社会課題に女子目線で挑む。ヒット作も生まれた福岡雙葉高校のものづくり現場に密着!

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歴史や校風、卒業生のネットワークまで、名門校の知られざる姿を通してその秘密に迫る「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時 ※1月1日(土)昼12時からは新春SPを放送)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回紹介する学校は、「福岡雙葉高等学校(以下、福岡雙葉)」。約7割の生徒が推薦で大学に進学する名門女子校だが、自主的なものづくりを通してさまざまなことを学ぶ生徒が多くいる。なぜ彼女たちはものづくりに挑戦するのか、どんな困難を乗り越えてプロジェクトを実現しているのか。高校生ならではの新鮮な視点でものづくりに挑戦する、女子高生たちの青春を追った。

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福岡県福岡市の閑静な住宅街にある、福岡雙葉高等学校。今年で創立88周年。東京都・神奈川県・静岡県に姉妹校を持つ雙葉学園のひとつで、約7割の生徒が推薦で大学に進学する。

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1日のスタートは礼拝から。クリスチャンの生徒は多くはないが、カトリックの教えに基づいた教育を行っている。クリスマスが近づくと、キャンドルサービスの練習にも熱が入る。

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そんな福岡雙葉には、「グローバル・リーダーコース(通称・GLコース)」という特別なコースがある。女性リーダーの育成を目指すコースで、生徒たちは社会の課題を解決するためにさまざまなプロジェクトを立ち上げ、実践していく。

この日のテーマは、「どうしたら若者が選挙に行くのか」。投票に関するアンケートを親しみやすいマンガで作ったり、人気ゲームのキャラクターを政治家に置き換えた動画を作ったり、女子高生ならではの感性が光る。

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さまざまな社会課題に対して楽しく、自分らしく向き合う。そんなクリエイティブなGLコースを担当しているのが、社会・GL統括の清水功也先生。授業でも、身近な問題に向き合うことの重要性を熱く説いている。先生は、生徒が参加できるプログラムを紹介し、必要に応じてサポート。その1つが、「慶應義塾大学SFC」が主宰する高校生以下が対象の、ものづくりコンテスト「FAB 3D CONTEST」だ。

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そのコンテストに挑戦し、今回解説してくれたのがGLコースの(左から)臼田樹乃香さん(高1)、宮副叶和子さん(高2)、松尾佳南子さん(高2)たち。新型コロナウイルスの感染拡大後、取手やスイッチなどに直に触れずに済む「ウイタツ」という作品で応募。中は空洞になっており、消毒液を入れることができる。名前の由来は「ウイルス+タツノオトシゴ」で、「ウイルスを断つ」という意味も込められている。

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この「ウイタツ」は、「Tinkercad」というソフトを使ってiPadで設計。設計データを学校と連携している工房に持ち込み、3Dプリンターで出力したそうだ。松尾さんによれば、ソフトの使い方は講習会で教わったものの、メンバー全員文系で、設計は初心者。全てが初めての体験で、完成までは失敗の連続だったという。

臼田さんは、「何もないところからプログラミングして、形を作っていかなきゃいけなかったので、難しかった」と振り返る。試行錯誤を重ねて作り上げた「ウイタツ」。製作過程でのチームワークも評価され、26作品が出品されたコンテストで、見事、特別賞(チーム部門)を受賞した。

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チームのリーダーを務めたのは、宮副さん。もともとリーダー的なポジションが苦手で、「リーダーが嫌だったので、全力で避けていました」と笑う。しかし今回の経験を経て、宮副さんは変わったという。「素敵な経験をさせていただいた。この経験でできた力を、他で試すことができそう。積極的にチャレンジしたい」。ものづくりでの経験が、自信と成長につながった。

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こちらは同じく特別賞(個人部門)を受賞した柳瀬真里さん(高2)の応募作品、「まえからトレイン」。

食品ロスの観点から、コンビニエンスストアなどに陳列された食品を手前から取ってもらう「"てまえどり"運動」を促進するための作品だという。おにぎりが乗った「まえからトレイン」を手前から外し、会計を済ませたら、おにぎりと二次元コード付きのピックだけを持って帰る。二次元コードを読み取ると、ポイントがたまる仕組みになっている。コンビニエンスストアに協力してもらって作ったというデモンストレーション動画は、ぜひ番組で。

GLコースで学んでいる柳瀬さんは、以前から食品ロス問題に心を痛めていたという。「周りの人は、『"てまえどり"にご協力ください』という表示があっても、後ろから取ったりしていて気になっていました。日本の食品ロスは、世界的に見ても相当多いと学校で習っていたので、"てまえどり"と食品ロスをつなげられたらと思いました」。

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福岡県太宰府市にある、市民のためのものづくり工房「ファブラボ太宰府」を訪れた。GLコースの生徒たちも、ここに足繁く通っている。この日は、3年生の八巻彩乃さんと藤武ひかりさんの姿が。2人が試行錯誤して練り上げたデザインを、レーザーカッターが精密に木の板に刻んでいた。板は、地元九州特産の"日田杉"。昨年、豪雨災害の被害を受けた林業を元気づけたいと選んだ。

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ここから、女子高生ならではのセンスを活かしたヒット商品が誕生した。日田杉で作った箱やコップなどに水を注ぎ、その上にいくつものパーツを組み合わせたインテリア風のパーツを載せる。木が吸い上げた水が蒸発して加湿する、「かしつ木」という作品だ。木の温もりを感じられ、デザインも洗練されている。

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高校生向けのビジネスコンテストに出すために作り、ネットで販売したところ、なんと合計170個ほど売れ、売上金額は約41万円(※現在販売は終了)に。制作資金となった30万円は主催者に返し、残りの11万円の一部は、豪雨災害で被害を受けた地域に寄附した。

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「かしつ木」は、「リアビズ 高校生模擬起業グランプリ」というコンテストで金賞を受賞。藤武さんは、「達成感を味わえたし、自分の持っている力を実感できた。将来的には"社会課題"と、自分の興味のある"経営"を組み合わせた形の企業を立ち上げたい」と語った。

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さまざまな社会問題を解決するために、自分も何かできることをしたい。吹奏楽部の2年生・嘉藤日向乃さん(高2)にもずっと気になっていることがあった。部室の隅に保管していたのは、昨シーズンの冬に生徒たちが使った大量の使い捨てカイロ。クラスメイトや部活の仲間に呼びかけて集めたという。

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実は、使い捨てカイロの中には汚れた水を浄化する成分が含まれていて、リサイクルが可能なのだという。授業で環境問題について調べている時にそれを知った嘉藤さんは、「GLディレクターズ ミーティング」の場で、GLコースの仲間に相談した。

GL統括の清水先生は、「課題を解決するためにどうすれば良いのか。今後、彼女たちが世に出て行った時に、いろいろな場面で課題を解決していく力につながっていく。その訓練や経験を、今積んでいるのでは」と語る。社会を少しでも良くするために、自分たちにもできることがある。高校生たちの挑戦はまだまだ続く。

番組では他にも、自由な校風がうかがえる英語の授業風景や、GL2年生の授業「Special Business Program」での企業とのディスカッションの様子を紹介。そして今年最後の放送にふさわしい、全校生徒によるクリスマスイルミネーション点灯式の様子もお見逃しなく!

次回の「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、2022年1月1日(土)昼12時放送! 「新春!がんばれ!中高生スペシャル」と題して送る。

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