<コラム>例え好きな人ができても”相手と関係を持ったら配偶者と同じ土俵に立ってしまう”とブレーキをかける...そんな抑制的な2人の生き方に、きっと共感が集まるはず:うきわ―友達以上、不倫未満―

テレ東プラス

プライム帯のドラマに明るいラブコメが多くなったのとは対照的に、夜11時以降の深夜枠に不倫を描くドロドロの愛憎劇が増殖中。夫が浮気、妻が浮気、ダブル不倫という王道の展開から、ドラマ「ただ離婚してないだけ」(毎週水曜深夜0時)のように「不倫に殺人が絡んできてもう大変!」なものまで...ドラマティックで激しい作品ばかりだ。

そんな中、8月9日にスタートした「うきわ―友達以上、不倫未満―」(毎週月曜夜11時6分)。サブタイトルに「不倫未満」という言葉が入っているとおり、簡単には不倫関係になれない男女のじれったくも切ない恋を描き、これまでとはひと味ちがう不倫ドラマになっている。

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結婚2年目の中山麻衣子(門脇麦)は、夫の"たっくん"(大東駿介)が東京に転勤となり、仕事を辞めて共に広島から上京。社宅に入り、隣室に住む夫の上司・二葉一(森山直太朗)と妻・聖(西田尚美)に温かく迎えられる。だが、夫は毎晩帰りが遅く、麻衣子がせっかく作った食事を食べないこともしばしば。それでも、夫婦仲は良いと思っていたが、ある朝、たっくんは自宅にスマートフォンを忘れ、そこに「車修理110番」という名前で登録された人物からメッセージが入る。

「今夜もうちに来ますか?」

どう考えても「車修理」ではない文面を見て、衝撃を受ける麻衣子。一方の二葉も、妻が陶芸教室の講師・田宮悠(田中樹SixTONES)と浮気しているところを目撃し、苦しんでいた。

幸せな新婚さんのはずが、一転"サレ妻"となってしまった麻衣子。文春砲による有名人の不倫スクープを持ち出すまでもなく、男の浮気の多くは妻にバレてしまうものだ。それは、"たっくん"がそうであるように、他の女性と恋愛しているという気分に酔った夫が凡ミスをやらかしてしまうから。うかつなメールやLINEのやり取りから夫の裏切りに気づいた妻の精神的ダメージは計り知れない。

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傷ついた妻は夫を責めるのか? それとも浮気相手が誰かを突き止めるのか? 8月16日放送の第2話では、麻衣子のリアクションが描かれる。そして、実は似た立場にあり、同じ苦しみを抱える麻衣子と二葉は次第に惹かれ合っていく。

原作は「とろける鉄工所」の野村宗弘による漫画。Webコミックとして連載されたときは、1エピソードが8ページという短さとじわじわ迫ってくる恋愛心理の切なさで話題になった。主人公の2人しか顔を描かないという手法も画期的で、麻衣子と二葉が逢瀬を重ねるのは社宅のベランダの境目。1枚の仕切り板を挟み、他人の目を気にしながら言葉を交わすというなんともミニマムなラブなのだ。

地味とも言える独特の世界観をどうドラマ化するかは制作者の腕の見せどころだが、本作では、「チェリまほ」こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」の風間大樹監督が、透明感のある美しい映像に仕上げている。

キャスティングも上手い。地味で控えめな麻衣子役に、大河ドラマ「麒麟がくる」のヒロインという大役を果たした門脇麦。"サレ妻"は受けに回る分、難しい役だが、映画も含め、さまざまな役どころに挑戦してきた彼女だけに、夫に軽んじられながら決して耐えているだけではない"女性の強さ"をリアルに体現してくれそうだ。

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原作では、いかにもおじさんの会社員として描かれている二葉を森山直太朗が演じているのもポイント。森山は歌唱力抜群のシンガーソングライターだが、以前から演劇形式の舞台公演を行なっており、役者としての実力も相当なもの。朝ドラ「エール」で戦地に赴く主人公の恩師を熱演したことは記憶に新しい。「うきわ」の第1話でも、妻が不倫相手と作った食器を壊そうとする場面で、真に迫った表情を見せた。そんな森山が、今後切ない恋心をどう演じるかにも注目だ。

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「中山さん」「二葉さん」と呼び合う麻衣子と二葉は、世の中の多くの人がそうであるように、ごく普通に真面目に生きてきた人たち。配偶者の浮気を知り、もちろん怒りは覚えるものの、それを相手にぶつけてしまったら夫婦関係は終わりだとも分かっている。だからこそ、自分が我慢しようとするのだ。
そして、不倫という裏切りを憎むがゆえに、例え好きな人ができても、"相手と関係を持ったら配偶者と同じ土俵に立ってしまう"と自分にブレーキをかける。そんな抑制的な生き方に、きっと共感が集まるはずだ。

第1話の最後に流れたイメージ映像では、海で遭難しかかっている麻衣子に誰かが浮き輪を投げる。「うきわ」という不思議なタイトルは「うわき」に繋がっている。
考えてみれば、そもそも結婚しても浮気をするのはアリだと考える人間とナシだと考える人間は、別の世界に住んでいるようなものなのかもしれない。その両者が出会い、お互い住む世界が違うとは知らずに家庭を持つと悲劇が起きてしまう。
このドラマでは、もともとは同じ世界に住んでいた麻衣子と二葉が、狭いベランダで再会したかのようにも見える。

麻衣子と二葉が惹かれ合っていくように、伴侶以外の人を好きになるのはありえること。夫や妻が浮気した気持ちもわかってしまう2人だけに、二重の意味で切ない。そんな不器用すぎる愛の物語を深夜にゆっくりと味わいたい。

(文/小田慶子)

8月16日(月)夜11時6分放送!「うきわ―友達以上、不倫未満―」第2話のあらすじは...。

夫・たっくん(大東駿介)の裏切りを知ってしまった、麻衣子(門脇麦)。日々帰りが遅い夫にそれとなく探りを入れてみるがうまくはぐらかされる。やり場のない思いを抱え悶々とする中、隣室に住む夫の上司・二葉さん(森山直太朗)から夫のことを聞き出そうとベランダで話しかけてみることに。しかし、実は二葉さんも秘密を抱えていることを知ってしまい...。麻衣子にとって早朝のゴミ出しの際、二葉さんと何気ない会話を交わすことが何よりの癒しになる。そんなある日そこに女子社員と朝帰りするたっくんが現れて...!