砥石を愛するポーランド人男性が念願の採掘に大興奮!和包丁作りと包丁研ぎの技を学び、驚きの進化を遂げていた!:世界!ニッポン行きたい人応援団

公開: 更新: テレ東プラス

200年以上受け継がれる和包丁の伝統製法と、包丁研ぎの技に感動

続いて向かったのは、大阪にある「堺刃物ミュージアム」。「包丁だらけです!」と嬉しそうに見て回ります。600年の伝統を持つ堺の打刃物は、プロ用料理包丁の全国シェア90%といわれ、世界からも圧倒的な支持を得ています。そこには、鍛冶職人と研ぎ職人による“究極の切れ味”を生む伝統の技があるのです。

実はジェゴシュさん、研ぎの技術を高め、知識を深めるために、自宅で包丁作りもしています。そこで、ぜひ伝統的な和包丁作りを学びたいと、200年以上続く鍛冶工房「榎並刃物製作所」を訪れました。五代目・榎並正さんは、火造りという昔ながらの方法で1本1本手作り。東京の老舗など、全国の名店で愛用されています。「切れ味」を生む硬さと、しなやかな「粘り」を合わせ持つ和包丁がどのように作られているのか、見せていただくことに。

軟らかい鉄と硬い鋼、性質の違う素材を合わせて作るのが、伝統的な和包丁の大きな特徴。まずは軟鉄の地金を1000度に熱した炉の中に入れます。次に、熱した地金の上に接合材をつけた鋼をのせ、炉の中の温度を1100度まで上げます。「一番大切なことは何ですか?」と聞くと、「温度です。温度を間違うと絶対だめなんで」と榎並さん。温度は材料の色を見て判断しているそう。1100度の色になったら炉から出して叩き、地金と鋼を接着。さらにベルトハンマーという機械で叩きます。熱しては叩き、鍛えることで、鉄が強くなっていくのです。

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ジェゴシュさんも挑戦させていただきますが……振動が強すぎて狙った場所に機械を当てることができず、形が曲がってしまいました。榎並さんは何本作ってもまったく同じ形。何本でも同じ形、同じクオリティに仕上げるのがプロの仕事なのです。

表面を削る工程にも挑戦し、こちらは「上手!」と褒めていただきました。表面がきれいになったら包丁の形にカットし、ここからは包丁に命を吹き込む最も大切な工程「焼き入れ」に入ります。均一に熱が伝わるよう、包丁に薄く泥を塗り……炉の中へ入れて、色を正しく見極めるために部屋を暗くします。温度が800度前後になったら、水に浸けて一気に冷却。炉に戻して「焼き戻し」の工程に移ります。

榎並さんによると、焼き入れで水に浸けた段階では、鋼は硬いだけ。焼き戻しをすることによって鋼の柔軟性を出し、刃が欠けるのを防いでいるそう。ちなみに、焼き入れの際に火が回りすぎるとかえって切れ味が悪くなることから、腕が落ちることを「焼きが回る」というようになったのだとか。

鍛冶職人の仕事はここまで。とここで、榎並さんが、珍しい包丁を見せてくださいました。軟鉄と鋼を何層にも重ね、独特の模様を出す高度な技法で作られています。榎並さん、なんとこの包丁をプレゼント! ジェゴシュさんは、驚き恐縮しながらも貴重な包丁をいただきました。

続いて向かったのは、榎並さんに紹介していただいた、約120年続く研ぎ職人の三代目、職人歴50年以上の田原俊一さん。切れ味、耐久性、美しさを生む確かな技術に依頼が殺到。フランスの名門料理学校「ル・コルドン・ブルー」でも研ぎを指導する、堺を代表する職人です。

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田原さんが作業をしている「田原製作所」で、榎並さんの工房で作った包丁を研ぐことに。まずは回転砥石で、手の感触だけを頼りに刃先を削り、鋼を研ぎ出していきます。求められるのは、切れ味が最も出る角度。特別に体験させていただきますが、同じ角度で当てられず、平らでなければならない面が段になってしまいました。「手の角度を決められるようになるまで、だいぶ修業しないとだめなんです」と田原さん。段になった部分を手直しした田原さんは、曲がった包丁を歪み取り棒でまっすぐにする方法も教えてくださいました。「初めて見ましたが、この道具は便利ですね!」と歪み取り棒を絶賛!

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続いて、歪みを直した包丁を「バフ」と呼ばれる繊維で磨きあげます。美しく仕上げるために、金剛砂という研磨剤をつけ、杉の木でできた木砥(きど)で研ぐと、鋼の部分にツヤが! さらに、堺で代々受け継がれてきた伝統の「霞仕上げ」を施します。地金と鋼の境目を、天然砥石の粉を溶いたものでこすると、霞のように美しいぼかしが入るのです。
最後は、砥石で仕上げ。ジェゴシュさんの研ぎ方を見て「砥石をあてるのが上手い。僕が教えるほどでもないですよ」と田原さん。こうして、堺伝統の技が詰まった包丁が完成しました。

その後、田原さんの自宅に招かれ、夕食をごちそうになったジェゴシュさん。自作した包丁を田原さんに見ていただくと、「ここまでできたらすごいですよ」とお褒めの言葉をいただきました。お世話になった感謝を込めてポーランドのチョコレートを渡すと、スイーツが大好きという田原さんは大喜び。包丁の歪みを取る歪み取り棒と、霞仕上げ用の砥石をプレゼントしてくださいました。田原さんと再会を約束し、固い握手を交わします。

