「資本主義では環境問題は解決しない」マルクス主義者の斎藤幸平が激白!:日経テレ東大学

公開: 更新: テレ東プラス

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今回は、著書『人新世の「資本論」』(集英社)で新書大賞を受賞し、"マルキスト"を自称する大阪市立大学准教授の斎藤幸平さんをゲストにお招きし、マルクスとの出会い、資本主義の問題点などを伺う!

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マルクス主義のイメージをカジュアルに

今回のゲストは、自らを"マルクス主義者"と名乗る斎藤幸平さん。Twitterのプロフィールは「Marxist 」とのみ書かれている潔さ。
普段は大阪市立大学の経済研究科准教授として教壇にも立っており、2020年秋に発刊された著書『人新世の「資本論」』(集英社)が新書大賞を受賞するなど人気著述家の顔も持つ。

非常に立派な肩書きや経歴をお持ちだが、一般の方は"マルクス主義者"というフレーズに少し怖さや抵抗感を感じる場合も多いだろう・・・。斎藤さんは、そのようなマルクス主義に対する暗いイメージを少しでも明るくして「マルクスっていいじゃん」くらいのカジュアルなものにすることを使命だと感じており、今回の番組出演も快諾して頂けたようだ。

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ソ連や中国のような社会主義国家を目指したいわけではない

そもそもマルクス主義にはなぜマイナスなイメージがあるのか。斎藤さんは、ソ連の崩壊によって生まれた「思い込み」だと主張する。そもそもマルクス主義は、独裁や全体主義を求めているわけではない。資本主義が万能ではなく、格差や環境破壊を進めてしまうといった矛盾を孕んでいることを批判的に検討し、別の社会のあり方を提唱しているだけだという。

ただ、実際にソ連が崩壊し、中国や北朝鮮などの現存する社会主義国家も上手に運営できている事例がないため、マイナスイメージを持たれても仕方がないと、問題点や現状についても認め、あっさりと「ソ連は最悪だった」と発言した。ソ連のような国を目指すのがマルクス主義者ではないことがわかった。

斎藤さんはソ連などの社会主義国家とマルクスが描いていた「コミュニズム」は別物と捉えており、見捨てられていたマルクス主義の良い面を再評価したいという。

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環境問題と人新世

では、現在の資本主義のどの点がダメなのだろうか。斎藤さんは2つ問題があると指摘する。一つ目は、格差の問題だ。イーロン・マスクやザッカーバーグのように巨万の富を持つ富豪がいる一方で、世界の大半の人間が長時間労働をしたとしても、「普通の暮らし」ができないほど格差が広がっている
もう一つが、無限の経済成長を求め続ける資本主義が、地球環境を取り返しがつかないような形で破壊するようになっていることだという。行き過ぎた人類の経済活動が地球を壊す時代、それが本のタイトルにもなっている「人新世」だ。

だが、その問題への解決策がなぜマルクスなのか? 社会主義を実行したソ連は結果的に成長を優先し、環境破壊を続けたため、社会主義と環境問題は相反するようなイメージがある。しかし、斎藤さんが研究するマルクスのノートには環境問題への解決策が示されているというのだ。

電気自動車や再生可能エネルギーも、無限の経済成長を求め続ける限り、資源やエネルギーを消費して行うことに変わりはなく、根本的な解決には至らない。マルクス主義の中には環境問題と経済格差を解決する脱成長コミュニズムのビジョンがあり、その思想を再評価するためにも自著名は『人新世の「資本論」』にしたとのこと。

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YOUはなぜマルクス主義者に?

斎藤さんは、日経テレ東大学でお馴染みの成田悠輔さんの1つ下で現在34歳。マルクス主義者というと高齢な方に多いイメージもあるが、なぜマルクス主義に興味を持ったのか。「成田さんはMAD、僕はマットウ」と軽快な学者ギャグを披露するが、マットウな理由があるのだろうかーー。

若き日の斎藤青年は、アメリカに憧れ、国連で働きたいという夢を抱きアメリカの大学(ウェズリアン大学 )に進学した。しかし、渡米して間もなくハリケーン・カトリーナによる米史上最悪の自然災害が発生したことが、斎藤青年の将来を大きく変えた

災害地域の中でも貧しいエリアは復旧されず放置のまま・・・ボランティアとして斎藤さんのような学生たちが再建を手伝うのがやっとという状況だったという。アメリカの豊かさから見放された人たちと触れ合う中で、資本主義の限界を感じたーー

そして「やっぱりマルクス主義だ!」となったという・・・。この「やっぱり」は飛躍しているように感じるが、資本主義の中で解決しようとしても国連で働くくらいが限界であるため、根本を変えるしかないと思ったとのこと。

マルクスの『ドイツ・イデオロギー』の中に「意識が社会を作るんじゃない 社会が意識を作るんだ」という一文があり、資本主義の範囲で意識改革をするだけでは解決できない現実を知った斎藤さんは、「社会自体を変える必要がある」と考えるようになり、強く共感したという。

これが、マルクス主義者になったマットウな理由というわけだ!

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環境問題は資本主義では解決できない!

資本主義に浸かって生きてきた側からすると、新技術の登場などで気候変動問題も解決すると思ってしまうが、それは「既得権益者が望んでいる未来でしかない」と斎藤さんは断じる。技術で目先の問題が解決するとしても、高齢者が多い既得権益者たちは、自分たちが生きている間だけ現在の社会システムで豊かに暮らすことを願っている。ただ待っているだけでは、搾取構造も環境問題もしわ寄せは若い世代に行くと警鐘を鳴らす。

利益を追求することで、多くの人間が幸せになることを目指した資本主義であるが、人の不安を煽るような方法で利益を上げる企業も多く、またその利益は既得権益者に吸い上げられているだけであり、正当性が揺らいでいるという・・・。

経済メディアであるテレビ東京・日本経済新聞の根幹も揺るがしかねない議論の続きはYouTubeで!

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日経テレ東大学」YouTubeチャンネルで配信中!です。お見逃しなく!

※番組情報
【成田悠輔より◯◯】いまの資本主義、もう限界!【赤い彗星・マルキスト斎藤幸平】

出演:
高橋弘樹(テレビ東京プロデューサー)

ゲスト:
斎藤幸平 (マルキスト、大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部准教授)

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