“脱プラスチック”でいま注目‥「段ボール&コメ」が家具や雑貨に大変身!:ガイアの夜明け

公開: 更新: テレ東プラス

10月29日(金)に放送された「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは「"脱プラ"新たな主役たち!」。持ち前の技術とアイデアを生かし、プラスチックに代わる素材・製品作りに奮闘する中小企業やベンチャー企業に密着した。

高強度の段ボールがプラの代わりに

東京・足立区では、コロナ前に比べ、段ボールの回収量が約4倍に増加した。巣ごもり需要により家庭での利用が増えたためで、ゴミの回収作業員は「(最近は)平均的に多い」と話す。回収された段ボールは95%以上が再び段ボールにリサイクルされるが、基本は箱としてしか使われていない。それは水に弱く強度がないため。しかし、そんな常識が大きく変わろうとしている。

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神奈川県相模原市に工場を持ち、紙製品などを製造する「日本化工機材」。その主力商品が、四角い紙素材「角紙管」だ。その強度は車が載ってもつぶれないほど。さらに加工すれば水にも火にも強いという。これまで主に物流の「梱包材」として使われてきた。

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その角紙管に目を付けたのが、伊藤忠グループ「伊藤忠リーテイルリンク」(東京・中央区)の清水浩司さん(49)。これまでの弱点を克服した角紙管をはじめ、強度を増した段ボールなら、プラスチックの代わりとしてさまざまな活用が見込めるはず......。そこで家具や雑貨などを商品開発しようと考えたのだ。

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伊藤忠グループはプラスチックの取扱量において世界有数の企業。清水さんの会社もビニール傘やスーツケースなど、多くのプラスチック製品をコンビニなどの小売りに卸している。清水さんは「エコで非常に軽くて丈夫な段ボールがあると知った。"脱プラ"というキーワードが叫ばれる中で、環境にいい素材を一つでも多く届けていきたいという使命がある」と話す。

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「日本化工機材」の加藤千明さんも「包装材自体のパイも小さくなったので、他のことやらないといけない。初めてのチャレンジなので成功させたい」と前向きだ。加藤さんは早速製品作りに取り掛かる。硬い角紙管をカットし、何本もつなぎ合わせ、強度を増した段ボールの板を乗せる。完成したテーブルは頑丈ながら軽量で、廃棄が楽なのが特徴だ。「プラスチックだとこうはいかない」と加藤さん。

一方、伊藤忠の清水さんは、さらに別の会社を訪れていた。福岡・筑後市にある「九州ダンボール」は、創業100年を超える老舗企業。強く硬い段ボールを作っている。

「九州ダンボール」では、以前から収納棚やリース飾りなど、オリジナルの雑貨や小物を試作。しかし販路もなく、本格的な商品化には至らなかったという。清水さんは「技術と経験があって、手作業の細かい部分が商品に盛り込まれている」と試作品を絶賛。雑貨の開発を依頼した。

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今年3月、清水さんは東京・表参道で段ボール製品を集めた展示会を開き、小売店のバイヤーや商品開発の担当者を招いた。会場には雑貨などの試作品が並び、「イオン」グループの雑貨担当者や衣料ブランド「ジーユー」の店舗担当者も興味を示す。だが、質感やバリエーションの乏しさなど、課題も明らかになった。

今秋、コロナの影響で休止していたプロジェクトが再開。9月中旬には「日本化工機材」で、接着剤やクギを使わず組み立てられるロッキングチェア風のいすが生まれ、10月中旬には「九州ダンボール」で、段ボールのキャットハウスが出来上がる。しかし、清水さんはさらなる改良を依頼。商品としての魅力を増すために、決して妥協はしない。

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10月20日、いよいよ段ボールの新商品を一般の人にアピールする日がやってきた。商業施設「ブランチ横浜南部市場」(神奈川・横浜市)の会場には、個性的な家具や小物を前に人だかりが。果たしてどんなモノが出来上がり、どんな評価を受けるのか。

売り物にならないコメが大変身!

日本人となじみ深い「コメ」を使った脱プラも進む。日本有数の米所、新潟・南魚沼市では、小粒だったり欠けたりしている規格外の「クズ米」が出ることが悩みのタネだった。収量の5%を占めるクズ米は食用に向かず、家畜の餌以外にはほとんど使い道がなかったという。

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しかしある企業が、そのクズ米をプラスチックの代用として生まれ変わらせた。同じ南魚沼市に工場を持つベンチャー「バイオマスレジンHD(ホールディングス)」。この会社が製造する素材「ライスレジン」は、非可食米とプラスチック樹脂を混ぜ合わせたもので、最大70%までコメの含有量を増やすことができる。つまりその分、石油系プラスチックの削減が可能になるのだ。社長の神谷雄仁さん(55)は、コメを使う理由について「日本で一番集めやすく身近にある。プラの置き換えができる可能性の高い材料」と話す。

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神谷さんは16年前に起業。海外で見たトウモロコシのプラスチックをヒントにライスレジンを開発したが注目されず、倉庫にはクズ米と在庫の山が残ったこともあったという。「3年に1回くらいは『もうやめようかな』と思っていた」と苦労を語る。

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しかし、脱プラの流れを受け、今では多くの企業からライスレジンを使った製品の依頼が舞い込んでいる。今年6月、大阪市で開かれた「サステナブル マテリアル展」でも、ライスレジンのブースに人だかりができた。プラスチックの削減は、どの業界にとっても必須のテーマ。ブースに並ぶ箸やスプーンを見た客は、「『プラスチック』と言って渡されたら何も疑わない」と驚く。

すでに商品化された雑貨もあり、全国の郵便局ではライスレジンのレジ袋を採用するなど、世間への浸透も進む。国内外でリゾートホテルなどを運営する「星野リゾート」も注目。来年4月に施行予定の「プラスチック資源循環促進法」により、ホテルで使われる歯ブラシやヘアブラシなどのアメニティーグッズも、削減義務の対象になるためだ。神谷さんの提案を受けた「星野リゾート」の高級温泉旅館「界 霧島」(鹿児島・霧島市)は、まずヘアブラシをライスレジン製にすることを決めた。

ライスレジンを高く評価するのが、「三井物産プラスチック」(東京・大手町)。「バイオマスレジンHD」は、3月に「三井物産プラスチック」と業務提携を結んだ。ライスレジンの販路を広げたい神谷さんと、プラ削減に取り組まなければいけない「三井物産プラスチック」の思惑が一致したのだ。「三井物産プラスチック」が抱える取引先は約4000社。商社とタッグを組んだことで、ライスレジンの可能性が一気に広がる。

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神谷さんは、福島・須賀川市の工場で新たなライスレジンの開発にも乗り出した。これまでプラスチック樹脂だったコメ以外の成分を、微生物が分解可能な"生分解性"の樹脂に変え、より環境を考慮した素材を目指す。コメを使う分、生分解性のプラスチック樹脂だけよりコストが下がり、分解スピードも上がるという。研究所の試験では、実際に微生物によって分解されることも証明された。

あとは実際の現場で試すだけ。神谷さんはシート状に加工した新しいライスレジンを手に、沖縄・宮古島へ向かう。世界をも見据えたその取り組みとは......。

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