タトゥーアーティストの大島托さんが、5月29日放送の『クレイジージャーニー』(月曜よる9時)に出演する。世界各地に残るトライバルタトゥー(民族タトゥー)を調査し、自身の体に彫りながら旅をしてきた大島さん。今回、インドとフィリピンの取材旅に番組が同行。トライバルタトゥーへの思いや旅のことを聞いた。

スタジオ収録はいかがでしたか?
いやー緊張しました。僕は小池栄子さんがグラビアアイドルだった頃からファンなので、スタジオで目に入った瞬間「あー、小池栄子だ!」って(笑)。緊張はしましたけど、面白かったですよ。
タトゥーとの出会いは、大学卒業後にインドを旅した時だそうですね?
そうです。インドでタトゥーを入れている旅行者に出会うことが多くて、僕も遊びで肩のあたりに彫ってもらったんです。その時に面白いなと思って。絵が得意だったこともあり、自分でも彫ってみようかなと。当時は彫り方を教えてくれるYouTubeチャンネルなんてなかったから、プロのところに行って自分が彫ってもらってそれを観察したり、仲間と情報交換をしたり。だから僕は独学。もともと遊びからこの世界に入ったし、いろいろな発見があって面白かったですよ。
最初は人には彫れないから、まず自分の体で練習をするんです。足は全部、練習で埋まりました。それであらかたの失敗を経験しつつ、友達から頼まれて彫るようになりました。
タトゥーにはさまざまなジャンルがあるんですね。
いろいろあって、主流としては「アメリカントラディショナル」ですね。代表的な柄に、バラの花にダガー(短剣)が刺さったものや、抽象化された蛇がドクロに巻き付いているものなどがあります。日本の「和彫り」もそれに匹敵するくらい大きなジャンルです。

日本でも海外でも現代タトゥーを入れる人は増えていて、反対に民族の風習としての伝統的なトライバルタトゥーは、もう風前の灯火。ただ、それが現代タトゥーとして見直されて復活している地域はたくさんあるんですよ。日本も沖縄の柄は人気があります。
大島さんはなぜトライバルタトゥーを仕事に?
以前はトライバルタトゥーが世界的にブームだったんです。そのブームが去ってからも僕はそこに居続けているということですね。プロなのでどのジャンルもひと通り刺せますが、十数年やっているうちに自然に自分の得意技の方に特化していって、それがトライバルタトゥーだったというか。料理人さんの世界と似ているかもしれませんね。いろいろなレストランで働きながら仕事をひと通り覚えて、いざ独立して店を出す時は自分の核の部分で勝負するという。
僕はトライバルタトゥーのデザインがものすごく好きなんですよ。何千年、何万年とかけて練り上げられたものなので、飽きることがない。デザインから学ぶことがたくさんあります。現代タトゥーは彫師もお客さんも「皮膚に彫る」という意識ですが、トライバルタトゥーはそもそも「体に彫る」意識から生まれたデザイン。体に彫るということは、必然性があるということですね。

民族ごとにデザインは違って、どれも意味がある。
そうですね。タトゥーのデザインはさまざまで、基本的にはその人たちの世界観と結びついています。タトゥーを入れる理由は、女性の場合は主に装飾。自分をより魅力的に見せたるためというのが一番ですね。男性はもっとゲーム性があって、敵を討ち取って帰ってきたら一つ入れるとか、漁でサメを獲れるようになったら入れるとか。ルールは民族によって違いますが、男性は強さや有能さの証みたいなものです。
今回はどのような取材旅でした?
インドとフィリピンに行きました。インドでは今タトゥーブームが巻き起こっているんです。ムンバイで国際的なイベントが行われると知って、ぜひ見たいと思い行ってきました。家族連れの姿もありましたね。

フィリピンはマニラからだいぶ離れたところにあるブスカランへ。「タトゥー村」と呼ばれていて、僕もそこで実際にお腹と手に彫ってもらいました。
今回の旅で特に心を動かされたものは?
やっぱりフィリピンのワンさんですね。人間国宝にもなっている女性彫師で、105歳で現役。僕はワンさんがお元気なうちに村を訪ねることはないと思っていましたが、今回そのチャンスに恵まれました。僕も彫っていただいたんです。わりとガシガシいかれたので痛かったですが、大先輩なのでやはり感慨深いです。105歳とは思えないしっかりとした話し方で、山道もスイスイ登る。本当にすごい方でした。
ブスカランは「タトゥー村」ということですが、どんな村ですか?
メインの産業がタトゥーで、たくさんの人がタトゥーを入れにやって来ます。村は”伝説の彫師”であるワンさんを中心に組織的に回っている感じでしたね。だから今後、彼女がいなくなった時に村はどうなるのか、このいい波をどう長く引き継いでいけるかがキーでしょうね。
ワンさんにはグレイスさんという若い一番弟子がいます。僕も彫ってもらいましたが、刺し方のコントロールが効いているし、すごく腕が良かった。ただ、カリスマがいなくなると分裂して弱体化していく組織はよくあるので、タトゥー村はその辺をうまくやっていけるといいですが。トライバルタトゥーの一つのモデルケースとして、見守って行きたいですね。

大島さんご自身は普段、彫る行程のどこに特に神経を使いますか?
彫る前です。できている下絵を体にペタッと貼るステンシルを使う人もいますが、僕は肌に直接油性マジックで描くやり方。その時に脳が最もカロリーを消費している感覚があります。デザインが決まれば、あとはマシンのオペレーターみたいなもので、目を凝らして集中しながら、お客さんとセッションしていきます。
女性のお客さんって、あまり痛がらないんですよ。男性同士のタトゥーファンの会話を聞いていると「ここがすごく痛かった」「わかる、わかる」みたいな感じが多いですが、女性同士だと「かわいい!」って褒め合いになります。なかにはセッションの最初から寝る人も。女性は痛みを心でかわせるんでしょうね。
番組をご覧になる皆さんに、メッセージをお願いします。
今まで地上波でタトゥーが取り上げられることはなかったと思うし、見る方の多くがタトゥーに関してあまりご存じないと思うんです。だから今回、その入り口をスムーズに開ける役ができたらいいなという思いです。
最近人気のブレイキングダウン(1分1ラウンドの格闘技大会)などを見ると、タトゥーを入れた選手がたくさんいますよね。「タトゥーって何だろう?」と考える材料が世の中にたくさん出てきたところだと思うので、ぜひ番組を見てもらえるとうれしいです。
番組情報
『クレイジージャーニー』
毎週月曜よる9時から放送中