冷凍食品に新規参入のナゼ 新”ギョーカイ”勢力図<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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コロナの影響もあり冷凍食品業界で変化が起きている。

冷凍食品の国内の出荷額は昨年初めて家庭用が業務用を上回りました。需要の高まりを背景に、今、家庭用冷凍食品市場には新規参入が相次ぎ、新たなヒット商品も生まれています。冷凍食品業界で起きている変化の"ナゼ"を追いました。

全国におよそ280店舗を展開するスーパーの「ライフ」。その店内で今、激変しているのが冷凍食品売り場です。ライフ神田和泉町店では7月の改装で冷凍食品売り場を拡充。商品の種類を150から370と倍以上に増やしました。ライフの首都圏の店舗ではコロナ前に比べ、冷凍食品の売り上げが3割増。ただ、売れ筋はがらりと変わりました。

ライフを運営するライフコーポレーションの担当者は「緊急事態宣言で学校が休みになるなどの背景から、弁当商材の販売数は落ちています。その代わりに昼食、夕食、おかず需要が伸びています」と話します。

40年近く冷凍食品業界を取材し続けてきたジャーナリストの山本純子さんは、巣ごもり需要が高まる中、より本格志向の冷凍食品が増えていると言います。

「例えば今年の春に発売されたニチレイフーズの『てり焼きチキンステーキ』。きちんと下味をつけてオーブンでじっくり焼いたチキンステーキが、電子レンジで数分で出来上がります。手間暇をかけたものが、電子レンジの解凍でよみがえるという商品が増えています」

メーカーの商品開発が加速する冷凍食品業界。さらに山本さんは注目の動きとして「異業種からの参入や外食産業の外商部隊として冷凍食品を作るなどの動きが増えてきました」と新規参入を挙げ、そうしたところからヒット商品が続々登場すれば、業界の勢力図が変わるかもしれないと言います。

異業種からも続々参入

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無印良品も冷凍食品の販売に力を入れている。

外食産業では、ファミレス大手のロイヤルホールディングスやサイゼリヤが独自の冷凍食品の販売を始めています。3年前に冷凍食品業界に参入した無印良品もコロナ禍でさらに力を入れています。商品は五目いなりや厚切り食パンのフレンチトーストなど多種多様。無印良品の冷凍食品は2018年50種類でしたが、現在では約90種類になりました。中でも無印良品が力を入れているのは、カット済み食材や調味料がセットになったミールキットです。

なぜレンジで温めるだけの手軽な商品がある中、フライパンで炒めるひと手間を加えた商品に力を入れるのか。無印良品の担当者はその理由について「(レンジで)チンしておいしく食べられるのは重要なことですが、それが続くと罪悪感が作る人としてはある。それを払拭したくて、フライパンで炒めるだけでも手を動かせるようにしています」と話します。

無印良品の冷凍食品の販売は、国内453店のうち約90店。今後販売店数を増やし、市場でのシェア拡大を狙います。

「いま無印良品では食というカテゴリーを強化しています。その中で一番象徴的なのが冷凍食品。冷凍食品といえば、無印良品がいいよねと言ってもらえるようになりたい」(無印良品の担当者)

さらに、冷凍食品への新規参入はベンチャー企業からも。6月から冷凍食品を販売しているのは、食品ベンチャー「グリノ」。細井優社長は「昨年まで法人向けにサラダの定期配送をしていましたが、コロナの影響でリモートワークが推進されマーケットの見直しが必要になりました」と冷凍食品への参入理由を語ります。

「グリノ」では大手との差別化を図るため、動物の肉や卵などを使わない冷凍食品にこだわっています。取材した日に行っていたのは新メニューとなるバターチキンカレーの試食。バターの代わりに植物性の油を使用し、チキンの代わりを務めるのは大豆ミートです。拡大する冷凍食品業界、工夫次第ではベンチャーにも勝機があるといいます。

「私たちはB to Cというスタイルで客との距離が近い。小回りの利く状況で客からの意見をできるだけ早いタイミングで商品改善や新商品開発につなげていく。こうしたことで大手とのすみ分けができると思います」(細井優社長)

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