あれから3年。ジェゴシュさんからのビデオレターを、土橋さん、田原さんのもとに届けます。

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帰国後、ジェゴシュさんには、ノミやカンナ、盆栽ハサミなど包丁以外の刃物研ぎの依頼が舞い込んでいました。包丁以外でも、仕上げに使うのは土橋さんにいただいた白巣板です。「結構使ってもらってるんちゃう? 厚みが減ってる気がする」と嬉しそうな土橋さん。包丁を研いでいるところを見た田原さんは、「本当に上手くなってます。すごい!」と感心します。

砥石の表面は一切の曇りがなく、包丁や指が映り込むほど。撮影していたイギリス人カメラマンの「鏡のように美しい」という言葉に、「本当に嬉しいですね」と土橋さん。研ぐこと1時間、納得の仕上がりに。「包丁を研ぐ時はいつも、田原さんの工房を思い出して一緒に研いでいる気持ちになります」。

ニッポン滞在中に撮影した写真も見せてくれました。その数は、2週間で5000枚! ニッポンの職人技を少しでも記録したいと、シャッターを押し続けたそう。納得できる品質の砥石を探して採掘している土橋さんや、作業をしている田原さん……その姿から伝統を守る職人の魂を感じていました。

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たくさんの写真の中でも一番のお気に入りは……天然砥石に囲まれて大の字になった一枚! 土橋さんのお宅で貴重な天然砥石を見せていただいた時に撮影した写真です。「パラダイスにいる気分でした!」。

帰国後の2019年、母国・ポーランドで初となる包丁研ぎの講習会を開催。ジェゴシュさんが講師を務め、和包丁が好きな一般の方やプロの料理人、寿司職人など20人が参加したそう。1泊2日の合宿スタイルで、実技だけでなく講義も行い、朝10時から食事休憩以外10時間みっちりと刃物研ぎを伝えたといいます。

講習会で歪み取り棒を紹介すると、こんなに簡単に歪みが直せる道具は初めて見たと、驚かれたそう。田原さんも「それだけ喜んでいただければ、ほんまに嬉しいですね」と笑顔に。今回の講師代は無料。「ニッポンで学んだ知識も無料でしたから」という言葉に、土橋さんご夫婦は感心しきりでした。

この日、ジェゴシュさんが訪ねたのは友人のスコットさん。実はスコットさん、職人歴10年のプロの包丁研ぎ師で、工房には人造砥石や天然砥石など約30種類が並びます。中でもお気に入りは、なんと土橋さんの白巣板! これには土橋さんも驚いた様子。もともとアメリカ人男性が持っていたもので、長い間白巣板を探していたスコットさんは、愛用していた包丁と交換してもらったそう。

土橋さんの砥石を愛用する2人はすっかり意気投合! 「この砥石をもらったなんて信じられない! 僕なら気絶しちゃうよ」とスコットさん。ジェゴシュさんは、包丁研ぎを仕事にするスコットさんに、自作した歪み取り棒をプレゼントします。「(歪み取り棒が)広がってんやと思ったらすごいと思いますね」と田原さん。

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現在ジェゴシュさんは、ドアを製造する工房で職人として働いています。ニッポンの大工道具で行燈も自作。組子をネットで勉強しながら、3ヵ月かけて作ったそう。興味は包丁だけでなく大工道具へも広がり、ニッポンの職人技への憧れは強くなるばかり。「僕には学びたいことが山ほどあります。だからニッポンに戻って、最高の職人技をもっと学びたいです」。

帰国してからも頑張っている姿に感激した田原さんは、「研ぎ方教室を一緒にやりたいと思っていますので、その時はいつでも協力させてもらいます」と呼び掛けました。
土橋さんも、ジェゴシュさんの砥石への愛を感じ、「本当に、今お会いしたい。行きたいくらいですね、ロンドンに」。そこで、遠く離れた絆を、中継でもう一度結んじゃいました!

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土橋さんとジェゴシュさんを中継でつなぎます。顔を合わせるのは3年ぶり! 「今はカンナとかノミを研がれているんですね」と土橋さん。ジェゴシュさんは、カンナを研ぐのは難しいと話しますが、カンナの刃を見せると、土橋さんに「きれいに研げているじゃないですか」と褒めていただきました。「もっともっと練習が必要です。いつの日か、きれいに研げたものを見せに行きますね!」とジェゴシュさん。

土橋さんの後継者の話に。ジェゴシュさんは後を継ぐ人がいるのか心配していましたが、土橋さんの息子さんが継ぐことになったそうで、これには一安心。まだまだ話は尽きませんが、続きは再会した時に。最後はお互い笑顔で「ありがとうございました!」と手を振りました。

ジェゴシュさんをニッポンにご招待したら、研ぎ職人さんたちと熱い絆を結び、ヨーロッパでたくさんの人に、研ぎの文化を広めていました!

10月25日(月)夜8時放送! 月曜プレミア8「世界!ニッポン行きたい人応援団」は、【ニッポンにご招待したら人生変わっちゃった!感謝のビデオレターが届いちゃいました!】をお届け!

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「“しょうゆと木桶”作りを学びたい!」
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「憧れの存在」と話す創業150年、瀬戸内海に浮かぶ小豆島の「ヤマロク醤油」で全国の生産量の1%と希少な“再仕込み醤油”の作り方から伝統を受け継ぎ、“木と竹”だけで100年以上使えるという高さ2m、重さ500kgの“巨大木桶”作りを学び…感涙!

どうぞお楽しみに!

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