さばを愛するイギリス人男性が、創業240年の名店でさば寿司に感動!屋久島でさばの一本釣りも:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

450年の伝統を守る鋸職人に感動! 姫路城を支える宮大工に弟子入りも

続いて紹介するのは、アメリカに住む、鋸(のこぎり)を愛してやまないベンさん。

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釘を使わず木を組み合わせる「木組み」など、宮大工の技術を教えるワークショップに参加しているベンさん。本職は大工で内装工事や家具を手がけているベンさんは、ニッポンの大工道具が大好き。特に、ニッポンの鋸に興味を持っています。

木材を切るのに使う鋸。今から1500年前の古墳時代には、すでにギザギザした道具があったといいます。その後、木の葉型に形を変え、明治時代に入り、現在使われているような両刃型の鋸になったそう。2つの刃は役割が全く異なり、刃が粗い「縦引き」は木目と平行に切る時に、刃が細かい「横引き」は木目に反して切る時に使います。この両刃の鋸は日本人が発明し、海外の大工にも人気。

「私は5年前、ニッポンの鋸に出会いましたが、その切れ味に驚きました」。大工道具が作られるところを見て勉強したいと話すベンさんを、5年前、ニッポンにご招待!

向かったのは、千葉県鴨川市。かつてこの地は、「南総里見八犬伝」で有名な里見家に仕えた刀鍛冶が鋸を製造。房州鋸と呼ばれ、かんぬきの鉄棒さえ切断してしまう切れ味だったため、江戸時代には、悪用を恐れた徳川幕府が製造中止を命令したそう。

そんな房州鋸の450年に及ぶ歴史を、ただ一人継承する職人が粕谷雄治さん。粕谷さんは大工用をはじめ、盆栽用など50種類以上の鋸を全て手作りで製作しています。作った鋸を見せていただくと、「自分が使っている鋸より刃が細かくて美しいですね」。敷居や鴨居など細い木を切る鋸で試し切りをさせていただくと……「こんなに楽に切ったのは初めてです」と、その鋭い切れ味にびっくり!

今回、特別に鋸作りを見せていただけることに。材料は日本刀と同じ、島根県の安来の白紙2号と聞き、「それは切れるはずですね!」とベンさん。出雲特産の砂鉄で作られる和鋼・安来鋼は希少価値が高く、現在は入手すら困難。まずは、この鋼を鋸の型に裁断。型ができあがったら「目抜き」という作業で刃を作っていきます。

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目の細かい横引きは、3.3cmの間に22本の刃が寸分違わず並んでいます。そして目の荒い縦引きには、ニッポンならではのこだわりが。粕谷さんによると、最初から粗いと引っかかってしまうため、最初は細かくし、だんだん粗くしているそう。

丸2日はかかるという鋸作り。次の作業は、最も神経を使う焼き入れです。約780度に熱した窯に鋸を入れ、熱を加えます。焼き入れは一発勝負。熱くしすぎると割れ、焼きが不十分で使い物になりません。鋸の焼き色だけで、その温度を見極めます。

続いて、菜種油で冷やして硬度を高めます。水だと冷たすぎてヒビが入ってしまうそう。鋸は他の刃物と違って薄く、硬いままだと欠けてしまうので、柔らかくする必要があるのです。そのため、一度硬くなった鋸を翌朝約350度の炭火に入れ、柔軟性を高める「焼き戻し」を行います。

冷ました後は、銑(せん)というヤスリを使い、鋸を薄くする作業へ。厚さは、なんと0.7mm! さらに、鋸の刃にもこだわりが。ヤスリがけは、ひとつの刃に3箇所。上目(うわめ)は高さを合わせなければ全ての刃が木にあたらないため、慎重に行います。

