23年ぶりの勝負に挑んだ都立新宿高校野球部。悩める主将、マネージャーを救った熱血教師の言葉と伝統校の理念とは?

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歴史や校風、卒業生のネットワークまで、名門校の知られざる姿を通してその秘密に迫る「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回の主人公は、創立100年を迎えた「東京都立新宿高等学校(以下、新宿高校)」で野球部員を率いる熱血教師とキャプテン、そして女子マネージャー。野球に青春を燃やす部員たちの葛藤と、監督との絆に密着した。

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高層ビルに囲まれた大都会に建つ新宿高校。今年で創立100年を迎える、歴史と伝統ある進学校だ。学校案内のリーフレットには、「チーム新宿 進路は補欠なき団体戦!」という文字が。現役で第一志望に合格させるための大きな柱の1つが「真の文武両道」で、進学校でありながら生徒の90%以上が部活動に参加。部活動を通して自主性と自律を育み、集中と切り替えによって文武両道を実現。それが、第1志望の大学合格につながるという。

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創立以来、掲げる理念がある。それは、在校生・教職員・保護者・卒業生が家族のように一体となる「大家族主義」。その象徴ともいえる学校行事「大遠泳」は、大正11年の開校(開校時は「東京府立第六中学校」)以来、代々受け継がれてきた。新宿高校を卒業した先輩たちが脇を固め、地元の漁船やライフセイバーとともに、およそ1.5km先のゴールを目指す。泳げない生徒も練習を積んで参加し、みんなで力を合わせてゴールを目指す姿はまさに「大家族主義」だ。

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30を超える部活動がある中で、今、文武両道の成果を試されているのが「硬式野球部」。1年生と2年生合わせて12人の選手と、2人の女子マネージャーが活動している。総勢14人のチームを率いる監督の田久保裕之先生は新宿高校野球部OBで、「大家族主義」の遺伝子を受け継いでいる。

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今年、「秋季東京都高等学校野球大会」本大会へ駒を進めた新宿高校。これは田久保先生が部員だったとき以来、23年ぶりの快挙だ。対戦相手は強豪の早稲田実業(早稲田実業高校高等部)に決まり、練習にも力が入る。

朝は授業に間に合うギリギリまで練習をし、教室までダッシュ。これも練習の一環だという。「『24時間練習しろ』と言っています。1日が24時間なのはみんな平等なので、『寝ているときも野球の夢を見て練習しろ』と。移動も授業も練習です」と田久保先生。文武両道を目指す新宿高校の野球部らしい教えだ。

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現在キャプテンを務めているのは、2年生の一村幸さん。2カ月前に新キャプテンになったが、実は1年生のときに2カ月間休部していた。夏休みに熱中症で倒れた一村さんは、厳しい練習に復帰したときに、1年生でまだ慣れていなかったこともあり「急につまらないな、辞めてしまいたいな」という気持ちになったそうだ。田久保先生に辞めることを伝えると、「最後はお前に任せるけど、野球部にいたほうが絶対に良い経験ができる。一村には乗り越えてほしい壁だから、なんとか戻ってきてほしい」と言われ、野球部に戻ることを決意。

この父と子のような関係こそが「大家族主義」。田久保先生は「家族にもいろいろな役割があるけれど、私は"厳しい親父"という役割。部員には弟や自分の子どものように接している」と語り、「彼の力が必要だったというのも、もちろんあります。それ以上に、ここで踏ん張ってくれれば、彼の人生にとって絶対にプラスになるという確信があった」と当時を振り返る。

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マネージャーの澤野井陽菜さん(高校2年生)は、コロナ禍で人知れず悩みを抱えていた。授業がオンラインになり、部活動もなかった期間に、マネージャーとしての存在意義を見失いかけたという。しかし、田久保先生の「マネージャーは、いなくても成り立つからこそ、自分で存在意義を出していこう」という言葉に突き動かされた。

「ピッチャーやキャッチャーと同じく、マネージャーも野球のポジションのひとつ。『マネージャーはどうやって勝利に貢献する?』というシンプルな考え方で良くて、"支える"とか"手伝う"という感覚だと戦力にはなれない。『勝つために自分は存在している』『勝つためにはマネージャーの力が必要だ』ということを確認し合いました。今では彼女はチームになくてはならない存在だし、勝つための大事なひとりです」と田久保先生。

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そして迎えた大会当日。これまでとことん悩み、全員で壁を乗り越えてきた部員たちに、田久保先生は「あの早稲田実業とも互角、勝てるかもしれない」と信じていた。しかし、結果は「0対10」で5回コールド負け。大敗を喫したが、それでも田久保先生は清々しい気持ちだったという。「立派でしたね。結果としては完敗だったけど、このチームがスタートしてから2カ月半でよく努力した。まず、あの舞台に立てたということが本当にすごいし、敬意を表したい。"甲子園"の尻尾ぐらいは見えるところまで行ったかな。今度は背中が見えるところまで行ってくれると期待している」と熱く語った。

チームの一員として共に闘った澤野井さんは、悔しさを噛みしめつつも「この期間で絆が深まった。新宿高校にしかできない野球をこれからも作っていきたい」と、最後は笑顔で語った。

番組では他にも、部室の壁に書き残した先輩の言葉、試合前日の様子などを紹介する。

10月25日(月)夜10時放送! 「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「福岡・久留米大附設...一体なぜ?往復5時間かけて通う高1女子」と題して送る。

今回の主人公は、九州の名門、久留米大学附設中学校・高等学校に通う高校1年生、宮之原清華さん。中1の時から、往復5時間かけ、鹿児島の実家から通学している。理由は「東大に行きたいから」。九州には女子校の進学校が少ないため、自らの意思で男女共学の久留米大学附設を選んだのだった。実は番組では昨年、中学3年生だった宮之原さんを取材していた。あれから1年、どんな高校生活を送っているのか...? その後を追いかけた。

どうぞお楽しみに!