「昭和レトロ」がデジタル世代の若者に人気のワケ<WBS>

公開: 更新: テレ東プラス

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大ヒットとなっているアデリアレトロシリーズ

今、昭和レトロが若者から人気を集め、消費の新たなトレンドになりつつあります。一体なぜなのか、直撃リサーチしました。

昭和61年に誕生した東京・杉並区にある「喫茶gion」ステンドグラスを使ったランプなど、マスターの集めた調度品がところせましと並びます。店内で目立つのは、20代の若い女性の姿。スマホで撮影していたのはクリームソーダです。

こちらの店では2年ほど前から、クリームソーダを求める若い女性客が急増。コロナの影響で、現在は客足が鈍るものの、2019年にはオープン以来最高の売り上げを記録しました。マスターの関口宗良さんは「20代〜30代前半の女性で満席になるのは、初めての経験です。以前は1〜2人が多かったのですが、若い女性と2〜4人で来てくれる。売り上げ的にもありがたいです」と話します。実は今、こうした純喫茶やクリームソーダなど、昭和レトロが若い世代で流行しているのです。客からは「懐かしく、かわいい」という声が上がります。

こうした若者の消費を取り込んだ会社が、創業200年を超える愛知・岩倉市の石塚硝子です。2018年に販売を始めたアデリアレトロシリーズは、実際に昭和40年代から50年代に製造販売していた商品の復刻版で、一般の商品では数万個で大ヒットという業界の中、シリーズ全体で発売から52万個を販売したといいます。

なぜ昭和のデザインを復刻したのでしょうか。企画したのは20代の女性社員。廃番になった自社製品がインスタグラムで話題になっていることに気づき、提案したといいます。

「われわれX世代(40〜50代)と違った捉え方で、若い女性社員の目に映って『すごく新鮮だから、いま受けるのではないか』となりました」(石塚硝子の川島健太郎さん)

しかし、復刻しようにも社内に当社の製品はほとんどなく、デザインのデータもありませんでした。そこで、アンティークショップから買い戻したほか、カタログなどからデザインを再現。果物や花など、昔懐かしい柄のプリントグラスが復活しました。インスタグラムでも「歴代の柄を全て見てみたい」「レトロかわいい」など好評です。

アデリアレトロシリーズの客層の8割が20〜40代の女性。昭和を知らない若者の目には、新鮮で新しいものに映っているようです。

「言葉で表現するとAE消費、アナログエモーショナルな消費です。アナログ感のあるものになんとなく心を揺さぶられる」(石塚硝子の川島さん)

物だけでなく、昭和の時間で勝負に出たテーマパークがあります。今年5月に大規模リニューアルした西武園ゆうえんちです。特徴的なのが、予告なしに突如始まるショーやパフォーマンス。入場客を巻き込む参加型です。街並みを眺めて楽しむだけでなく、昭和の世界観に入り込む仕掛け作りにこだわりました。なぜ参加型なのでしょうか。

西武園ゆうえんちの藤井拓巳社長は「人間関係が希薄だったり、デジタル化で、人と人とのふれあいを求めてる人が多い中で、当時を知らない人でも非日常の新しい感覚を感じとれているのではないか」とその狙いを話します。

リニューアル後は狙い通り、20代から30代の若い世代が入場客の多くを占めるといいます。デジタル化が加速する令和の時代だからこそ、アナログを楽しむ昭和レトロが新たな消費の鍵を握るかもしれません。

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