BPMの紅白衣装に込めた思いとは!?『夕暮れに、手をつなぐ』

公開: 更新: TBS Topics


最終回を迎えたTBSの火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』。九州の片田舎で育った浅葱空豆(広瀬すず)と音楽家を目指す青年・海野音(永瀬廉)の、運命的で衝撃的な出会いから始まった青春ラブストーリーだ。

物語は2人の恋模様とともに、夢にもフォーカスが当たっていたが、最終回ではまだ何者でもなかったときに話した「音が紅白歌合戦に出場するときの衣裳を空豆がつくる」という夢が実現。劇中でも登場した“紅白衣裳”にはどんな思いが込められていたのか。本作で衣裳デザイン監修を担った藤本大輔氏がこだわりや制作秘話ついて語った。

イメージは“菜の花”

――音とセイラ(田辺桃子)のユニット・BPM(ビート・パー・ミニット)が紅白歌合戦のシーンで着用した衣裳に込めた思いをお聞かせください。

『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話
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脚本家の北川悦吏子さんから最終話までの内容を伺ったときに、“空豆が作る衣裳の頂点は紅白の衣裳”、と決めていました。それがどんな衣裳であるべきなのかと考えたとき、ただ才能豊かなデザイナーが作った衣裳ではなく、彼女が積み上げてきた経験や思いを重ねた衣裳にしたいと思いました。
例えば、師匠の久遠徹(遠藤憲一)に自分のアイデアを盗用されそうになったこと、母で世界的にも有名なデザイナーである浅葱塔子(松雪泰子)に誘われて行ったフランスに行き、それなりに成功をしたものの、業界に何か違和感を抱いて帰国し、地元で身近な人が幸せになる洋服を作り始めたこと。たくさん苦しいことも経験してきた空豆ですが、地元で過ごすうちにすべて昇華されたのではないか、という考えに至りました。
つまり、改めて音から「紅白の衣裳を作ってほしい」と頼まれて立ち上がるときには、“人間・空豆”に戻っていたのかなと。そんな空豆が表現する衣裳を制作するにあたり、僕が奥底で考えていたのは“地産地消”の精神でした。衣裳に天然素材を用いることで、夢に疲れて地元に戻った空豆が地元で英気を養う、地元のありがたさを知る、またそこで新しい物やことに気付く――という表現をしました。
その地元を象徴したものが“菜の花”なのかなと。空豆は口では“母親に捨てられた”と言いつつ、彼女の片隅にはどんなときも母・塔子が存在したはず。「アンダーソニア」に入りデザイナーを目指したのも、母に自分の存在を見つけてほしい、対抗したいという思いがあったからで、それは塔子も同じ。4歳の空豆と菜の花畑に出かけた思い出を、塔子はブランド名「コルザ」に込め、空豆は紅白の衣裳に込めたと感じたんです。

――具体的に菜の花をどう衣裳で表現されたのでしょうか?

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草木染めすることで菜の花を表現しました。実は本当の菜の花ではイメージした黄色に染めることができないので、クチナシという花の実を用いて、着色しています。また、クチナシは“とても幸せです”“胸に秘めた愛”など、すごくポジティブな花言葉を持っている花なので、いろいろなことを乗り越えた空豆にピッタリだと思ったこともあり、選びました。
空豆と塔子が“菜の花”に着目することが、母娘の証明のようになっています。ちなみに父親である天才画家・菱川誠二の娘らしさが表れているのは、天才ゆえに突拍子もない発想をするという“動物的感度”なのかなと。そこが空豆の魅力ですし、デザイナーを目指し始めた当初からあった、父親との類似点だと思います。

――紅白衣裳について脚本家・北川悦吏子さんからはどんなリクエストがありましたか?

『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話
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北川先生からは、“音が「木」で、セイラが「木漏れ日」”というキーワードをいただきました。このキーワードを聞いたとき、BPMのデビュー曲「きっと泣く」のMVでは表に出なかった音が、その後セイラとともに表舞台に立つことを選択したからこその「木」なんだなと。そして、“自分がユニットの幹”だと覚悟していることも表現するべきだと思ったんです。
そこで僕は、“音が「木」”という部分を「音にとって自分(木)の根っこである音楽」が、「セイラの心臓を叩く」と解釈して、草木染めした布に音楽の波形を刺繍することで表現しました。

『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話
 
『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話『夕暮れに、手をつなぐ』衣装秘話

波形をイラストレータで調整したものをデザインとして音の衣裳からセイラの衣装へとつなげました。また“セイラが「木漏れ日」”という部分は、キラキラした素材の生地を使用することで表現。光が当たったときに木漏れ日に見えるよう計算したデザインになっています。

――普段のスタイリングやステージ衣裳制作との違いはありましたか?

今回、いくつもの衣裳デザインを担当しましたが、僕の感覚としてはライブの衣裳を制作しているときと似ていました。アーティストのライブ衣裳に携わるときも、ライブ構成やテーマ、美術セット、そしてそのライブのあとアーティストとしてどうなっていきたいのか、というような話を伺って、衣裳デザインを掘り下げているので。タイトなスケジュールでの製作でしたが、むしろ空豆がファッションに夢中になっていたように、“楽しい”が勝っていたお仕事でした。機会があればまたぜひ、挑戦したいと思っています。

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■番組概要
[タイトル]
火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』
※TVerにて最終話を配信中

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