【ネタバレ】文句なしの最終回!『ラストマン』が迎えた涙と笑顔のフィナーレ

公開: 更新: PlusParavi
【ネタバレ】文句なしの最終回!『ラストマン』が迎えた涙と笑顔のフィナーレ
【ネタバレ】文句なしの最終回!『ラストマン』が迎えた涙と笑顔のフィナーレ

「護道さんは今よりももっと辛い現実を突きつけられることになるかもしれません」

そう皆実広見(福山雅治)は予告していた。41年前の真相が明らかになったとき、護道心太朗(大泉洋)は何を知るのか。

ラストマン-全盲の捜査官-』最終回は、何度も何度も涙がこぼれ落ちる、感動のフィナーレだった。

清二に手錠をかけることが、心太朗の「辛い現実」だった

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「護道清二、殺人教唆の容疑および殺人未遂の現行犯で逮捕する」

そう告げて、心太朗は清二(寺尾聰)に手錠をかけた。父・鎌田國士(津田健次郎)が獄中の身となってから、ずっと自分を育ててくれた人だった。事件によって心に深い影を落とした心太朗は、なかなか清二のことを父と認めることはできなかった。清二とも、兄・京吾(上川隆也)とも自ら距離を置いた。

それでも、護道の家柄を守るように自らも警察官となった。人一倍悪を憎む気持ちは、人殺しの父に対する憎しみであると同時に、自らを正義の一家である護道家の一員であることを証明する唯一の拠り所だったのかもしれない。心太朗にとって、清二は正義の象徴だった。

その清二が、鎌田に罪をかぶせた張本人だった。幼き皆実(柊木陽太)を守るため、若き清二(奥野瑛太)は誠(要潤)を手にかけた。皆実と心太朗の幸福を保証することで、その罪を鎌田に着せた。心太朗を引き取ったことは、刑事としての正義感でもなければ、人としての同情でもない。自分の保身のためだったのだ。

「いつかは正義の人になれるんじゃないかと思って必死になっていた私を、あなたはどう見てたんですか。不憫なやつだと思ってたんですか。それともずっと腹の中では笑ってたんですか」

責め立てる心太朗の胸中を、「違うだろ。そんなんじゃないってことはお前がいちばんよくわかってるんじゃないのか」と京吾が思いやる。つい怒りが湧いてしまうのは、清二との温かい思い出が息づいているから。どんなにひねくれ屋を装っても、愛された記憶は嘘をつかない。心太朗にとって、清二はまぎれもない父だった。

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だからこそ、そんな清二に手錠をかけることが、心太朗にとっては「辛い現実」だった。刑事にならなければ、こんな苦しみを味わうことはなかったのかもしれない。でも、清二に憧れたからこそ、自分は刑事の道を選んだ。そして、その人が「立派な警察官になったなあ」と優しい眼差しで認めてくれた。

この人を許せない気持ちと、この人に育てられたことを誇らしく思う気持ち。相反する2つの気持ちがぶつかって涙となって溶け出す。大泉洋、渾身の名演であり、つられて視聴者もむせび泣いてしまう名場面だった。

津田健次郎と大泉洋が生み出した「腹減ってないか」の名台詞

名場面はまだ終わらない。

皆実と心太朗は、鎌田と勢津子(相武紗季)から生まれた本当の兄弟だった。そんな真実が明らかとなり、今、まもなく命の火種が尽きようとしている鎌田が病床から心太朗に向かって声をかける。

「腹減ってないか、心太朗」

幼い頃からずっと大好物のオムライスを食べさせた鎌田だから言える、父から息子への言葉だった。もうフライパンなんて握れないのに、息子に何か食べさせてやりたいと思う。41年もの時を隔てているのに、息子の空腹を案じる。それが親なのだ。それが、鎌田國士という男なのだ。この一言だけで、心太郎と鎌田の父子関係が見えてくるようで、火がついたように瞼が熱くなる。

