医学部進学率の高い東京・暁星高校。その理由とは?医者か水泳選手か...五輪出場も狙える生徒が選んだ道

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名門校の知られざる姿を、生徒や親、教師など、さまざまな視点を通して紐解く密着ヒューマンドキュメンタリー「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回の主人公は、「暁星中学校・高等学校(以下、暁星)」の山口遼大君(高校2年生)。水泳部に所属し、昨年のインターハイ(全国高等学校総合体育大会)では見事、優勝。ナショナル強化選手にも選ばれ、2028年に開催予定のロサンゼルス五輪の出場も目指せる逸材だ。しかし遼大くんにはもう1つ、幼少の頃から持ち続けている夢が。2つの夢の間で揺れ動く青春の日々に密着した(2022年1月中旬に取材)。

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東京都千代田区にある暁星中学校・高等学校。創立134年の歴史をもつ、都内屈指の名門校だ。語学教育に力を入れており、英語とフランス語の2カ国語を履修科目とするなど、グローバルな人材の育成に注力している。部活動も盛んで、全国高校サッカー選手権大会に10回出場しているサッカー部や、全国大会で9連覇を含む13回の優勝を誇る競技かるた部などは全国的にも有名だ。

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まさに文武両道の名門校・暁星は、私立の完全中高一貫の男子校。幼稚園と小学校も併設しているが、系列の大学はなく、生徒は高校卒業後の進路を自分自身で決める。2021年春は東大に9人、その他の国公立に45人、早慶に83人など、高い合格実績を誇る。また、医学部へ進学する生徒が多く、なんと生徒の約3分の1が医学部志望。その約半分の生徒が医者の家系で、2021年春は144人が医学部に合格。なぜ、暁星には医学部を目指す生徒が多いのか? 進学指導部長の吉永昌弘先生に聞いた。

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キリスト教の理念に基づく人格教育で、社会に貢献する人材育成を行っている暁星。人の役に立つことを教育目標に掲げ、中高6年間を通してキリスト教の教育を受けることで「人を助ける精神」が養われ、医学部を目指す生徒が増えるのだという。

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幼稚園から暁星に通う遼大くんは、三代続く医者の家系に生まれた。自分も医者になることを夢見てきたが、もう1つ大きな夢ができた。それは幼稚園から始めた水泳。

「もともと医学部に行きたくて理系に進みましたが、水泳で頑張り、結果も出てきた。世界と戦える水泳選手にもなりたい」。2021年の夏、50m自由形でインターハイに初出場し、見事優勝した実績を持つ遼大くん。ナショナル強化選手にも選ばれ、五輪出場も期待できる逸材に。

しかしそんな快挙とは裏腹に、心の中にはある迷いが生まれていた。

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実は医者を目指すため、高校2年生の夏にきっぱり水泳をやめようと思っていたという。「水泳はもともと持っている本人のスペックも関わってくるし、努力ではどうにもならない部分もある。その点、勉強はやれば結果が出るから、どちらを取るかとても悩みました」と明かしてくれた。

医者か、水泳選手か...両立するのは体力的にも難しく、2つの夢の間で揺れ動く。しかし、もう高2の3学期。将来の夢に向けて、進むべき道を決める時が刻々と迫っていた。

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所属する水泳部の部長・杉野聡太くんとは、幼稚園からの幼なじみ。中学最後の都大会のリレーでは、優勝を果たした戦友だ。しかし、より高いレベルを目指すため週に6日、外部のスイミングクラブに通う遼大くんが、部活動に出られるのは月に数回。

聡太くんに話を聞くと、「遼大の存在は後輩にとっても刺激になり、チーム全体のモチベーションも上がる。もちろん部活に顔を出してくれたら嬉しいけど、遼大が部活のことを気にせず、泳ぎに専念できる環境を作るのが僕が一番に出来ること。友達としては、ぜひ五輪で優勝してほしい」と本音を語ってくれた。

