感染症トータルケアカンパニーへ!アース製薬の挑戦

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sdgs_20210827_01.jpg除菌・消臭に効果があると注目を集めるMA-T

大阪・吹田市にある大阪大学大学院・薬学研究科。withコロナ時代の安全を確保するための研究が進められています。MA-Tと呼ばれる液体。においもせず、一見ただの水ですが、除菌・消臭に効果があるとして、航空会社や介護施設、病院などで業務用として使われています。

「除菌では二酸化塩素や次亜塩素酸の名前が出てくるが、MA-Tの主成分は亜塩素酸イオンです」(大阪大学大学院の安達宏昭特任教授)

主成分の亜塩素酸イオンは、菌やウイルスを攻撃する物質を生み出します。それが攻撃とともに消えると、次々に新たな物質が生み出される仕組みです。MA-Tは99.9%が水のため、人に優しく、安定した状態で長期保存ができます。このMA-Tが新たな広がりを見せています。

大阪大学の敷地内に建設中のMA-T研究棟。来春稼働予定で、丸ごと1棟が産学協同の研究施設になるといいます。安達特任教授は「企業が入るオープンラボのイメージ。みんなが集ったら、研究も加速できる」と期待を寄せます。

感染症予防に有効なMA-Tを使った口腔ケア

6月22日、都内で開かれた。Webセミナー「ストップ感染症最新エビデンスセミナー」。登壇したのは、大阪大学大学院・歯学研究科の阪井丘芳教授。口腔外科の専門家です。医療従事者や研究者などおよそ600人がオンラインで参加したセミナーで、阪井教授は感染症予防にはMA-Tを使った口腔ケアが有効だと訴えました。

sdgs_20210827_02.jpg阪井教授が開発中のMA-Tのマウスウォッシュ

阪井教授は、MA-Tを使って口の中の汚れを取り除いたり、除菌殺菌できる口腔ケア用品を研究・開発してきました。

「新型コロナウイルスは唾液腺に強く感染するのではないかということがわかってきたため、口がキーになっている」(阪井教授)

口腔ケア用品として開発したのが、マウスウォッシュ。スプレーとして口の中に直接吹きかけます。

「試験管レベルでは、このMA-Tによって、虫歯菌・歯周病菌、ウイルスに効く。新型コロナにも効くのは試験管レベルではもう証明されている」(阪井教授)

臨床試験も進んでいます。通常の歯磨きとMA-Tのマウスウォッシュを使った唾液を比較すると、明らかに菌が減少しました。さらに新たな商品であるMA-Tを配合したジェルの開発も進んでいます。日用品、介護の現場など幅広い用途が考えられ、来年春の商品化を目指しています。

「MA-Tで口腔ケアすることで重症化を抑えるきっかけになる。MA-Tをうまく使っていけばマスク生活が少し緩和できるかもしれない」(阪井教授)

「感染症トータルケアカンパニー」を目指すアース製薬

sdgs_20210827_03.jpgアース製薬の川端克宜社長

このMA-Tの商品開発の中心となっているのがアース製薬です。アース製薬は、日本MA-T工業会を立ち上げ、業界横断的にMA-Tの活用を進めています。日本MA-T工業会には大林組、花王、資生堂、住友化学、凸版印刷、丸紅など70社が加盟。MA-Tの機能は、化学や農業、エネルギーなど多岐にわたる分野で応用が可能です。

アース製薬では「殺虫剤」という言葉をやめて、虫ケア用品と呼ぶなど、感染症リスクの啓発を進めています。アース製薬の川端克宜社長は「今までは虫を媒介する感染症から身を守る会社。虫は媒介していないが、人の生命を脅かす新型コロナが出てきた。そこに貢献する。社会のお悩み解決するのが会社だと思っている」と話します。

兵庫県赤穂市にあるアース製薬の研究所。デング熱やマラリアなど、蚊が媒介する感染症は世界的な課題の一つです。この研究所では実験を地道に繰り返し、そこで培ったノウハウを持って感染症対策が遅れているアジアやアフリカなどへ進出しています。

防虫による感染症予防から、より広い健康産業へ。川端社長はアース製薬の今後の方向性を考える上で、MA-Tの存在が大きいと言います。

「『感染症トータルケアカンパニー』を考える上で、MA-Tは外せない。感染症との戦いは人類は切っても切れない。新型コロナは終わるかもしれないが、次の感染症が必ず出てくる。虫だけに限らず『感染症トータルケアカンパニー』に変えていく考えです」(川端社長)

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