親の勧めで入学した生徒も少なくない。そんななか、実は佑くんはまったく違う進路を考えていた。それはいったい...。

東京から入学した佑くんが帰る場所は、寮ではなく由緒ある寺院。「宿坊」という、参拝者や一般の観光客が宿泊できる旅館のような施設のある寺院で、佑くんはここに住み込み、宿坊の仕事を手伝いながら学校に通っている。

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仕事を優先するため、部活にも入れないという佑くん。帰ったと思ったら、あっという間に着替えて雪かきを始めた。宿泊客が食べるのは、肉や魚を使わず、野菜や豆腐などで作った精進料理。瞑想や護摩行、奥之院ナイトツアーなど高野山ならではの体験もできるため、観光客に大人気の宿坊だ。そのためスタッフは毎日大忙し。夕方になると、佑くんも夕食の配膳に追われる。

こうして寺院に住み込み、仕事を手伝いながら学校に通う生徒などを「寺生」と呼び、ひと昔前は多くの寺生がいたという。しかし今では、高野山高校でも寺生は佑くん1人だけ。

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配膳の合間を縫って素早くまかないの食事をとると、宿泊客のお膳を下げ、客室の布団を敷き、事務所を掃除する。さらに寺院のスタッフたちが帰った後は、夜10時まで電話番を務める。閉門、戸締まりをして、ようやく1日の仕事が終わり...かと思いきや、布団を事務所の隣の小部屋に敷いた佑くん。夜中でも宿泊客や電話に対応するためだという。

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佑くんの朝は早く、6時半にはまだ誰もいないお堂で朝のお勤め(勤行)の準備をする。朝7時、冬の凛とした空気の中で勤行が始まった。白い息を吐きながら、佑くんも読経する。その後、朝食を済ませて制服に着替え、8時には登校。最初の頃は敬語が使えず、ずっと怒られていたという佑くん。1年が経ち、仕事にも慣れたと話す。それでも将来の夢は僧侶ではないというが...今後の目標については、ぜひ番組で確認を。

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では、なぜ佑くんは高野山高校に来たのか? きっかけはお父さんからの勧めだった。「最初は別の高校に行こうと思っていたけど、周りと同じことをしなくても、自分だけのものがあればいいと思ってここに来た。中学校の頃は勉強もサボり続けていたので、"寮だとサボる"と親が思ったんでしょうね。だから寺に"飛ばした"んだと思います」とユーモアたっぷりに明かしてくれた。

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佑くんのお父さんは高野山高校出身の住職で、今は東京で空海の教えを広める活動をしている。息子を寺院に預けた理由は、自分は寮に入って遊んでしまったから。「息子にはお寺でしっかり修行をしてほしい」と考えていた。「つらいのではないかと思いますけど、それを仕事だと思わず、"行"だと。自分を高めるために理不尽な思いもたくさんして、何が大切なのか一つひとつわかっていくんじゃないかと思う」。

しかし、「寺での生活がつらい」と息子がこぼすたびに、お母さんは人知れず胸を痛めていた。「主人の考えもよくわかっているので、『お父さんの言うとおりにして良かったんじゃないの』とは言うんですけど...。長期休みに入ると、他の生徒さんたちはすぐに家に帰れるけど、あの子だけ帰れないと、かわいそうな気がしてしまう」と涙ながらに本音を明かしてくれた。

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そんな佑くんを、宗教科恒例の厳しい行事「寒行托鉢」が待っていた。宗教科の生徒たちがやって来たのは、高野山金剛峯寺。重さ240gほどの錫杖(しゃくじょう)が配られ、金剛峯寺の僧侶たちと一緒に街角で托鉢を行うという。冬の冷たい空気の中、1時間以上もひたすら錫杖を振りながらお経を唱え続け、手はどんどん重くなっていく。しかし宗教科の生徒たちは、全員最後までやり遂げた。

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金剛峯寺の住職・赤堀暢泰さんが、寒行托鉢を終えた佑くんに言葉をかけた。「お寺から学校に通うのを選択したということは、今後の糧となるかけがえのない時間だと思う。『苦労は買ってでもせい』というくらいですから」。

「中学の頃はやらなきゃいけないことから散々逃げてきたので、これだけは続けていこうかと思っています。つらいこともあるけど楽しい部分もあって、得るものもあったので良かった。あと1年は頑張ろうと思っています」と語る佑くん。もう、中学時代の自分とは違う。日々たくましさを増し、世界遺産の高野山で充実した青春を過ごしている。

番組では他にも、宗教科の生徒たちが毎月、聖域・奥之院を訪れる「廟参」の様子や、食事や勤行の様子、宗教家の生徒たちの高校生らしい素顔、宿坊の住職から見た佑くんなどを紹介する。

2月14日(月)夜10時放送! 「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「明大明治高...進学は英検2級必須?伝統の演奏守る生徒達」と題して送る。

今回の主人公は明治大学付属明治高等学校・中学校でマンドリン部に所属する部員たち。開校110年目を迎えた名門大学付属校だが、明治大学へ内部進学するには英検2級に合格しTOEIC450点以上を取ることなど、高いハードルがある。そんな中、勉強だけでなく部活動に青春を燃やす生徒たち。中でも創部68年を迎えたマンドリン部は、過去3回も全国大会最高賞を受賞した強豪だ。しかし4年前、上級生の大半が卒業し存続の危機に。

その困難に立ち向かったのが当時中学3年の最上里菜さんと野平千咲希さんだった。「明治の伝統の音を絶やすわけにはいかない...」そう誓い頑張る2人だったが、コロナ禍も重なり、入学式での新入生勧誘もできなくなった。そんななか実行に移した起死回生の新入部員勧誘方法とは...? そして昨年、ついに4年ぶりに全国大会に出場。伝統の音を守り抜いた生徒たちの熱い思いに迫った。

どうぞお楽しみに!