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結果が出ない時もあきらめず、勉強と両立しながらコツコツ努力する遼大くん。今年の目標は、「ジュニアオリンピック」に出場して世界を相手に戦うことと、インターハイの連覇。

遼大くんの進路について、お父さんは「医者になるのも悪くはないけど、絶対になってほしいとは思っていない。もっとやりたいことがあれば、それで良い。『どの道でも、覚悟を持って進路を決めなさい』と言っています」。

水泳選手はけっして安定した道とはいえないが、お父さんはそんな遼大くんを誇りに思っていた。仕事で疲れた時は、インターハイで優勝した息子の勇姿を繰り返し見て、元気をもらっているという。「水泳は、0.01秒を縮めるために努力するスポーツ。そういう経験は将来に活きると思う」。

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どちらの道へ進んでもいいように、勉強にも励んでいる遼大くん。しかし、大事な試合と試験が重なってしまうなど、完璧な両立は難しくなってきていた。いよいよ決断する時が来た。相談したのは、中学時代からの良き理解者・森本康幹先生(上の画像・右)と、水泳部顧問の宇多川諒介先生だった。

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現時点では「頭の中がごちゃごちゃ」という遼大くんに、宇多川先生は「他人がこうしなさいと決めたほうに進むと、人のせいにしてしまう。人のせいにする人生は歩んでほしくないし、自分のことは自分で決めないと」と、アドバイス。幼稚園から暁星で学んできたため、進路で大きな選択を迫られることがあまりなかったという遼大くん。森本先生は「好きなことと現実との間で『どこかで折れなきゃ』と迷っていると思うけど、折れるのはもっと先で大丈夫。だいたいの道は遼大が自分で整えているはず」と、背中を押した。

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「試行錯誤のしがいがあるのが水泳。うまくハマったら気持ち良いし、嬉しい」と、水泳の魅力を熱く語ってくれた遼大くん。面談の3日後、高校生だけでなく社会人やオリンピック選手も参加する大事な大会が控えていた。遼大くんにとっては、今の力を試す絶好のチャンスだ。出場する50m自由形には、177人がエントリー。決勝に進むためには、予選タイムで全体の10位以内に入らなければならない。

後半で失速してしまうのがウィークポイントという遼大くんだが、予選では最後まで粘り、記録は23秒11。見事全体の7位に入り、決勝へと駒を進めた。高校生で決勝に進んだのは、なんと遼大くんただ1人。他は大学生や社会人、五輪出場経験のある選手など、経験豊富なトップレベルの選手ばかりだ。

――医者か、水泳選手か...実は遼大くん、すでに面談のあと決断していた。はたして選んだ道は? そして覚悟を決めて臨んだ決勝戦の結果は? ぜひ番組で見届けていただきたい。

番組では他にも、遼大くんが所属する名門スイミングクラブの練習風景やコーチから見た遼大くんの強さの秘密などを紹介する。

2月7日(月)夜10時放送! 「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「高野山高校...修行!読経!未来のお坊さん達...でも自分は?悩む青春」と題して送る。

今回紹介するのは、世界遺産の高野山にある和歌山・高野山高等学校。今年で創立136年の伝統校で、「宗教科」には未来の僧侶を目指す多くの生徒が通っている。山の上にある高校には全国から生徒が集まり、その多くは寮生活をしている。そんな中、1人だけお寺に住み込み、働きながら通っている生徒がいる。東京・町田市からやってきた2年生の小林佑くん。かつて自らも高野山高校で学んだ父の勧めもあって入学した。

今は恵光院というお寺に住み込み、一般客も泊まる宿坊の手伝いをしながら通学をしている。宿泊客の御膳を運んだり、布団を敷いたり、お寺の掃除をしたりとやることは多い。疲れて学校では寝てしまうことも。それでも日々懸命に働きながら、勉強や厳しい修行の日々を送る佑くん。しかし将来の夢は僧侶ではなかった...。雪に埋もれた高野山で、今はほとんど見なくなったお寺に住み込む「寺生」の姿を追った。

どうぞお楽しみに!