「SDGs選手権」優勝校の武田高校、「ジェンダーレス制服」を考案した明星高校...。全国に広がるSDGsの教育現場に潜入!

公開: 更新: テレ東プラス

歴史や校風、卒業生のネットワークまで、名門校の知られざる姿を通してその秘密に迫る「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東 毎週月曜夜10時)。MCに登坂淳一角谷暁子(テレビ東京アナウンサー)、解説におおたとしまさを迎え、「名門とはいったい何か?」常識を打ち破る教育現場に密着する。

今回のテーマは、「SDGs」。「SDGs」とは、「Sustinable」「Development」「Goals」の頭文字を取った略語で、「持続可能な開発目標」のこと。2015年の国連サミットで採択されたもので、環境問題や貧困・差別・紛争・人権など、全世界が経済成長を果たしてきた中での歪みを改善するための17のゴールと具体的な行動を、加盟国193ヶ国が全会一致で可決。2030年までをひとつの期限と定め、持続可能な取り組みを行う。現在、全国の高校にも導入され、地球を救うためのさまざまな取り組みが行われている。

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東京にある「中央大学付属中学校・高等学校」では、高校2年生を対象にSDGsの理解を深めるプロジェクトコースを設置。オーストラリアの大学へのオンライン発表会を開催し、現地での研究発表も目指している。

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また、「東京都立武蔵高等学校」では、2016年からSDGsの取り組みをスタート。東京オリンピックの表彰台を使用済みプラスチックで作ろうという「みんなの表彰台プロジェクト」にも参加し、校内に回収ボックスを設置するなど、さまざまな活動を行なっている。

さらに神奈川県にある「法政大学国際高等学校」では、学食の廃油を精製して石鹸を作り、文化祭で来場者に配布するプロジェクトを実施。環境保全活動を通じてSDGsを積極的に学んでいる。

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今回、番組では「第1回全国高校生SDGs選手権」で総合優勝に輝いた広島県にある「私立 武田中学校・高等学校(以下、武田高校)」を取材。さらにSDGsへのコミットを宣言した「私立 明星中学校・高等学校(以下、明星高校)」(東京都)の取り組みを紹介する。

「平和への祈り」をSDGsに込めた武田高校

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広島市から車でおよそ1時間、武田高校は東広島市の山あいにある。昭和42年(1967年)に創立した男女共学の中高一貫校で、生徒数は中高合わせて633人。国公立大や難関私大、西日本の大学へ進学する生徒が多いのも特徴だ。

創立者の武田武彦氏が唱えた建学の精神は「世界的視野に立つ国際人の育成」。平和の実現には、グローバルな視野を持つ国際人や"世界市民"の育成が不可欠で、校舎の入口に掲げられた「世界市民を目指して」というキャッチコピーは、広島から世界へ羽ばたく子どもたちへのメッセージでもある。

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創立50周年を期にSDGsに取り組むことを宣言した武田高校。進学校の看板を掲げつつ、SDGsの教育にも時間を設けることに大きく舵を切った。校長の竹村豊子先生は「SDGsが提示している問題に関係せず暮らしていくのは、ほぼ無理ではないかと。世界市民を目指す本校の建学の精神に立ち返る。世界のさまざまな問題を自分のこととして捉え、行動する。そういった生徒を育成する学校でありたいということでSDGs宣言を行なった」と語る。

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高校2年の髙田優希さんは、SDGsを通して自分が変わったという。「先生たちから言われたことだけをやるのではなく、自ら企画して実行していく。普段の生活でも課題を見つけて、解決のために何ができるか考える力が身についた」と語る。もともと環境問題に関心が高く、武田高校でSDGsに出会った髙田さん。「もっと深く知りたい」と、昨年できたばかりの「SDGs研究会」に飛び込み、部長を務めている。

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全国でも珍しい「SDGs研究会」では、SDGsに関する研究や取り組みを実践。部員は中高あわせて21人。動画制作もお手のもので、部の活動をYouTubeで配信することも。学校で使われるプリント類を捨てずに再利用する「エコノート」作りも大事な活動。「紙貯金プロジェクト」と名付けられたこの取り組みは、回収ボックスに集まったプリント類を白紙の面が表になるようにていねいに綴じて、エコノートとして再生している。

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他にも、楽しみながらSDGsがわかる、子ども向けの「SDGsカルタ」を作成したり、途上国の生産品を適正価格で買い、生産者や労働者の生活改善を図る運動「フェアトレード」のチョコレートやシャツを校内で販売する活動も。さらに、NPO主催の「おにぎりアクション」にも参加。おにぎり動画をアップすることで協賛企業から途上国の学校に給食費が寄付されるプロジェクトで、地元・広島のお米でおにぎりを作ったりと、活動は多岐にわたっている。

この日、部長の髙田さんを中心に話し合われていたのは「全国高校生SDGs選手権」で採用されたアイデアの進捗状況。武田高校がプレゼンした企業は、広島県をホームとするプロバスケットボールチーム「広島ドラゴンフライズ」だ。2013年の結成以来、スポーツを通じた社会貢献活動を続けている。

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武田高校に与えられたテーマは「平和を身近に」だが、提案する企画を決める段階から手こずったという。自分たちが思う平和を話し合った結果、一人ひとりが違う意見を持っていた。そこで「平和は1つの定義では言い表せない」と考え、「あなたにとっての平和は何ですか」というアンケートを全校生徒にとった。そんな試行錯誤の末に辿りついた企画は、「あなたのピースで 世界がピースに」。

それぞれ異なる平和の定義をパズルの一片のピースと考え、そのピースをスポーツの力で重ね、平和のパズルを完成させる。助け合いの連鎖を表現する動画制作や、つながりを示すバッジを制作、スポーツならではのピース体操などに加え、平和の取り組みとして評価されたのが「折り鶴」だった。

