「スタートアップ」が未来を創る――。話題のスタートアップや、イノベーティブな起業家をいち早く取り上げる「ビジネスにスグ効く」経済トークショー『日経STARTUP X』。PlusParaviでもテキストコンテンツとしてお届けする。
古着から取り出したエタノールで映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する車「デロリアン」を走らせ、再生ペット樹脂からおしゃれな高機能Tシャツをつくる。日本環境設計は独自のケミカルリサイクル技術で世界の先端を走るスタートアップだ。岩元美智彦会長のモットーは、「楽しいリサイクル」。誰もが参加したくなる仕組みをつくることが、持続可能性のある循環社会の成立に不可欠と説く。その数々のアイデアを披露してもらった。
瀧口:こちらのお写真ですが、乗っていらっしゃるのは岩元会長ですか?
岩元:私です。
瀧口:ちょっと雰囲気が変わられた感じがしますね。
岩元:今ダイエットしていますので、これは一番体重が多い時ですね。
瀧口:これはあの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンですか?
岩元:はい、映画仕様です。
瀧口:なぜそれに乗らているんですか?
岩元:皆さんのいらない服を使ってデロリアンを動かしたいなと思いまして、わざわざアメリカから買い付けて持ってきました。これは持ってきた当日の写真ですね。成田空港の倉庫で乗っています。
奥平:飛行機で持ってきたんですか?
岩元:そうです、空輸です。
奥平:大変でしたね。
岩元:持ってくるだけで600万くらいかかったんです。すごく周りから怒られちゃって。
瀧口:車を服で動かすというのはどういうことですか?
岩元:弊社は当初、服からバイオエタノールを作る技術開発をしていて、工場も持っているので、その技術を世に知っていただこうと思い、この企画を考えました。
瀧口:なぜデロリアンを走らせようと思ったんですか?
岩元:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の映画は見たことありますよね?1は30年前の過去に行って、2は30年後の未来に行くんですが、その時のエネルギーがゴミだったんです。
瀧口:そうでしたっけ?
岩元:そうなんですよ。ゴミで車を動かしたらすごいなと思いまして。服のリサイクルをしてエタノールを作る。それはゴミじゃないですか。これでデロリアンが動いたら世界がびっくりするんじゃないかなと思いまして。それで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンにターゲットを絞って交渉したわけです。
瀧口:なるほど。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界が現実になったわけですね。
岩元:そうなんです。あの人気のある『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアンを本当に動かしたベンチャーがいるというだけで全然違うんです、世間の目が。
瀧口:これは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』世代の奥平さんからすると。
奥平:世代なのかな(笑)。たしかにゴミという話はSFの世界を実現していますね。
岩元:そうなんです。すごかったですよ。東京・お台場で走らせるイベントを行ったんですが、たくさんの人が衣類を持ってきて参加して、たくさんの人が一緒にカウントダウンをしたんです。(『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』で主人公たちが到着した未来である)2015年の10月21日夕方4時29分。アメリカのユニバーサルの公式イベントとして日本で行うことができ、一気に知名度が上がりました。これもビジネス上ではすごく大事なんです、ブランディングとして。
奥平:600万円の空輸費は元が取れましたか?
岩元:そうですね。いろいろ怒られましたけど・・・イベントの日程が決まっていましたので、飛行機しか間に合わなかったんです(笑)。
瀧口:でもやって良かったってことですよね。
岩元:良かったです。リサイクルって興味のある人だけが参加していたり啓蒙していたりするんですけど、循環型社会はまだできなかったんです。残りの95%と言われる環境に興味のない人を動かさない限り、循環型社会はできないんじゃないかと思ったんです。
そこでキーワードを『"正しい"を"楽しい"に』としました。正しいことをずっと言うよりも、正しいことを楽しいに変換すればみんなが参加してくれる。リサイクルも進んで、楽しいが正しいになったら循環型社会ができますね、という仮説を立ててデロリアンを動かそうということになったんです。