TBSで放送中の井上真央主演、金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』。大人になり偶然再会し、互いに運命を感じた幼馴染の相馬悠依(井上真央)と鳥野直木(佐藤健)。だが、直木は不可解な事件に巻き込まれ、現世をさまようことに。唯一直木の存在を認識できる刑事・魚住譲(松山ケンイチ)の手を借りながら、悠依に自分の言葉を伝える“切なくて温かい”オリジナルファンタジーラブストーリーだ。
今回はこのドラマのプロデューサー・磯山晶氏のスペシャルインタビューを、前・後編に分けてお届けする。前編では、この作品の主軸を担う井上・佐藤・松山、さらに物語の鍵を握る尾崎莉桜役の香里奈など、魅力あふれる俳優陣について聞いた。
――井上さんとは本作で初めてご一緒されたと伺いましたが、撮影を通じて感じた井上さんの魅力を教えてください。
台本に対する理解力がすごく深い方です。演じる上での方向性もすごく的確で、何より悠依というキャラクターの造形が全くぶれない。頭が良くて表現力も豊かで、本当に稀有な女優さんです。悠依の表情で私が一番印象に残っているのは、第4話の「絶対に許さない」というセリフのところ。泣いているわけでも、叫んでいるわけでもないのに、気持ちがすごく伝わってきました。最終話で井上さんがどんな表情を見せてくださるのか、今から楽しみです。
――幽霊という特殊な役どころを演じる上で、佐藤さんとどんなお話をされましたか? また、新たに発見した佐藤さんの魅力とは?
最初の頃は、視聴者の方が見たいと思う幽霊のシーンをなるべく多く作りましょうと話をしていました。例えば、右側にいると思って話していたら左側にいたとか。クスッと笑えるような幽霊シーンのアイデアを佐藤さんを交えてみんなで考えることが多かったです。
佐藤さんが演じる直木は、幽霊だけどリアル思考で、何でもできるように見えて何もできないといった感じが新鮮でした。印象的だったのは、直木がたまに見せる少し弱い顔です。「本当に死んだらどうする?」という思いで直木役に挑んでくださっているんだなと。「やっぱ俺死んでたわ」や「悠依には笑っててほしい。それだけ」と言うシーンなどで、これまで見たことのない表情を見せてくださっています。演出家は見たことのない表情を見ると撮りたくなってしまうらしくて、劇中でのそういった表情は長めに使われています(笑)。
――“ゆずキュン”がSNSでも話題ですが、松山さん演じる譲は物語の中でどういった存在でしょうか?
彼がいないと話が成立しないので、7話で直木と離れなくてはいけなくなったときどうしたらいいのか、台本も含めて大混乱でした(笑)。魚住譲という人が物語を回していますし、譲に対しての視聴者の皆さんの共感度がとても高く、作り手の気持ちが視聴者にしっかり伝わっているんだと感じました。彼が面白く雰囲気を変えてくれることで、悠依と直木が救われることも多くて。巻き込まれキャラですが、最高の癒しの存在。しかも犯人を逮捕してくれるし、5話では「僕は意外と尽くすタイプですよ」って、ちょっとセクシーな表情を見せるところもあって、何度でもおいしいキャラクターです。

――キーパーソンとして、演技力の高さが話題になっている莉桜役の香里奈さんの起用理由と、印象に残っているシーンを教えてください。
演技力もさることながら圧倒的に華があって、何より皆さんが見たいと思う方なのでお願いしました。莉桜は謎の人物で事件の鍵を握っていて、それ故にあまり喋ってはいけないという難しい役どころ。そんな中でも、6話で車に乗り込む直前、悠依に見せた笑顔は最高でした。ずっと潜伏し続けた莉桜の心が解ける瞬間を演じてくださいました。私たちは勝手に『天城越え』で連れ去られる田中裕子さん”を思い描いていたのですが、まさにそういう表情をされていて(笑)。本当に素晴らしかったです。

――悠依の子ども時代を演じている新井美羽さん。井上さんに似ているという声が多く上がり、SNSでも話題になっています。
視聴者の皆さんにとって悠依に似ている役者さんの方が感情移入しやすいと思いますし、お芝居上手で可愛いという様々な条件を全て兼ね備えていたのが新井さんでした。お稽古の際に、井上さんが演じている悠依を一度見ていただいたのですが、特徴をすぐに掴んでいてすごいなと。直木の幼少時代を演じる坂元愛登くんも上手なので、井上さんが「もっとあの子たちのパートを長くすればいいのに。あんなピュアな演技、私にはもうできない」とよく言っています(笑)。

――バラードバージョンも話題になっている主題歌の「リンジュー・ラヴ」ですが、制作秘話などあれば教えてください。
歌詞を読めば読むほど、このドラマに寄り添そうだけでなく、一歩先を行ってくださっているなと感じています。暗いドラマにしたくはなかったので、この曲のポップさも全部ひっくるめてありがたいなと思っています。バラードバージョンに関しては、本当に悲しいシーンで使いたくて、1話制作時にお願いしたら作ってくださったんです。4話の音楽入れ2日前というギリギリのタイミングで完成し、はっとりさん自身も「気に入っている」と伺いました。1分20秒くらいの長さしかないんですけど、「(マカロニえんぴつの)アルバムにも入れたい」って言ってくださっていると聞いて、本当にうれしかったです。
次回、後編では、前編では語りきれなかった撮影秘話と共に最終回にも言及したインタビューをお届け。「大切な人に今の気持ちを精一杯伝えたい」という、当たり前のようで決して当たり前ではないメッセージを携えた本作が、どんなラストを迎えるのか。物語と共にこちらの記事もお楽しみに!
■番組概要
[タイトル]
金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』
[放送日時]
毎週金曜よる10時~10時54分