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次は、鋸の刃を一本おきに叩いてアサリ貝のように開かせる「アサリ出し」。顕微鏡で見てみると、確かにズレが! このズレがあるからこそ、木屑が詰まらなくなるのです。こうして、さまざまな工夫をして出来上がる房州鋸。粕谷さんは職人の細かな注文に応えるため、手作りにこだわっているそう。

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別れの時。「これまでニッポンの鋸が好きでしたが、さらに好きになった気がします」と話すベンさんに、「日本の鋸を使ってくれて外国の方に勧めてくれれば一番いいな」と粕谷さん。プレゼントに鋸をいただき、「大切に使います」と握手を交わしました。それから5年経った今も、粕谷さんは日々鋸作りに精力を注いでいます。

続いて向かったのは、どうしても行きたかった国宝・姫路城。約400年前に池田輝政によって建てられた城で、法隆寺と並び、ニッポンで最初に世界文化遺産として登録されました。

念願だった天守閣に上り、ベンさんが「ようやく本物に触れることができました」と感激したのは2本の心柱。約25mの柱が地下から6階まで貫き、姫路城を支えています。東心柱はなんと400年前の築城当時のもので、西心柱は1本の木ではなく、2本の木をつなぎ合わせたものだそう。

過去2回、大きな修復工事が行われた姫路城。特に昭和の大修理では、腐ってしまった西心柱の交換が最重要課題でした。ところが、交換用の木を運んでいる途中、木が折れる事故が発生。この事態を救ったのが、当時の宮大工たちでした。「木組み」というニッポンの伝統的大工技術を使い、残った木と新たに調達した木を組み合わせ、丈夫な心柱に仕上げたのです。

今回は、平成の大修理を請け負った宮大工の皆さんが、ベンさんを受け入れてくださることに。「西嶋工務店」は、約390年続く大都流という流派を継承。大都流32代目当主・西嶋靖尚さんが、平成の大修理を行った時の図面を見せてくださいました。古くなった床板の交換について全てmm単位で指示が書かれ、中には床板の一部分の交換など、極力元の素材を残していく方法が取られています。

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ここで、西嶋さんがスタッフの岩本剛さんを紹介。今回、岩本さんを兄弟子とし、ベンさんが弟子入りすることに。宮大工の世界は徒弟制度が当たり前。若いお弟子さんたちは、寮に住み込みで働いています。

ニッポンの伝統的木造建築は、木材をそのまま生かすのが特徴。そこには、木の性質を最大限に引き出す大工道具の存在が欠かせません。岩本さんが一番よく使う道具として挙げたのは鑿(のみ)。木に穴を彫る時に使い、釘をほとんど使わない宮大工にとって木材をはめ込む「ほぞ穴」は大事な加工のひとつ。岩本さんは鑿を100本は持っているそう。

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さらに、岩本さんが鋸のお手本を見せてくださいました。「刃をちゃんと研いでいるのが、音を聞いて分かりました」と話すベンさんに、西嶋さんは「それ分かったらすごいよ」と感心! ここでアメリカから持参した鋸を使い、腕前を見ていただくと、西嶋さんは「力が抜けていて上手いです」と褒めてくださいました。
しかし、「道具の刃が切れてない」という指摘も。一つでも刃が欠けていると、切り口の美しさが損なわれてしまうのです。「大工の道具は命の次に大事なものです、もっと道具を大切にしましょう。そうしたらもっと良くなります」とアドバイスをいただきました。

その日の夜、岩本さんが夕食に招待してくださいました。奥さんが作った姫路レンコンの磯辺揚げや薪ストーブの上で煮込んだおでんが並び、日本酒と共に舌鼓を打ちます。おでんには生姜醤油をかけて食べるのが、姫路流。

翌日、西嶋さんと訪れたのは和歌山県の高野山。世界遺産にも登録されている高野山には、金剛峯寺の他に寺院が117カ所も! 西嶋さんは「今私たちがやっている現場です」と、清浄心院の一角に建築中の日本最大級の護摩堂を見せてくださいました。護摩堂とは、煩悩を焼き払い、心願を仏様に伝える修行の場。工期は6年、2020年に完成予定です。「この建物はこれから1000年残ります」という西嶋さんの言葉に、驚くベンさん。

