「おせちの相場」2000人に調査 通販で失敗しないポイントを「おせち案内人」が解説

公開: 更新: テレ東プラス

osechi_20211225_01.jpg画像素材:PIXTA

日本のお正月に食べるごちそう「おせち料理」。かつてはご家庭で作るのが年末の恒例行事でしたが、近年は伝統的なものだけでなく、和洋折衷の料理を盛り込むなどバラエティ豊かな商品も多く、内容、価格、販売方法など多様化してきました。今回は、アンケートにより令和の「おせち」事情を調査。「マツコの知らない世界」(TBS系)にも出演経験のある"おせち案内人"に、おせちの伝統から最新情報まで話をうかがいました。

「おせち」に関するアンケート結果

Yahoo!ニュースの協力を得て、全国10代~60代以上の男女2000人にアンケートを実施(2021年12月)。

osechi_20211225_02.jpg
まず、「例年、お正月に『おせち料理』を食べますか?食べませんか?」という質問への回答は、「食べる」が72.0%、「食べない」が28.0%。7割以上が「おせち」を食べるという結果となりました。

年末年始も営業するスーパーやコンビニ、飲食店の有無などから都市部と地方での"地域差"や"年代""性別"の違いを予想しましたが、意外にもそれらによる偏りはほとんどなし。ただし、"1人暮らし"の方は他と比べて「食べない」の回答率が高く、「1人だからいつも通りの食事でいい」(40代・女性・愛媛県)などの意見がみられました。

「食べない」理由についてのアンケート結果は、「食べる習慣がないから」13.9%、「高いから」12.6%、「作れないから」7.8%、「おいしくないから」7.5%、など。傾向としては、1つは、「食べる習慣がない」のほか「年末年始は旅行にいくので」(40代・女性・群馬県)など"生活様式"からの理由。もう1つは、前述の"1人暮らし"に加え、年配層の「母が亡くなり、作る人がいなくなったから」(50代・女性・滋賀県)など"家族構成"からの理由が大きいようです。

また、全く「食べない」のではなく、「家族も少ないのでお雑煮とお刺身、煮物、紅白なますがあればいいと思い、去年からやめました」(50代・女性・長崎県)と簡略化の傾向も。時代の変化により、「昔のように家事を休むためのおせちの意味合いはなくなってきた。昔ながらの習慣は残したいですけどね」(60代以上・男性・広島県)との意見もありました。

一方、「食べる」と答えた方には、予算や購入方法などについてもうかがいました。

osechi_20211225_03.jpg
家族全体での予算は、「5000円以上10000円未満」が最も多く24.1%、続いて「5000円未満」23.5%、「10000円以上20000円未満」18.1%、20000円以上は合計7.3%となり、相場は10000円未満のようです。

また、「おせち料理を買いますか?作りますか?(複数選択可)」の質問には、「買う」が48.5%で約半数、「作る」は33.6%、「親戚・知人が作ったのをもらう」は11.2%で、その他「作る物と買う物半々くらい」などの回答もありました。

osechi_20211225_04.jpg
さらに「どこで購入しますか?」という質問には、「スーパー」29.0%、「通販・インターネット」10.0%、「百貨店」7.1%、「料亭・レストラン」4.1%、「ホテル」0.8%との回答が。近年はネット通販の利用が増えていますが、「写真と実物が違う場合がある」「たくさんあり過ぎてどこで買えばいいかわからない」という意見も寄せられました。

osechi_20211225_05.jpg
最後に「好きなおせち料理」ランキングも発表! 1位は子供から大人までみんな大好き「栗きんとん」45.6%。続いて、2位「数の子」43.1%、3位「黒豆」40.4%、4位「伊達巻」38.3%、5位「かまぼこ」37.5%という結果となりました。これから「おせち」を準備される方は、ぜひご参考に!

osechi_20211225_06.jpg画像素材:PIXTA

失敗しない「おせち」選び

アンケートの結果と、寄せられたご意見や疑問を基に、「株式会社オージーフーズ」のおせち担当として1,500種類を越えるおせちの具材を研究してきた中井千佳さんに話をうかがいました。

Q.近年、「おせち」の売り上げ、売れ筋(内容・金額)、料理の内容などに変化はありますか? また、おせちに代わる食材として伸びてきたものはありますか?

「おせちは年々市場規模が拡大しています。扱い業者(販売会社)も増え、通販に参入している飲食店などもあるため全体売上は伸びています。売れ筋は、1人前おせち(コロナの影響や、コロナが始まる前から個食化の傾向は進んでいました)、有名レストラン、料理人のおせちや和洋折衷の2段重・3段重です。コロナ禍においては、豪華一点主義の30000円以上のおせちにも注目が集まり、低価格(10000円前後)と高価格(30000円以上)の二極化の傾向にあります。

おせちに代わる食材で伸びた商品がある感覚はありません。おせちと一緒にカニや松前漬けなど海産物を並べたり、近年はローストビーフや生ハムなどもおせちに入っているので、オードブルを、という感覚になってきているかもしれません」

osechi_20211225_07.jpg画像素材:PIXTA

Q.そもそも「おせち」の意味は? また、起源や習慣化された背景は?

「日本では弥生時代に始まったといわれ、暦上年5回ある御節句(おせっく)のことを御節供(おせちく)といい、5回のうちの年の一番初めに祝う正月料理を特に『おせち』と呼ぶようになりました。その年の五穀豊穣、健康祈願を願って縁起を担いで食べられてきています。元は神様へのお供え物で、年神様をお迎えし、騒がしい台所をやすませて神様と一緒に食べるというところから習慣化しています」

Q.「おせち」として好ましくない食材、料理はありますか?

