フォトグラファーのヨシダナギさんが、3月6日と13日放送の『クレイジージャーニー』(月曜よる9時)に出演する。これまで数々の少数民族撮影旅で楽しませてくれたナギさんが今回向かったのはアンゴラ。その見どころに加え、『クレイジージャーニー』初出演時のことや、「同じ格好作戦」の始まりについても聞いた。

久しぶりの撮影旅はいかがでしたか?
今回撮影したのはアンゴラのムイラ民族です。10年くらい前から会いたいと思っていたので、実現できて本当に良かったです。私は自分が表に出るのがあまり得意ではないですし、テレビカメラをプレッシャーに感じることもあります。でも今回は「アンゴラに行けるなら、どうぞ好きなように私を撮って!」という感じ(笑)。こんなに前のめりになった旅は初めてかもしれません。時間があったぶん心に余裕も持て、ムイラの人たちと少しずつ心を通わせることができました。
ムイラ民族に関してはとにかく情報が少なかったので、彼らを探す行程もまた楽しかったですね。ただ、悪路は私の海外経験の中でも過去イチ。初めて車酔いを経験しました(笑)。
実際にムイラ民族に会っての印象は?
想像していた以上に素朴な人たちでした。人見知りを超えて、最初は私たちを怖がっている印象を受けました。話を聞くと、外の世界に対する彼らの感覚は奴隷時代から止まっていて、外の人間は自分たちをどこかに連れて行ってしまうと思い込んでいたようです。でも、一緒に過ごすうちに「同じ血が流れている人なんだね」ってわかってくれて。交流を通して歴史の怖い思い出を変えることができたのはお互いに良かったし、意味のある旅だったなと思います。

モデル選びや写真の構図は、いつもどうやって決めるんですか?
まずモデルをやってもいいという人に手を挙げてもらって、その人たちの普段の生活を観察して決めます。物おじしない人やムードメーカー、リーダー気質の人などバランスを見て、いい雰囲気で撮影ができるように。構図は自分の中にある程度パターン化されているので、そこにパズルのように配置していく感じでしょうか。場所は事前になんとなくイメージしておいて、あとは現地でロケハンをしまくって探すというやり方です。
ファインダーを覗いている時はどんな気持ちですか?
どの民族もそうですが、撮られる側にとっても、それを見る側にとっても「これが最初で最後に見る彼らの姿」を意識して撮影するようにしています。というのも、私は5歳の時にテレビで初めてマサイ族を見て「私もマサイ族になる!」と心を奪われました。彼らのカッコよさが映像にしっかり出ていたからだと思います。もしも私が撮った少数民族が半目とか中途半端な姿だったらカッコイイとは思ってもらえないでしょう。
私にとってのマサイ族がそうだったように、人が人に与える影響は時に人生を変えるくらい大きいと思うので、最高の1枚を撮って、それが被写体にとってもそれを見た人にとってもプラスの力になるといいなという思いです。

『クレイジージャーニー』に最初に出演された時は、今の撮影スタイルを始めたばかりで、自らフォトグラファーとは名乗っていなかったとか・・・。
もともと趣味でアフリカに通い、ポートレートを撮ってネットに上げていました。でも、普通のポートレートだと興味のない人たちに彼らのカッコよさは届かない。ずっと悔しい思いをしていたんですね。どうしたら私が持っているヒーロー像をみんなと共有できるのかと考えて、思いついたのが今の演出です。少数民族の人たちに並んでポージングしてもらい、できるだけ逆光で撮る。太陽を背負うことでヒーロー感が出ますから。
その撮影方法を一度やった時に『クレイジージャーニー』から声がかかりました。最初の同行旅は2015年でスリ族の撮影でしたが、今のような作風の写真はまだ1枚あっただけ。うまくいくかどうかなどまったく考えずに出演を受けたのは、今思えば若気の至り(笑)。でも「私が憧れるアフリカの人たちをテレビで見てもらったら、絶対にカッコイイと思ってもらえる」という思いがあったし、実際に現地の人たちも喜んでくれました。この番組が「フォトグラファー・ヨシナダギ」を作ってくれたという感じです。
「同じ格好作戦」を始めたきっかけは?
私は昔からコミュニケーションが苦手で、友達の作り方もわからない子どもでした。でも、5歳でマサイ族を見た時に「この人たちと同じ格好をすれば仲良くなれる」という根拠のない自信はありました。大人になって実際にアフリカに行ったら、やはり現地の人との距離をすごく感じたんです。当時は英語が話せなくて、自分の意思を伝えられなかったということもあります。それで「自分も同じ格好をしたい」という趣旨の英語を覚えて、2012年にカメルーンへ。ガイドさんを通じて現地の人に伝えたところ、すごく驚かれ、一気に距離が縮まったんです。
後からわかったことですが、隠している体の面積が少ない民族ほど、自分たちと外の人との違いをはっきり認識している。たくさん隠している人ほど羞恥心が強く、それを取り去ることはとても勇気がいることだと彼らは知っているんです。だから「同じ格好をしたい」と言った私はリスペクトでしかないと。5歳の私はそこまで考えていませんでしたし、実際に楽しいからやっているだけなんですが、同じ格好をすることで受け入れてもらえる理由がよくわかりました。
今回も、私が着替えるために脱いだら、ムイラの女性たちは慌てて胸を隠そうとしてくれたんですよ。
ところで、一見グロテスクな食べ物や飲み物も、ナギさんはためらいなく召し上がりますね?
現地の人はどんなものを食べているんだろうという単純な好奇心です。あとは食糧難になった時に生きる術の一つとして、おいしく食べられるかどうか、いろいろな味を知っておくといいかなと(笑)。

私が特においしいなと思うのは動物の脳みそ。皆さん嫌がりますが、その理由が分からなくて。私は小さい頃から父によく食べさせてもらっていますが、白子のようにトロンとしておいしいですよ。あ、私の父はイタリアンのシェフです(笑)。イタリア料理では特別珍しいモノではなくて、アフリカでも立場の上の人やお祝いの時にしか食べられない貴重なものなんですよ。
今後、撮影してみたい民族や地域はありますか?
私がコネクションを持っているのはアフリカとアマゾンですが、メキシコや民族が多い中東にも行ってみたいですね。アフリカで行けていない地域もまだまだあるので、行きたい場所はたくさんあります!

今回はヨシダナギさんにとって5年ぶりのアフリカ訪問。2週にわたってお届けするアンゴラ・ムイラ民族撮影旅にご期待ください!
番組情報
クレイジージャーニー
毎週月曜よる9時から放送中