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「ここの垂木のとっても素晴らしいところは、扇垂木になっています」と西嶋さん。垂木とは、屋根板を支える木材。これが扇のように拡がり、1本1本長さが違っています。さらに外側に向けて、垂木が反り上がっているのも特徴。この曲線が、護摩堂の美しさを際立たせるそう。しかも垂木の断面をよく見ると、形が全て異なっています。実はこれも、いにしえから伝わる教本で1本1本決められているのだとか。

ここで、西嶋さんから垂木を切って仕上げる仕事を任されます。まずは、粕谷さんからいただいた房州鋸で練習。房州鋸は熟練の職人が好む薄い鋸で、使い方を誤ると折れてしまうそう。扱いに慣れず、切り口にズレが生じてしまいました。粕谷さんの鋸を自分のものにするため、気温2度の寒さの中、休まず練習を続けます。

2時間が経過。西嶋さんに「とても良くなりました!」とお墨付きをいただき、いよいよ本番! ただでさえ失敗の許されない大仕事ですが、さらに難題が。垂木を切る際に、すぐ下の木材を傷つけてしまうと全て交換になってしまいます。しかも、ヤスリがけはせず、鋸の切り口がそのまま仕上げになるため、一度刃を入れたら外せません。

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プレッシャーの中、岩本さんがつけてくれたガイドとなる線を見失わないよう、木くずを吹き飛ばしながら切り続けます。そして、西嶋さんが切り口を確認。すると……「オッケーです」の言葉が! 見事、真っ直ぐな切り口を残すことができました。「こんな機会を与えてもらい、本当にありがとうございました」と感謝を伝えます。

別れの時。「どうやって感謝の気持ちを伝えたらいいのか、本当に幸せな時間でした」。「私たちもベンと出会えてとても幸せです。ファミリーです」と話す西嶋さん、岩本さんと握手を交わします。西嶋さんからは、これから大きくなってほしいという思いを込めた桃太郎の置き物をいただきました。

ニッポンご招待から5年。ベンさんが仕事をした護摩堂は、昨年5月に完成しました。「このお堂にベンさんの仕事を見にきてください。私たちが一緒にご案内させていただきます」と西嶋さん。そしてベンさんは帰国後、設計事務所に就職。ニッポンでの経験を生かして仏壇を製作するなど、もの作りの会社を立ち上げる夢に向かって頑張っています!

12月6日(月)夜8時からは、ゲストにウルフアロン(東京五輪柔道100kg級金メダリスト)、高橋真麻を迎えて、月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」【ご招待で人生変わっちゃった!】を放送!

「青森で生の津軽弁に触れ、学びたい!」
“津軽弁”を愛するオランダ高校生のハムザさん。念願だった津軽弁の本場・青森県へ!
一家で60年リンゴを育てる宮西さん宅にお世話になり津軽弁トーク生活を体験。さらに憧れのストーブ列車に乗車し大興奮!
初来日から9カ月後…再び宮西さん一家の元へ!そして五所川原の立佞武多(たちねぷた)に参加する貴重な体験も!あれから4年…新たな目標ができたとの報告が!

「焼き鳥の焼き方・作り方を学びたい!」
“焼き鳥”を愛するスイス在住でイタリア人のベネデッタさん。東京・西早稲田の名店「はちまん」で“串打ち”や“継ぎ足しのタレ”の作り方を教えていただく。
さらに1200年の歴史を持つ“紀州備長炭”発祥の地・和歌山県田辺市へ。炭焼き職人・北山さん夫婦の元を訪ね、手間と時間をかけ、情熱のこもった炭作りに感動!あれから3年…ベネデッタさんから嬉しい報告が!

どうぞお楽しみに!