「本来は、年のはじまりから殺生すべきでないという意味で、牛や豚など四足歩行の肉を食べるのはよくないといわれていましたが、今はローストビーフや生ハムなども特に気にすることなく食べる習慣になっています」

Q.「おせち」に地域差はありますか? また海外にもこのような文化はあるのですか?

「地域による特色はあります。長崎県ではクジラやナマコを薄くスライスしたもの、石川県ではベロベロと呼ばれる、玉子を寒天で固めたもの、長野県では長芋ようかんと呼ばれる、長芋をすりおろして固めたものなど、それぞれの地域でお正月に食すものは特色があります。また、沖縄や北海道はおせちを食べない、という文化もあるようです。

海外では、私の知る範囲では聞いたことがありません。中国は旧正月に餃子を食べるなど、その国独自のニューイヤーの文化があると思います。日本では正月は家族で過ごすものという文化が強いですが、欧米では正月は恋人や友人と過ごし、クリスマスに家族で過ごすという文化だそうです」

Q.1人前おせちの需要が伸びているというお話がありましたが、子供や若い世代向けにもオススメのおせちはありますか? またコロナ禍で急速に普及したUber Eats(ウーバーイーツ)などによる宅配おせちはあるのでしょうか?

「キャラクターおせち(ミニオンズ、ワンピース、ディズニーなど)、アイドルの企画おせち、フレンチやイタリアンなどの洋風おせち、オードブルおせちなど、若い方でも取り入れやすい商品ラインナップは広がっています。

ウーバーイーツなどについては、おせちに関しては"今日食べたい"というニーズはないようなので、まだ聞いたことはありません。ただし、コンビニでは少量のセットが当日でも販売されているものもあります」

Q.ネット通販などで購入する際、「写真と実物が違う」「数が多すぎて選べない」などの声がありました。失敗しないためには何を基準に選べばよいでしょうか?

「販売業者の信頼性が最も重要です。どの販売者も年一回のおせちの販売で信用を失うわけにはいきませんので、とても神経を使う仕事をしています。そういう意味では、SNSが発達している現在、最初から問題のあるおせちでだまそうと思って販売しているものはないに等しいと思います。あるとすれば、過度に期待したことに対してのイメージ違いという結果にすぎないのではないでしょうか。

しいて言うなら、人気がありすぎるおせち、限定数なく上限なく販売しているおせちは、少し注意が必要です。おせちは年明け2、3月から各種品目の製造が始まっており、上限なく販売している商品は原料の確保が難しくなるからです。また、人気があるおせちほど、早い段階から製造がはじまり冷凍期間が長くなります。品質は冷凍保存で保たれますが、ちょっとした風味などは落ちてくる可能性もありますので、なるべく保管が短いものを選ぶのが味で失敗しないコツと言えるでしょう。とはいえ、現在は冷凍技術も向上していますので、ほとんど失敗はないと思います。

上記を踏まえて、何を基準にするかは、"ご自身が信頼をおける販売者かどうか"と、"実際に注文して食べた方がオススメしているかどうか"で選ぶとよいかと思います。ただしSNS上の口コミはPRということもあるので、その見極めは必要です。本当の知り合いが食べた感想は参考になります。

失敗と思うのではなく、合うか合わないかは自分で1回は買ってみるのが一番です。そうすることで、ひとつの基準ができますので、その中でおいしかった品目を2、3品覚えておいて、翌年同じ品目で比べてみるといいと思います。

フードロスの観点からも、早く受注を終了して、残さないように販売している業者もあります。消費者の方にもそういう意識で早めにおせちを予約購入する習慣になるといいと思っています」

osechi_20211225_08.jpg画像素材:PIXTA

Q.全てを作ったり購入したりしなくても、簡単に作れるおせちや、小分けのものを買って盛りつけるなど、構えず「おせち」を楽しむ方法はありますか?

「『祝い肴3種』といわれる3品のみ購入して、お皿に3種だけ少量ずつ盛り付けると食卓がお正月らしくなっていいかと思います。

祝い肴3種は、関東では『黒豆、数の子、田作り』、関西では『黒豆、数の子、たたきごぼう』といわれ、この3種とお餅だけあれば、お正月をお祝いすることができます。

おせちにはそれぞれおめでたい意味や"いわれ"があります。『黒豆』は、黒くなるまでまめまめしく(まじめに)働けるように。『数の子』は、子だくさんより、子孫繁栄を祈願して。『田作り』は、畑に小魚をまいて五穀豊穣を祝ったことより、豊作になるように。『たたきごぼう』は、根菜で土に根付くところから、家の土台がしっかりするように。

本来は神様を迎えるにあたって台所を休ませ、火を使わないというところからきていますが、毎日家事仕事で忙しい女性を休ませる意味でもおせちは保存がきく食材で作り、3が日は火を使わないというのが日本に古来より伝わる文化です。今はキッチンに立つのは女性だけではないと思いますが、新しい年を落ち着いて迎え、1年の無病息災を家族で願いながら食卓を囲んでいただきたいと思っております」

※この記事はテレ東プラスとYahoo!ニュースによる共同企画で、Yahoo!ニュースが実施したアンケートの結果を活用しています。アンケートは2021年12月9日、全国のYahoo! JAPANユーザー(10代~60代以上)を対象に行い、2000人から有効回答を得ました。

osechi_20211225_09.jpg
取材協力:「株式会社オージーフーズ」おせち担当・中井千佳(なかい・ちか)さん。
株式会社オージーフーズ
オンラインショップ「とっておきや」(※2022年おせちは完売しました)
おせちブログ