ドラマの主人公を丸ごとデジタルデータに⁉︎TBSドラマ制作を支える最新技術の裏側

公開: 更新: TBS Topics


TBS系列で放送中の火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』。本作はやっかいな問題を抱えた30歳の主人公・白玉佐弥子が、謎の大学生の一言をきっかけに学び直しを決意して大学生となり、令和の大学生たちに揉まれながら恋に、勉強に、夢に奮闘するセカンド・アオハル・ラブコメディ。

同ドラマの1話には、TBSが地上波で初めて使用する、最新技術を使ったシーンが登場しました。その技術について、VFXスーパーバイザーを担当したTBSアクトの中村淳に聞きました。

主人公を丸ごとデジタルデータに!

ー『マイ・セカンド・アオハル』で採用されたという最新技術は何ですか?

中村 ソニーの「ボリュメトリックキャプチャ」という技術です。この技術は1話で広瀬アリスさん演じる主人公・白玉佐弥子がジェットコースターに乗っているシーンと、交通事故に遭うシーンで使われました。

ジェットコースターのシーンは、脚本には「ジェットコースターに乗っている佐弥子の前に次々と未来の自分の姿が高速で迫ってくる」」と書かれていました。そこから、”それぞれの未来の中をジェットコースターに乗って駆け巡っていく” 見せ方を監督に提案したところ、非常に気に入っていただいて採用に至りました。

交通事故のシーンは、当初はこの技術を使う予定はありませんでしたが、監督と「これができるなら、このシーンの表現が広がりそうだ」「こういった表現はできる?」といろいろとディスカッションをした結果、採用されることになりました。完成した映像にも大変満足してくださいました。

ーボリュメトリックキャプチャはどのようなことができる技術ですか?

中村 被写体をカメラで360°囲って撮影し、動きのある被写体もフォトリアルに3DCG化する技術です。広瀬さんのお芝居を丸ごと3DCGにできるので、CGの中でジェットコースターに乗せたり、好きなアングルから写したりすることができます。この技術が無い場合、広瀬さんをそのまま再現したCGを手作りする必要があり、大変な時間がかかる作業になります。ドラマ撮影のスピード感でこれを実現するには必須の技術でした。

ー難しかったところは?

中村 広瀬さんの髪の毛の部分を3DCGにするのは難しかったです。ボリュメトリックキャプチャに限ったことではありませんが、髪の毛のような細いものや、小さいもの、薄いもの、鏡面反射するものなどを3Dデータにするのはすごく難しいのです。これは日本だけではなく、ハリウッドでも課題とされていて、ここ20~30年の間、ずっと研究対象とされています。

ー手応えはいかがでしたか?

中村 このシーンを3DCGで表現しようとしたら、多分間に合わなかっただろうなと思います。今後は次のステップに向けて、さらに技術を向上していきたいですね。すごく未来のある技術だと思います。

ー視聴者からの反応はいかがでしたか?

中村 技術サイドの人間は、「ボリュメトリックキャプチャが地上波に出た!」と思って見ていたと思いますが、おそらく視聴者の方は3DCGだと気付いていないのではないでしょうか。特に、ジェットコースターのシーンは全然わからなかったと思います。でも、視聴者の方が気付かないということは、それだけ自然だったと捉えられるので、ポジティブに受け止めています。

TBSアクト中村淳TBSアクト中村淳

ボリュメトリックキャプチャなら、映像表現の幅を広げられる

ー今回はソニーPCLさんのスタジオ(ソニーPCL 「清澄白河BASE」)で撮影が行われましたね。ボリュメトリックキャプチャが使われたのはTBSの地上波番組として初めてですが、他局も含めてこれまでどのような使い方をしてきたのでしょうか。

ソニーPCL池田氏 ボリュメトリックキャプチャは、派手なカメラワークをしたいときに使われることが多い技術です。遠くからものすごいスピードで近付くなど、カメラワークが自由にできるので、ミュージックビデオでよく使われています。

テレビや映画では、特撮番組やアクションシーンなど、飛び道具的な要素として使っていただくことはありましたが、今回のようなアクションのないドラマで使っていただくのは初めてです。我々としては斬新ではありました。

ソニーPCL池田氏ソニーPCL池田氏

※ソニーPCL池田氏

ーこれまでとは違う使い方をされて、どう感じましたか?

ソニーPCL池田氏 こちらでは何度か映像制作をやってきてはいるものの、こういったドラマで使うのは今回が初めてだったので、果たしてそこにクオリティがマッチングするのか、ちゃんとオンエアできるのか、放送されるまで心配して見ていました。

また、今回初めて使っていただいたので、弊社のデータフォーマットなど、いろいろと難しかった部分があると思います。そういうところはフィードバックしていただきながら改善して次に繋げていきたいですね。

ーボリュメトリックキャプチャの活用方法として、今後はどうお考えですか?

ソニーPCL池田氏 ボリュメトリックキャプチャは3Dを生成する技術なので、映像制作だけでなく、VRやAR、MR、メタバースなどいろいろなところで使えると思っています。とはいえ、弊社としてまずは映像制作でちゃんと使われることが目標です。クオリティを上げていけば、いろいろなシーンで応用できると思います。今回のようなドラマでの使い方を、今後はもっと広げられるように頑張っていきたいですね。

ソニーPCLの皆さんソニーPCLの皆さん

※ソニーPCLのメンバー

ー今後の展望をどう考えていますか?

中村 映像クリエイターにとってボリュメトリックキャプチャ技術は非常に魅力的で、アクションや非現実的なシーンの映像演出の幅がかなり広がることを実感しました。

実は、この技術を使った映像制作は1年以上前からTBSとソニーで共同実験を進めていました。(詳細はこちら) その関係性もあって実現に至っており、今回はTBSのVFX技術とソニーの開発力が融合した事例となります。

この技術でどのような演出ができるかという知識が増えましたし、VFXワークフローへの取り入れ方もわかりました。今後、チャンスがあれば人物データの大きさ変更や複製もできる特性を活かしてみたいですね。

■詳細:
TBS INNOVATION LAND 記事にて

 

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