日本のベンチャー・ペイディをペイパルが3000億円で買収 なぜ「後払い決済」は注目される?<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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ペイパルが3000億円で買収した後払い決済サービス「ペイディ」

毎年成長を続け、2024年には約1.8兆円を超える市場規模になると予測される「後払い決済」。利用者がネット通販で購入すると、その代金を利用者に代わって業者に支払い、利用者には後で請求する仕組みです。

この後払い決済サービスを展開する日本のベンチャー「ペイディ」を9月7日、アメリカの決済サービス大手「ペイパル」が3000億円で買収すると発表しました。後払い決済はなぜ今、注目されているのでしょうか?

ペイディはクレジットカードがなくても、後払いで決済ができるサービスです。導入するネット通販で商品を購入する際にメールアドレス、携帯番号を入力。その後送られてくる認証コードを入れれば、決済完了です。利用者がネット店舗などで商品を購入すると、ペイディが代金を立て替えて店舗に支払います。利用者には翌月に請求が来て、コンビニ払いや口座引き落としで支払う仕組みです。

後払い決済サービスは、クレジットカードを持たない若者のほか、クレジットカードを持っているが利用限度額いっぱいまでついつい使いすぎてしまう人や、カード番号を入力するのが面倒だという人の利用も多いといいます。

この若者を中心に利用者を伸ばすペイディとはどんな会社なのでしょうか?

温室をイメージした会議スペースなど個性的なオフィスを案内してくれたのはペイディのマーケティング本部長シルビア コバリ・クレチマーリさん。ハンガリー出身です。ペイディは会長をはじめ、経営陣の多くが外国人です。150人の社員も30ヶ国以上から集まっていて、その多様性がサービスの開発にも繋がっているといいます。

「自分の常識が隣の同僚の常識と全く違うということもしばしばあります。自分の常識を常に疑って、新しいものに挑戦するという気持ちを非常に大事としています。そこから新しいアイディア、イノベーションが生まれてきます」(シルビア コバリ・クレチマーリさん)

ペイディは2008年に設立され、2014年に後払い決済のサービスを始めました。分割手数料無料で3回に分けて支払えるなど、利用者向けのサービスを充実。口座数は現在600万を超えています。また、独自開発のAIを活用することで素早く審査できるとともに、利用者から代金が未回収となるリスクは1%程度だといいます。 

ネット通販もペイディに注目

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クレジットカードがなくても、後払いで決済ができる「ペイディ」

その実績と将来性を見込んだアメリカのデジタル決済大手のペイパルが7日、3000億円で買収すると発表、合意しました。買収後もペイディは日本市場で成長を目指しますが、専門家によれば課題もあります。

日本総研金融リサーチセンターの谷口栄治主任研究員は「ユーザーや小売店にとって便利で、使い勝手がいい、商売に役立つときちんと訴求できるかがこれから普及していくかのカギを握る」と話します。

ネット通販の運営会社もペイディの後払い決済に注目しています。会員登録者数が1900万人を超える「Qoo10」では、昨年9月にペイディを導入。この1年でペイディで支払われた額は倍になったといいます。「Qoo10」を運営するイーベイ・ジャパンの神谷香菜子さんはその人気の理由を「若い女性の方ではコンビニ払いも大変人気の決済方法となっていますが、ペイディの場合は、月に何度購入されても、小さな単価でも支払いは月1回ですので、簡単に商品を購入できるというところがメリット。一定の割合で、ペイディのユーザーの数の増加が見られます」と話します。

一方、自社ブランドの化粧品や衣料品をネット販売している「パペルック」では昨年末のペイディ導入以降、会社の売り上げは1.3倍に増え、その4割が後払いでの売り上げだといいます。

「弊社は若いお客様が多いので、クレジットカードを持っていないケースもあります。どれだけ商品が良くても、カートに入れた後に決済するのが面倒だと、"カゴ落ち"してしまいますので、なるべく防ぐためにペイディを利用しています」(パペルックの小澤一郎CEO)

商品を選んだ後の手順が多いことで、決済までに至らない"カゴ落ち"と呼ばれる事態も、メールアドレスと電話番号のみの入力で済むペイディなら回避に繋がりやすいそうです。

「クレジットカードを持っていない方でも購入できるというのは、今後のECサイトやブランドの戦略の大きな一つになると思います」(小澤一郎CEO)

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