大量リストラ、電力不足の懸念...EVシフトで何が起きる!?自動車産業はより良いミライへ走っているのか!?

公開: 更新: テレ東プラス

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メインMCに経済学者の入山章栄教授を迎え、世の中に溢れる事実(ファクト)を感情論ではなく論理的(ロジカル)に読み解く、新たな経済討論番組『FACT LOGICAL』。

今回のテーマは「テスラは日本経済を破壊してしまうのか!?」。世界的に電気自動車(E V)へのシフトが強まっていますが、部品メーカーの雇用が失われるなどの懸念もあります。日本はEVを推進するのか、ハイブリッド車なのか、それとも燃料電池車かーー。論客3人が熱く議論しました。

MCは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん、ゲストM Cは元「WBS」キャスターの北村まあささん。ゲストは作家で元東京都知事の猪瀬直樹さん、モータージャーナリストの岡崎五朗さん、日経BP研究所上席研究員の狩集浩志さんです。

世界のEV販売の勢い

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最初から衝撃的な数字が出てきました! 2020年に310万台だったEVの世界販売台数は2028年には3000万台に増えます。2030年に乗用車の48%をEVが占めるという予測です。この中でも、注目はやはり「テスラ」。イーロン・マスク社長の会社で今回のゲストの猪瀬さんの愛車もテスラです。

小泉元総理とエコカー談義!?

猪瀬さんは最近出版した著書「カーボンニュートラル革命」を書くにあたって「乗ってみないとわからない」と購入したそうです。さすがの実践行動派!テスラの乗り心地も結構気に入っているようです。

「世界が脱炭素に向かい、中国も2060年のカーボンニュートラルを打ち出している。そんな中で自動車の流れはEVに向かうだろう」と語ります。「気候変動というのが大きなトレンドで、ビジネスも全部そっちに動いている。持続可能な世界がどう作られるかという方向で動いてます」。

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ここでさりげなく1枚の写真が。写真には猪瀬さんのテスラを見る小泉純一郎元総理。小泉さんは「トヨタMIRAI」に乗ってきたそうです。EVと燃料電池車というまさに夢の対決。日本の未来について語ったそうですが、ダジャレですか!?

続いて日経BP研究所上席研究員の狩集さんも「世界はやはりEVを中心に潮流は来ているかなと。ただ長距離走るような商用車はまだ難しい。燃料電池車っていうのも選択肢としてはあるのかなという形ですけど、コストの面を考えていくとEVが主流になるのかなと思っています」。なにやらE V支持派が優勢の感じ。

一方、モータージャーナリストの岡崎さんはこの2人とは違ったスタンス。最近、「EV推進の罠」(ワニブックス)という本を出した岡崎さんは、「2028年にEV3000万台。これはムリ」と断言します。自身を例に挙げて「マンションに住んでいるから自宅で充電できないんです。自宅で充電できないと、なかなかEVを便利に使うことができない。この成長カーブはちょっと難しいんじゃないか」とE V市場急拡大の予測に疑問を呈します。

EVはスマホか?

入山さんはスマートフォンの普及速度を例に挙げ、自動車も一気にEVに切り替わる可能性を指摘します。

岡崎さんは「今、ほとんどの人がスマホを使っている。ガラケーよりもスマホの方が使いやすくて便利だったから普及したわけですね。EVがガソリン車やハイブリッド車と比べて、もうめちゃくちゃ便利ですごいものなのかっていうとどうでしょうか。自宅充電できる人にはいいですが、そうじゃない人にとってはすごく不便な面が結構多いんです」と首を振ります。

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「マンションに充電施設をつければいいだけ」と猪瀬さんが突っ込みます。それでも現実を見ると、世界で一番EV普及率が高いノルウェーは、休日になるととんでもなく長い充電待ちの行列ができているそうです。E Vを増やすために再生可能エネルギーを増やし、充電インフラも整備しないといけない。日本がこうした一連のセットを本気で推進すれば結構伸びていく可能性はありそうです。

岡崎さんが「EVがいいとか、燃料電池がいい、ハイブリッドがいい、と各自が言ってるから議論が噛み合わない。おそらく正解は一つじゃなくて、いろんなものが適材適所で普及していくということでは?」と話をまとめに入りますが、ちょっと待った!とばかりに、猪瀬さんが「それを言っていたらやられちゃうんだって」と割り込みます。どちらが正しいのかの話は置いておき、ファクトをチェックしましょう。

ここまで沈黙を守っていた日経BPの狩集さんから重要なファクターが提示されます。登場したのは図鑑のような分厚い本。「テスラモデル3/モデルS徹底分解」。日経BPがテスラを購入して分解し、どれだけ進化しているのかを調べた超大作です。

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400ページでなんと1冊60万円!! 高っ。値段は超大作級。それもそのはず、テスラ2台を買うだけで1000万円以上かかったそう。

分解したものを元に戻さず、皆さんに見学してもらうようにしたそうですが、太っ腹ですね。狩集さんは「日本の部品メーカーさんとか素材メーカーさんに、今世界の先端企業がどういうことをやっているのかをぜひ知っていただきたい」と話しますが、気になるのは高額本の売れ行き。ここだけの話、狩集さんの人件費分くらいは売れたそうです。