【裏側】『DCU』海上保安庁の潜水士には厳しいルールがある!?

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TBSで放送中の日曜劇場『DCU』は、水中の捜査に特化した架空の組織「DCU(Deep Crime Unit)」を舞台にしたオリジナルドラマ。水にまつわる事件・事故とそこに隠された謎に迫るウォーターミステリーだ。「DCU」は海上保安庁に設置された組織であり、海上保安庁の各エキスパートが所属している。これまでも新名(阿部寛)や瀬能(横浜流星)が水中に潜るシーンが何度も描かれてきた。前回の記事では、海上保安庁について紹介したが、今回は潜水士がどのような仕事、訓練をしているのか紹介する。

海上保安庁の潜水士は規則により120メートルも潜れない

第1話では新名と瀬能が湖に潜り、殺人事件の決め手となる遺体を発見。第2話でも事件の証拠を探すため、海に潜るシーンがあった。そこで前回、海上保安庁の仕事について聞いた元潜水士で特殊救難隊、潜水教官まで務めあげた政策評価広報室の吉田健二氏に潜水士の仕事について聞いた。

――海上保安庁における潜水士の仕事について教えてください。

潜水士は全国22隻の潜水指定を受けた巡視船艇で業務にあたっています。主な業務は転覆した船舶や沈船した船に取り残された方の救出や、海上で行方不明になった方の潜水捜索です。

「DCU」のメンバー「DCU」のメンバー

――第1話では新名と瀬能が湖で120メートルも潜るシーンがありました。実際にそのような深さまで潜ることはあるのでしょうか?

海上保安官の潜水士の潜れる深度は部内規則で決まっています。潜水士は40メートルまで。また潜水士とは別に特殊救難隊という海難救助のスペシャリストがいます。その特殊救難隊で深度60メートルまでです。「DCU」が取り扱うリブリーザーという潜水器を使用すれば120メートルまで潜ることは可能だと思いますが、海上保安庁の潜水士や特殊救難隊は、規則上、120メートルもの深度まで潜ることはできないのが実情です。

――今お話にあがった特殊救難隊についても教えてください。

特殊救難隊は火災を起こした危険物積載船に取り残された方の救助や、荒天下で座礁船に取り残された方の救助等、高度な知識・技術を必要とする特殊海難に対応します。37名で構成され、主に航空機を使用し、全国各地の海難に対応します。

――どうすれば、海上保安庁の潜水士になれますか?

そもそも海上保安庁に入庁していることが前提ですが、潜水士になるためには、部内研修の一つである潜水研修を修了すること、潜水士国家試験に合格することが必要です。志願する方の中にはダイビング経験のない方、まともな水泳経験のない方も多くいます。私もそうでしたが、水の経験はなくても大丈夫です。『DCU』をご覧になって、海上保安庁の潜水士を目指す方が少しでも増えてくれるとうれしいです。

――潜水士の方は、普段どのような訓練をされているのですか?

海が舞台ですので、体力はもちろん、泳力の強化訓練を行ったり、海難事案を想定した技能の維持強化訓練などを行っています。海上では風だけではなく波や潮流など自然環境の影響を受け、状況が刻一刻と変化することが多いです。「DCU」の第1話のダム湖での潜水シーンにおいても湖底で新名隊長が「水に聞いている」と言いながら手に取った砂が水流により流れる様子を確認したり、水流で穴窯の蓋が揺れ動くことで発する「音」を手掛かりに遺体を発見する場面がありました。流れは水深や地形によって変わることがありますし、海上においては潮の満ち引きによっても変化します。また、音は空気中と比べて、水中では早く遠くまで伝わりますので捜索における重要な情報の一つです。例えば潮流の強い場所で沈没船を想定した訓練では、潮流は常に変化しているので流れが弱まるときを狙って潜水し、船体を叩いて音を出し、船内に取り残された生存者からの反応音があるか確認します。このように自然環境を受け入れながら、利用して柔軟に対応できるよう訓練を実施しています。

海に潜る新名海に潜る新名

――潜水士としての心得はありますか?

「海という不確実な環境下で自己の確保を切らさない」―これが鉄則です。刻一刻と変化している自然環境の影響を受け、海難の現象も変化していきますが、これらの状況下において、自分の確保を切らさないことが大前提です。生きて帰ってこなければなりません。当たり前ですが、水中で空気がなければ生命を維持できません。この異常環境下で自分自身の生命を確保した上で、他者の生命や財産を保護する業務です。高い自己及び他者の確保能力が求められます。

日ごろから厳しい訓練を行う潜水士たち、そして海上保安庁の活躍により、日本の海の安全は守られていることがインタビューでわかった。一方、本編では北能登での殺人事件から、予想もしない展開に広がりを見せている。第4話では、隆子(中村アン)の死により、新名は「DCU」の隊長から外されてしまう。そのとき、新名はどう動くのか。衝撃のシーンが続く今後を楽しみにしていただきたい。

【吉田健二氏プロフィール】
特殊救難隊、潜水教官、巡視船勤務等を経て、現在は海上保安庁 総務部政務課 政策評価広報室 広報企画係長。

■番組概要
〔タイトル〕

日曜劇場『DCU』
〔放送日時〕
毎週日曜よる9時~9時54分
※第3話は15分拡大