絞り出すように吐き出されたしわがれた声は、まさに今際の際を迎えた者のそれであり、艶やかな普段の津田健次郎の声質からは想像がつかない。その変幻自在な演技に圧倒されると同時に、津田本人のインタビューによると、もともと台本上では"うわ言を言う"としか書かれておらず、あの「腹減ってないか」が現場で大泉と津田が相談しながらつくり上げたものだと言う。

役の背景を考え抜き、どうすればより心情を伝えられるかを突きつめる本物の役者2人が揃って生まれた名場面だった。そんな役者の熱演に応えるように、クライマックスは33分間、CMを挟まずに放送し続けるという連ドラとしては異例の構成をとった。これにより、視聴者もさらに作品世界に没頭できた。

いい脚本、いい俳優、いいスタッフ。三者がベストを尽くし合うことで生まれた、まさに至高のクライマックスだった。

肉じゃがの味が、家族のいない寂しさから皆実を解き放った

寺尾聰、上川隆也、津田健次郎という実力派がドラマを盛り上げる中、ラストを飾ったのはやはり福山雅治と大泉洋の最強バディだった。

空港での別れのシーン。「このときを心待ちにしていました」という第1話の台詞をエンディングに持ってくる展開は、ある意味お約束。でも真骨頂はそこではない。

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第2話のラストに盛り込まれた肉じゃがに関する何気ないやりとりが、2人が実の兄弟である伏線だったこと。そこから、幼き兄弟と鎌田、勢津子の4人が賑やかに食卓を囲む場面を挟むことで、さらに感動が盛り上がる。

「父と、母と、私と、あなた。家族4人で食卓を囲んだときがあったんです。きっとあったんです、穏やかで幸せなときがあったんです」

涙なんて一度も見せなかった皆実が、泣きながら「あったんです」と繰り返す。多くの人に愛され健やかに育った皆実だけど、家族を失った寂しさを忘れたことなどなかった。どんな難事件も解決する無敵のラストマンの中に、家族が恋しい幼い自分がずっと膝を抱えていたのだ。

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その寂しさからようやく解き放たれた。皆実にもまた家族ができた。そのことがうれしくて、もう出し切ったと思っていた涙がまた溢れ出た。

いいドラマとは、いい最終回とは、こういうものだと思わず喝采をあげたくなる。物足りなさやモヤモヤを一切感じさせない、正真正銘の大団円だった。

何年かかってもいい。またこのメンバーで続編を!

『ラストマン』では終盤から「正義」という言葉がしきりに飛び交うようになったけど、その「正義」に決着をつけたのは、泉(永瀬廉)だった。ずっと「大人になりなさい」と言い続けていた京吾が、「お前のそのバカ正直さでどこまで辿り着けるのか。正々堂々戦っておいで」と泉の肩を抱く。正義を貫くためには時に悪に手を染めることも必要だと思っていた父が、初めて息子を信じた瞬間だった。

綺麗事と言われようと、理想論と軽んじられようと、まずは自分の信念を貫かなければ、未来は変えられない。若き泉は、本作における希望だったのだと、この最終回で改めて明示された。

そんな泉と吾妻ゆうき(今田美桜)の恋愛未満関係も微笑ましく、サイドキャラクターがただの背景化しない作劇が気持ち良かった。きっと心太朗と佐久良円花(吉田羊)も少しずつまた時計の針を進めていくことだろう。馬目(松尾諭)さんには悪いけど。

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そんな彼らの未来を想像したくなる、今日もどこかで生きている気がする。愛着に溢れたドラマだった。続編の布石もバッチリ。ラストマンズから「またいつか帰ってきてもいいですか?」と聞かれたら、視聴者は得意げな顔でこう答えるはずだ。

「アグリーです」と。

(文・横川良明/イラスト・月野くみ)

◆放送情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
動画配信サービス「Paravi」で全話配信中。
(C)TBS

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