「世界規模のドラマを作らないとまずい」大ヒットドラマ『VIVANT』監督・ TBS福澤克雄が語る制作の裏側

公開: 更新: TBS Topics


2023年7月期の日曜劇場『VIVANT』は、TBS福澤克雄が原作・監督を務めたオリジナルドラマで、同年を代表する大ヒット作品となりました。多くの反響を受け、U-NEXT Paraviコーナーで『VIVANT別版~副音声で福澤監督が語るVIVANTの世界~』の独占配信がスタート。他にもオーケストラコンサートを開催するなど、放送終了後も展開が広がっています。

これに対して福澤はどう感じているのでしょうか。『VIVANT』制作に至った背景や、これからのドラマ作りについて、話を聞きました。

TBSドラマ部を残したい。海外向け作品に掛けた思い

TBS福澤克雄TBS福澤克雄

ー『VIVANT』は海外展開を意識して作られましたが、そこへ至るまでの経緯を教えてください。

福澤 僕はそろそろ定年を迎えるので、自分の人生を考えたときに、TBSの人間として世界規模のドラマを作らないとまずいなと思っていました。テレビはだんだん見られなくなっているけど、TBSには報道やバラエティのノウハウもあるし、ラジオもある。何よりも、ドラマは他局にない強みです。だから、若い人たちのためにTBSドラマ制作部をちゃんと残さなければ、そのためにTBSは世界規模のドラマが作れるんだということを示さなければならないと。

日本のエンタテインメントを支えているのは、やっぱりテレビ局だと思います。ネットの配信ドラマや映画も、結局はテレビ制作者たちが作っているものがほとんどです。だから、テレビ局に作り手として優秀な人材がいないと大変なことになってしまいます。

それと、Amazonにいる後輩と話したときに、「そろそろ海外に向けた作品を作っていかなきゃいけないんじゃないですか?」と話をされたことがあります。世界各国の作品を見ている彼曰く、国内でヒットしたのに海外でヒットしないパターンはあるけど、国内でヒットしていないものが海外でヒットすることはほとんどないそうです。だから、国内でヒットしてから海外でもヒットするようなドラマを作ろうと思いました。ちょうどTBSも海外展開に前向きな雰囲気があり、『VIVANT』の制作が決まりました。

ー作品の舞台の一つである「バルカ共和国」(架空の国)のシーンは、モンゴルで撮影されました。全体を通して撮影はいかがでしたか?

福澤 モンゴルには約2ヶ月いましたが、思った以上に大変でした。慣れていないので、当初の予算を上回ってしまいました。撮影自体は、一流の俳優が集まってくれたので、スムーズに進みました。「あれだけの役者さんが集まったら大変でしょ」とよく言われますが、最初にイメージを伝えたら、あとは自分で考えてやってくれるので、実はそんなに難しくないんですよ。

『VIVANT』モンゴルロケの様子『VIVANT』モンゴルロケの様子

ー『VIVANT』で初めて別班の存在を知った人も多いと思います。海外に向けた作品ですが、日本人に向けて「別班がいるからテロが起きないんだ」と訴えかけたい部分もあったのでしょうか?

福澤 そういうことはほとんど考えていません。とにかく毎回わくわくできるような展開にすることと、海外の方に興味を持ってもらえるように、なるべく日本らしさを出すことを意識していました。

ー今回、特に挑戦したなと思うのはどんなところでしょうか?

