世界の紛争地からニュースを伝え続けるTBSの中東特派員・須賀川拓が、1月16日放送の『クレイジージャーニー』(毎週月曜よる9時放送)に登場!2006年にTBSに入社し、2019年から報道局ロンドン支局を拠点に、中東や湾岸、北アフリカ、さらにアフガニスタンやパキスタン、最近はウクライナなどの紛争地域からレポートを届ける須賀川に、仕事への思いや現場のことを聞いた。

――報道番組とは違う『クレイジージャーニー』への出演、いかがでしたか?
『クレイジージャーニー』は日本にいる頃に見ていましたし、ロンドンでも録画で結構見られるんですよ。面白い番組で、若い方たちも大勢見てくれていますから、今回こういう機会をもらえたことがめちゃくちゃありがたかったです。
――ありがたいとは、どういうことですか?
報道はすごく大事ですが、報道番組でリーチできる人はどうしても限られてしまいます。この番組で自分の仕事を紹介することで、より多くの人に紛争地域の実状やその背景を知ってもらうことができる。これってすごいチャンスだなと。国際情勢や人道支援の観点からも、若い人たちに知ってもらうことはとても重要なんです。
――須賀川さんが中東特派員になった経緯を教えてください。
TBSには報道志望で入社しました。大学時代から難民支援をしたいという思いがありましたが、難民支援というと募金やNGOで活動するくらいしか自分の中にイメージがなくて、仕事にどう活かせるかが見えないモヤモヤがありました。それが2019年から希望していた中東特派員になって「こういう(メディアで現状を伝える)支援の形もあるのか」と、ようやく出口が見つかった感じです。

支援にはいろいろな形があって、例えば外に出ることのできない難民の若者にとってゲームは貴重な憩いです。面白いゲームを作ることやエンターテインメントを届けることも彼らの心を救うことにつながります。そういうことを知って僕自身が楽になったし、自分のスタイルで仕事をしていこうと考えるようになりました。
――危険な場所に行き続けるモチベーションはどこから?
紛争地であっても、実際は多くの人が僕らとあまり変わらない日常生活を送っています。そんな彼らが苦しんだり希望を失ったりする原因は、戦争以外にも地球温暖化や鉱物資源の採掘など、先進国から受ける影響が非常に多くあります。現地の人はまったく関係がないのに。だから、そういった面は僕らが取材していく責任があるんじゃないかなと思っています。
アフガニスタンはソ連による侵攻から数えると、戦争をしている期間が実に40年以上。日本は「戦争を知らない世代」がほとんどですが、向こうでは「平和を知らない世代」がとても多い。それがいかに子どもたちや国にダメージを与えているか、考えてしまいますよね。
――どんな現場も冷静に詳細に言葉を繋ぐ姿が印象的です。
冷静に受け止められないこともあります。ロシアのウクライナ侵攻で、ブチャとイルピンで次々と虐殺が判明した時は少し錯乱しました。現実を受け止めきれずに「そんなことあるはずがない」と思ってしまって。しばらくして我に返りましたが、そんな時は取材を終えてロンドンの自宅に帰っても、一人でいると宙に浮いたようなフワフワした感じになります。現実感がなくなるというか、テレビをつける気もしないし、おいしいものを食べる気もしない。特に長い出張から戻ると「1週間は使いものにならない」と妻からよく言われます(笑)。
――それでもまた戦場に行こうと・・・?
受け止められないような現実があるからこそ、行かなければと思います。
僕が久しぶりに帰って来ると、9歳の息子と6歳の娘はすごく喜んでくれます。出張に行く時は「パパ今度はどこに行くの?」と必ず聞くので、行き先と、どういう場所なのかをちゃんと説明しています。

――現場で危機な目に遭わないための判断基準はありますか?
いきなり飛んでくる弾道ミサイルの攻撃に遭うかどうかは、極論を言ってしまえばラッキーかアンラッキーかです。でも、できるだけ危険を回避する方法はあります。例えば、軍事施設のそばには行かない。攻撃されたばかりの場所は集まる人を狙った再攻撃の恐れがあるので、すぐには近づかないなどです。専門家であるセキュリティーアドバイザーに取材に同行してもらえば、行く先々で適切な助言ももらえます。
一番怖いのは、自分が戦場に慣れて「全然大丈夫!」と思ってしまうこと。人間の本能として「危ない」と思うことはとても大事なので、危険察知能力がマヒしないよう常に心掛けています。
――取材のチームワークも大事ですね。
チームがなければ、僕一人では何もできません。コーディネーターは極めて大切な存在で、現地の情報をもらうだけでなく言語や文化理解においても頼りになります。カメラマンとは映像を撮るうえでの意思疎通はもちろん、いざという時に「危ない」という感覚を共有できているかも重要なポイント。そのためにも日頃のコミュニケーションは欠かせません。
――須賀川さんのYouTubeのレポートも注目されています。
紛争地だからと言って瓦礫ばかりではないし、貧困にあえぐ人しかいないわけではありません。同じ町で日常生活を送っている人もたくさんいて、格差があるのが現実です。ただ、地上波ニュースの限られた時間でそこまでは伝えられないので、ネットや映画、『クレイジージャーニー』などでじっくり伝えられるのはいいことだなと感じています。
実際、アフガニスタンは食事やフルーツが本当においしい国でもあるんですよ。僕が特に好きなのはトマトと羊肉のビリヤニ。メロンやザクロジュースなんか最高です。

――ところで、ご自身を「クレイジー」と思うことはありますか?
今回クレイジーポイントをたくさん挙げてもらって、確かに変な人だなと思いました(笑)。先日カメラマンからも「スイッチが入ると人が変わったようになる」と言われましたが、確かに移動の車中でだらしなく寝ていても、取材となるとパチンとスイッチが入る感覚があります。恐らくそこからアドレナリンが出続けるんでしょうね、疲れもあまり感じません。
ただ、それは僕に限ったことではないと思います。どの記者さんもアフガニスタンやウクライナでは同じようなことをしていますし、チャンスがあればタリバンのパトロールに同行して指導者にインタビューしたいと思うでしょう。
自分が特別なことをしている意識はまったくないので、もしかしたら僕の伝え方のスタイルが『クレイジージャーニー』にうまくマッチしたのか・・・。今、さまざまな媒体や番組で紛争地の状況を伝えることができて、記者として本当に恵まれていると思います。
――今回の放送を通して伝えたいことは?
ガザは僕がずっとこだわって取材を続けている場所です。ガザという地名を初めて聞く人もいるかもしれませんね。知ってもらうだけでもいいし、「ガザってどんな場所なんだろう?」「パレスチナって何が問題なの?」と少しでも考えるきかっけになったらうれしいです。
1月16日放送の『クレイジージャーニー』は、須賀川記者のアフガニスタン取材旅に番組が同行。貴重な映像の数々を、どうぞお見逃しなく!
番組情報
クレイジージャーニー
毎週月曜よる9時から放送中