共同生活、集団行動に付き物である"ルール決め"が行われた『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京ほか)第2話。年齢も職業もバックグラウンドもライフスタイルも様々で、"不快ポイント"もそれぞれ違う6人全員にとって必要であり、誰の生活も大きくは制限しない"最大公約数"的なルールを見つけるのは至難の業だと言える。
"制限"は「集団生活において耐えなければならない必要悪」だと言うのは大庭桜(田中みな実)。安彦聡(増田貴久)にジャムの二度塗り禁止を言い渡すやり取りを見ただけでも、彼女はかなり神経質で完璧主義、自分のポリシーがしっかりとあることがわかった。
「これは私の・・・私だけのルール。他のみんなが守る必要はない。でも、そういう人がいるんだってことは知っててほしい。でないと集団生活は必ず破綻する」とはその時の桜の言葉だが、正にこれこそ共同生活、他人と暮らす際の極意かもしれない。「それぞれにルールがあるのよね。でも、6人それぞれがルールを主張し始めたらそれはそれで破綻するのよね」と、自身にも心当たりがあるかのようにこぼす桜に、彼女の結婚生活が透けて見えた。桜の場合、"集団生活"を"結婚生活、夫婦関係"に言い換えても良いかもしれない。
第1話で気絶してしまった聡に続いて、第2話では桜の不満や言いたいことが爆発し、もはや沸騰寸前のケトルのように息切れを起こしてしまう。流行の最先端を走りながら、ありとあらゆるジャンルの最新情報に精通し、頭の先からつま先まで気を配って完璧でい続けながら女性ファッション誌の編集長を5年以上も務め上げた桜。
そうまでして築き上げてきたキャリアやそのポジションと引き換えに得た結婚生活で行き詰まりを見せ、現在は離婚調停中。"私の何がいけなかったのよ・・・?"と一人静かに涙する桜の姿が目に浮かぶようだ。「こうまでして頑張ってたんだよ、私」と必死に訴える桜の姿は、なんだか悲痛で、きっと夫に言いたくても言えなかった「もっと私をちゃんと見てよ!」というような切実な本音の裏返しなのかもしれない。皆から"すごい"と尊敬されること以上に、"たった一人"の誰かに愛されたいと願った頑張り屋の女性の想いが満たされることはなかったのだろうか。
この6人の間で取り交わされたルールはたったひとつ「日曜の夜だけみんなでご飯を食べること」。話し相手がいないことを嘆いていた池上隆二(國村隼)らしい提案だ。無理して話す必要もない。どうしても難しい場合には参加必須ではない。生活しているうちに何か不具合が出てきた際には、この食事の場で話し合えば良いという当初には見られなかったフレキシブルさが一気に加わった"ルーザーズ"。ルールを破った時の担保が、人に知られたくない"秘密"というのが何とも彼ららしい。
そんなルーザーズが一堂に会した食事風景は何だかちぐはぐだが愛おしく、それでいて"しっくり感"も出てきている。そして何より6人の大人たちがなんだかんだどこか楽しそうに自分の居場所を見つけ始めている姿が眩しくもあり、観ているこちらまで嬉しくなってしまうのだ。
(文:佳香(かこ)/イラスト・月野くみ)
【第3話(4月25日[月]放送)あらすじ】
安彦聡(増田貴久)と大庭桜(田中みな実)は、望月舞(田島芽瑠)を3日ほど見ていないことに気づく。LINEも既読にならず、「部屋で死んでいるのでは?」と心配になった2人は、業者(宮崎吐夢)に鍵を開けてもらうが姿はなく・・・。そんな中、シェアハウスの近所で連続誘拐殺人事件が発生。しかも被害者は舞と年が近い女性ばかりだという。警察が発表した犯人像はなんと池上(國村隼)とそっくり。桜が名探偵ばりの推理を始めるが・・・。
◆放送情報
ドラマプレミア23『吉祥寺ルーザーズ』
毎週月曜23:06~23:55放送
地上波放送終了後、動画配信サービス「Paravi」にて配信