福澤 一番は、一話を捨てたことです。今のテレビドラマは「このドラマはこういう話です」と伝えるために、やりすぎなくらい一話に全力投球する傾向があります。セオリー通りに作るなら、一話で主人公が別班だとわからせるべきでした。最初はそうしようと思いましたが、視聴者は作り手が考えている以上に先を読んでいて、「どうせこういう話でしょ」とわかってしまう。だから、とにかく一話では「どんな話かわからないけど、気になるから見てみよう」と思わせる必要がありました。そのためにキャラクターで強烈なインパクトを出し、逃げる、隠れる、突破するといった映画的なおもしろい要素を描きました。

結果として、二話、三話と視聴率が上がっていき、うまくいったなと思いました。唯一の失敗は、一話を2時間にしたことです。視聴者の方にとって、2時間見続けるのは苦痛だったかなと思います。

考察は意識せず、ひたすらおもしろいストーリーを目指した

ーネットでは考察で盛り上がる視聴者も多かったですが、それは意図していましたか?

福澤 そんなことは一切考えていませんでした。考察ドラマと言われるドラマは視聴者を騙しているように感じてしまいます。例えば、「この人が犯人だったの?」と思わせることを最終目標にするのは違うかなと。視聴者に対して誠実であるべきだし、変に騙し合いをしちゃいけないと思います。

だから、『VIVANT』も乃木が別班とわかるシーンのために、実は盗聴器がつけられていることを見せたり、Fと喋っているときに鏡を見て「大丈夫だよ」と言ったりするシーンを入れるなどして、視聴者を裏切らないように作りました。それがうまくいったかなと思います。

TBS福澤克雄TBS福澤克雄

ー『VIVANT』は「社会現象」と言われるほどの反響を呼び、放送が終了した今も、サカス広場にある『VIVANT』モニュメントの前で写真を撮ってる人を見かけます。この持続的なファンの広がりをどう感じていますか?

福澤 本当にヒットしてよかったという気持ちが一番です。制作予算をかなり使ったので、これが大外れしたらTBSの恥になるところでしたから。

特に嬉しかったのは、特別番組「日曜劇場『VIVANT』祭り!第1部 緊急生放送SP」の反響がよかったことです。この日、裏でラグビーワールドカップが放送されていたので、ドラマ本編の開始を30分ずらし、その前に特別番組を放送しました。これが他局の人気番組よりも視聴率が高かったので、これほど反響があるのかと驚きました。

『VIVANT』はモデルになる作品もないし、一話から三話まではほぼ逃げるだけ、四話でやっと別班だったとわかるのは、遅すぎるかもしれないと思う一方、おもしろく見せるのはこれしかないと思っていたので、本当に助かりました。

ー福澤さんが手掛けた『半沢直樹』や『下町ロケット』では、日本の働く男たちの生き様が描かれていましたが、『VIVANT』はまた少し違うように感じました。それぞれどんな思いを込めて制作されたのでしょうか?

福澤 ドラマのジャンルは大きく恋愛、医療、刑事、弁護士と分かれていて、これらは4大ドラマと呼ばれています。4大ドラマは人間の興味の持続がある話だから作りやすいんです。でも、山崎豊子先生に「こんなドラマばかり作ってていいの?」と怒られたことがあります。先生から「資源が何もない国で、日本を支えるのはやっぱりものづくりの人たち。ものづくりの人たちを描いたドラマを作ってみなさいよ」と言われ、作ったのが『半沢直樹』や『下町ロケット』です。

一方、『VIVANT』は黒澤明監督の映画『用心棒』のような、とにかくひたすらおもしろくて次が見たくなるようなドラマを作ってみたいと思って挑戦しました。『用心棒』にはテーマがありません。テーマがあれば、そこに向かってまとめればいいから楽なんです。でも、『用心棒』はヤクザ同士が争って、最後は「あばよ」と言って終わっていく。なんだかよくわからないけど、とにかくおもしろい。自分が作り手になってから、これを作るのは大変だっただろうなと思います。

『VIVANT』には世界平和や家族愛といった要素もありますが、そこばかり狙うのは違うかなと。一番意識したのは、毎回ひたすらおもしろく見せる方法は何かということです。とはいえ、日本の宗教や家族についていろいろ調べながら作りました。裏に隠されてるものがまだまだいっぱいあるんですよ。

 

■完全版:
TBS INNOVATION LAND 記事にて

 

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