日本のビールが100円!? 中国ゼロコロナ政策で個人消費に異変<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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行列ができる「ホットマックス」のレジ。

新型コロナの感染拡大で、中国の武漢市が最初に都市封鎖されてから23日で丸2年がたちました。海外からの入国者を厳しく隔離し、市民の行動履歴を詳細に把握することで、一時は感染を抑え込み経済回復を先行してきた中国。しかし、ここへ来て経済が減速し、個人消費にも異変が生じています。その象徴ともいえる現場を取材しました。

金曜日の夜、北京市内のオフィス街。会社帰りの人で賑わうのが「ホットマックス」です。この店の特徴は消費期限が迫った食品や日用品を格安で販売する点です。200mlのパック入り牛乳は1本20〜30円。シャンプーや化粧水など品揃えも豊富です。日本のビールも置いてあり、値段を見ると500ml缶が約100円ほどで売られています。消費期限は2022年6月です。客は「安いところがいい。消費期限も悪くないし、値段もいい」と話します。

ホットマックスは2019年から個人向けの格安販売を開始し、3年足らずで約170店舗まで拡大してきました。客の一人は「この店がたくさん出店しているのは、経済の下降が原因だと思うよ」と話します。

昨年の中国の実質GDP成長率の3ヵ月ごとの推移を見ると右肩下がりで、10ー12月期は前年同期比プラス4%まで減速しています。消費動向を表す小売売上高の伸びも減速。昨年12月は前年同月比1.7%増と、前の月の半分以下となりました。

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中国の実質GDP成長率のグラフ。

背景にあるのが中国のゼロコロナ政策です。昨年後半から中国各地で新型コロナの感染が再び発生。中国政府は人々の移動の規制などを強化しました。その結果、消費意欲が落ち込み、低価格の商品が人気となりました。消費期限間近の食品の市場規模は2026年に約8000億円に達すると推定されています。

丸紅中国・経済調査総監の鈴木貴元氏は「中国の中でよいものが当たり前に手に入るようになっている。その中で値頃感のあるものを若い人が探すようになったというのが実態。結果的には消費の金額は伸び悩んでくる。このような現象がいろいろなところで起きている」と話します。

オミクロン株が流行する中、全市民の外出を禁止する事実上の封鎖措置が、西安市など3都市でとられました。さらに首都の北京でも、市中感染が確認された豊台区では、23日から住民全員(約200万人)のPCR検査を開始。来週に迫った北京オリンピックを成功させるため、中国政府は新型コロナを徹底して抑え込むゼロコロナの姿勢をさらに強めています。

今年秋には、中国共産党の党大会を控えていて、規制を緩める気配は感じられません。

丸紅中国の鈴木氏は中国の今年のGDP成長率を5%あまりと予測。しかし、ゼロコロナの徹底が成長を抑える可能性も指摘します。

「各地でのロックダウン(都市封鎖)が増えていく。一般市民が、そうした不安感で消費を抑え込むとなると、もう少し経済見通しを下げなければいけない。場合によってはGDP成長率は4%半ばぐらいまで押し下げられるのではないか」

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