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折り鶴は被爆地・広島の平和の象徴で、どこよりも重い意味を持つ。平和記念公園で千羽鶴に囲まれた「原爆の子の像」のモデルは、2歳で被爆し12歳で白血病で亡くなった佐々木禎子さん。佐々木さんは闘病中、病気が治るよう願いを込めて折り鶴を折り続けた。

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株式会社広島ドラゴンフライズは、これまでもフェアプレイをした選手を折り鶴で称える「おりづる賞」の表彰を行うなど、平和への願いを選手たちと共有してきた。そこで髙田さんたちは、「それを選手間だけで終わらせず、もっと広めたい」と、その制度をさらに発展させ、全国の試合会場に折り鶴を折ってもらうブースの設置を提案した。折り鶴には平和へのメッセージを書いてもらい、自分が思う平和を見つめ直す。

さらに、SNSで行う「#おりづるリレー」を提案。折り鶴の羽の部分に平和への思いや願いを書き、写真に撮ってSNSに投稿する。他の人が考える平和を知ることができ、平和に対する視野が広がる。――SNSがつなぐ折り鶴の連鎖は持続可能な取り組みとして高く評価され、広島ドラゴンフライズでの採用が決定。実際に動き始めることになった。

代表取締役社長の浦伸嘉さんは「広島らしさを発揮していくのが、我々の使命であると考えている。振り返ってみると、子どもの頃は自分のこと以外あまり考えていなかった。今回、高校生の時点で、世の中がより良くなるために考え始めている子どもたちがいることを知り、僕らの心配なんかいらないなと思った。必ず明るい未来が待っているという嬉しさがありました」と笑顔で語った。

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創部わずか1年で快挙を成し遂げた「SDGs研究会」には、立ち上げたキーマンがいた。「SDGs研究会」の顧問で、英語教師の新本研吾先生だ。自身も武田高校のOBで、生徒たちにとって親しみやすい兄貴的存在。「生徒たちは世界に目を向けて、いろいろなことに興味を持ってくれる。話しがいがあるし、いろんなことを紹介するのを毎回楽しみにしている」と語る。

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関西の大学を卒業後、教師として母校に赴任した新本先生。平和や国際関係学を学びたいといったん休職し、26歳で広島大学大学院へ進学した。紛争学などの研究に没頭し、発展途上国を巡ることで、それまで書物でしか知り得なかった世界の現実を目の当たりに。学校で教えていたことと実際に起きていることは重ならない部分もたくさんあると感じた。学校という小さな社会の中で完結するのではなく、「学んだことが世界と繋がっていくのが教育の理想」。大学院卒業後に帰国し、そこで出会ったのがSDGsだった。武田高校に復職し、さっそく校長先生に「SDGs研究会」の創部を提案した。

「SDGs研究会」のもう一人の顧問である水野雄大先生は、新本先生の教え子だという。新本先生の背中を追うように教師の道に進み、今では恩師とタッグを組んでSDGsの普及に取り組んでいる。「SDGsの17個のゴールのために何かできると、自分ごとのように語り始める姿が頼もしい。知ることで行動が変容していくのを体験できる場にいるので、教員という仕事は面白い」と新本先生。世代を超えて受け継がれる「教えの連鎖」こそが、持続可能な社会を作る原動力になるかもしれない。

明星高校では生徒が"ジェンダーレス制服"を考案

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高校生にとってSDGsは英語やIT教育同様、必須の科目となりつつある。東京都・府中市にある明星高校では、SDGsが解消を目指す"ジェンダー問題"を制服から見直そうとしていた。

角谷アナが訪問したのは、SDGsに取り組んでいる高校2年生。それぞれ課題を設け、実際の行動につなげている。この日行われていたのは、学年全体で古着を回収し、企業とコラボして作ったエコバッグの出来栄え確認。予算の見積もりも生徒自身が考えてプレゼン。この取り組みを通して、経済の仕組みも身につく。

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また、SNSのフォロワーが1.3万人を超える大手企業とコラボした「My mizuプロジェクト」も進めている。プラスチックを削減するための企画で、校内で目的の意義をプレゼンし、賛同の輪を広げて協力金を募った。その結果、クラス全員にマイボトルを配り、富士山の高さを超える4,285本ものペットボトルを削減することに成功。

一連のプロジェクトを推し進めたのは、校長の福本眞也先生だ。熊本高校の教員から大手の教育出版社に転職するなど、企業マインドも持つ教育者だ。「中高の6年間で学んだことで、自分の未来をデザインできる。いろんなものを人と一緒に作っていける、そういう人間を育てたい。日本人の良さを一番出せるのは、SDGsじゃないかと考えている」という。

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SDGsが掲げるジェンダー問題にも積極的に取り組み、男女関係なく自由に選べるジェンダーレスな制服を模索してきた明星高校。その試作品がついに完成し、お披露目の日を迎えた。さっそく角谷アナが試着させてもらうことに。角谷アナの試着の様子はぜひ番組で確認を!

他にも、武田高校の校内探訪、授業の様子や名物教師、SDGsに取り組む高校生たちの斬新な発想の数々を紹介する。

10月4日(月)夜10時放送! 「THE名門校!日本全国すごい学校名鑑」(BSテレ東)は、「名門校出身の私が人気塾講師になったワケ」と題して送る。

今回の主人公は、少数精鋭の進学塾の人気講師の山 信之亮さん、34歳。山さんは灘校から東大に進学したエリートだ。外交官を目指していたが、ワケあって熟講師に。やがて人気講師に上り詰めたが、コロナ禍で授業の在り方をめぐる課題に直面していた。果たして、令和の子供たちとどう向き合えばいいのか苦闘する姿に密着した。

どうぞお楽しみに!