毎週日曜よる9時、TBSで放送中の鈴木亮平主演の日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』。最新の医療機器とオペ室を搭載した「走る手術室」で、危険極まりない重大事故・災害・事件の現場に駆けつけ、“一人も死者を出さない”ために奮闘する救命救急チーム“TOKYO MER”の活躍を描く本作。今回、家族を大切にし、穏やかな性格からメンバーを温かく見守るチームのパパ的な役割を担う⿇酔科医・冬木治朗を演じる小手伸也にインタビューし、本作の魅力や演じる上で意識していることなどを聞いた。
手術シーンでの連携は回を重ねるごとに格段に上がってる
――冬木を演じる際に意識していることを教えてください。
MERというチームの中で最年長というポジションで、キャラクター紹介にも“パパ的な存在”とあるので、最年長ならではの落ちつき、安定感を意識してます。僕だけ40代後半ですし、縁の下の力持ち的な役割なのかなと。僕は割とエキセントリックな役を演じることが多いのですが(笑)、今回はとにかく落ち着いて安心してみられる人物像ということを念頭に、できるだけ控えめに控えめにやらせていただいてます。冬木はグイグイボケたり、変なアドリブをしたくなる衝動も少ないキャラなので、監督や共演者の無茶振りに対して面白いこと言わなきゃみたいなプレッシャーもなく、程よい距離感で参加させていただいてるので、とても心地が良いです(笑)。
あと最近、SNSのフォロワーさんもリアル麻酔科医の方や医療従事者の方が増えていたりして、すごく注目していただいてるのを感じるんですけど、麻酔科は人手不足という声も聞いており、僕が演じる冬木を見て興味を持ってくれる方が増えたらいいなと思っています。
――ご自身との共通点はありますでしょうか?
役作りする時は自分との共通点を探すことを大事にしてるのですが、今回の冬木さんは本当の素の僕とすごく近しいところにあるなと思っていました。僕自身はあそこまでの人格者じゃありませんが(笑)。メンバーみんな仲良くて、亮平さんと賀来(賢人)くんはよく2人で体作りの話をしてたり、中条(あやみ)さん、菜々緒さん、フォンチーさんたち女子3人組が本当に仲が良くてずっと一緒にいて、3人で楽しそうに佐野(勇斗)くんをいじって、それを僕がニコニコ見ているみたいな(笑)。そういった現場での状況がそのまま劇中のキャラクターに反映されている感じがします。
――キャスト陣のチームワークは撮影の開始当初と今で変化を感じられるところはありますか?
クランクインが喜多見チーフのマンションにみんなで遊びに行くシーンだったんですけど、その段階でもう既に打ち解けていたと思います。医療リハなどを事前にやっていたのもあると思うんですが。気心知れている感じで、すごくバランスの良いカンパニーだなと最初から思ってました。だからどんどん仲良くなっていってるという感覚ではないんですけど、手術シーンでの連携は回を重ねるごとに格段に上がってると思いますね。
正直実は、1話、2話のときまでは手術シーンだけのリハーサル稽古が出来ていたんですけど、3話以降は出来てないんです。代役の方がビデオで撮ったものを事前に拝見して、収録当日にもう1回目の前でやっていただき、本番に挑むみたいな形なんですけど。ビデオ見ただけでそれぞれが何をやるかみたいなことがもうみんな把握できるようになっていて、チームとしての連携が素晴らしくて話が進むごとに高まっている感じがします。
――キャスト同士で「ここをどうしよう」というような相談が多くされている感じなんですね。
そうですね。みんな動き方とか積極的に自分から提案してるんですが、亮平さんは特に。みんな分らないことは医療監修の先生に逐一質問をして「ここはこうした方がいいですね」ということをすぐ実践するようにしてますし、それで「はい、わかりました」とキャストが手術シーンを一通り流れで再現できるチームってすごいなとも思います。僕も麻酔科医としての仕事が体に入っていくにつれて、自分が使いやすい機器の配置とか、医療監修の先生に確認すべき点とかが分かるようになってきて、亮平さんに負けてられないなと思って頑張って勉強しています。先日、手術シーンをやっているときに、亮平さんが医療監修の先生に「この状態だと患者さんの意識はある状態ですかね」と質問したのに対し、思わず僕が先生よりも早く「ないです」と言っちゃったんですけど、ニヤリとした亮平さんに「ノッてきましたね」と言われたときは、なんか少し嬉しくなりました(笑)。もう現場ではみんなに小手さんと呼ばれるより、冬木先生と呼ばれる方がしっくりくるんですよね、僕の中で。
――毎話大変な撮影の連続かと思いますが、撮影の中で特に印象に残っていることは?
今まさに怒涛の撮影中で、毎回スケール感の大きい撮影で大変なこともあって、あれが一番大変だったなと振り返るような余裕がないのですが(笑)、初めてERカーを見た瞬間の興奮は今でも印象に残ってますね。ガレージに駆けつけて、ERカーが止まってるのを見て、7人でこの車に乗って任務を全うしていくのかと思ったら感慨深くて。その瞬間に沸き上がった感情は今でも大事にしています。本当に8番目のメンバーぐらいに思っていて、これからもこいつと一緒に闘っていかなきゃなという気持ちがあります。
冬木先生は喜多見先生たちみたいにそこまで外に出ることはなくて、ERカー内の手術室が主戦場なんですよね。患者さんの状態を聞いて、オペ室で準備して待ってることが多いので、冬木先生の第二の居場所として、多分徳丸くんの次くらいには思い入れがあります(笑)。
――改めて、小手さんが思う本作の魅力は?
本格的な医療シーンがものすごいスピード感で描かれているというのは、本当に引き込まれますよね。ドラマならではのフィクション性はあるにせよ、実際の医療従事者の皆さまに対するリスペクトの意味でも、ケレン味と同じくらいリアリティーも重視しているので、医療関係の描写は特に気合を入れています。手術シーンではやはり花形である喜多見先生や音羽先生がメインになってくるんですけども、比奈先生や冬木先生、夏梅さん、ミンさん、徳丸くんがサポートして、画面に見えないところでもみんな常に何かをやってるんです。映らないからいいやじゃなくて、みんな本気でやっていて、そうすることでリアリティーのあるシーンにできていると僕らは思って一生懸命やってます。
――本作に参加したことで、俳優として成長を感じる部分はありますか?
麻酔科医って縁の下の力持ちなんですよね。患者さんの心拍とか呼吸、血圧などの数値を見ながら、麻酔ガスや酸素量を調節して輸血のスピードを上げたり。画的には地味なんですけど、でも、実はそれがあるから執刀医は術野に集中できる、手術全体が成り立っているっていうところがあって。そういう縁の下の力持ちという意味においては、バイプレーヤーの役割とすごく似てると思うんです。メインの人がちゃんと仕事ができる、作品を一層魅力的に見せるということに対して全力でサポートして、自分の役割を全うするために最善を尽くすというような。
変な言い方ですけど脇に徹することの美学みたいなものというのが、今回の麻酔科医の仕事というものと相まって、自分のバイプレーヤーとして存在感を再認識することができたんじゃないかなと思います。こんな役者でありたいなということを、冬木から学ばせてもらってるところはすごい多いです。そういったバイプレイヤーの矜持をこのドラマの中にしっかり反映させることができたら、またもう一皮ぐらい剥けるのかなとも。…なんか、根っからバイプレーヤーみたいな言い方になっちゃってますけど、何か機会があればメインもぜひやってみたいです(笑)。
――第6話の見どころを教えてください。
6話は山中で遭難者が多数出てTOKYO MERが駆け付けるんですけど、現場でバラバラになって救助作業をしていくことになります。これまでMERのチームワークは喜多見チーフが起点となっていて、チームには常に欠かせない存在なのですが、今回バラバラになることで個々の力が試される展開となっています。
そんな中で、冬木先生が今までとは考えられない切羽詰まった感じになっています。冬木先生の個人的な事情に踏み込んだ内容になっていて、とても不安定な精神状態になっているのですが、その中で冬木先生がどう頑張っていくのか見ていただけたら嬉しいです。
■番組概要
[タイトル]
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』
[放送日時]
毎週日曜よる9:00~9:54