「かがくの里」母屋プロジェクト 隈研吾が設計する母屋のこれまでを一挙紹介【2024/5/12 所さんの目がテン!】

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「かがくの里」母屋プロジェクト 隈研吾が設計する母屋のこれまでを一挙紹介【2024/5/12 所さんの目がテン!】
「かがくの里」母屋プロジェクト 隈研吾が設計する母屋のこれまでを一挙紹介【2024/5/12 所さんの目がテン!】

5月12日(日)放送の日本テレビ「所さんの目がテン!」は、今年で10周年を迎えた長期実験企画・かがくの里における、2年に渡る「母屋プロジェクト」のこれまでを紹介しました。

かがくの里 日本で最も権威のある科学技術の映像祭で受賞

長い間、人の手が入っておらず荒れていた場所だったかがくの里。科学者や地元の方々が知恵と力を合わせ里山を整備。美しい里山となったこの場所には、多様な生き物も集まってくるようになりました。

そんなかがくの里が今年4月、日本で最も権威のある科学技術の映像祭「第65回科学技術映像祭」で部門優秀賞を受賞。かがくの里専任プレゼンター・阿部健一が授賞式に参加しました。

受賞したのは、フクロウの産卵から巣立ちまでを追いかけたドキュメンタリー映像です。「野生生物の驚きの生態と次世代を残すための無心の生き方を紹介。視聴者も思わす頑張れ、と言わせてしまうような心憎い作品になっていました」(審査委員長の日本科学技術ジャーナリスト会議理事 小出重幸さん)と高い評価をいただきました。

2年前から進んでいた「母屋プロジェクト」

そんなかがくの里で2年前から進んでいたのが、建築家・隈研吾さんが母屋の設計を手がける「母屋プロジェクト」です。

今年2月、隈さんがかがくの里に3度目の来訪。その時決まったのは母屋を建てる位置でした。

その際、里の達人・西野茂さんがイノシシ肉の串焼きを振る舞ってくれました。隈さんも「うまい!この肉うまいなぁ。こんなうまいイノシシ肉食べたことない。これはすごい。やっぱり脂がいいな。脂にも甘みがあって」と大絶賛。

そしていよいよ始まる母屋の建築。実は今まで、隈研吾建築都市設計事務所と、地元の職人さんたちは話し合いを重ね着々と準備を進めていました。

2023年6月、所ジョージが隈研吾建築都市設計事務所を訪ね、隈さんが設計したかがくの里に建つ茅葺きの家が発表されました。

隈さんのこだわりが詰まったデザイン。「(屋根の形は)一番、日を入れたい所をちょっとめくり上げて」「中に入ると、真ん中にドーンとした丸太(心柱)があって、そこから垂木が掛け渡されてきて、そこに茅が葺いている。茅の素晴らしさって裏からも見えている」とデザインを解説していく隈さん。

間取りについては、「右の方の玄関から入ってきて、まず土間。ちょっと一段上がったところに広間があって。四角ではなくて少しずつ形が崩れていて、それを柔らかい曲線の屋根が覆う。ある種、縄文時代の竪穴式住居の延長線上にあるのですよね。あれの現代版」と語ります。

一般的な家とはかなり違う造り。一体どうやって建てるのでしょうか?隈研吾建築都市設計事務所の設計士・草ヶ谷友則さんと平林航一さん、構造計算の専門家・日本女子大学 家政学部 住居学科・江尻憲泰教授と木材利用の専門家・京都大学 大学院 森林科学専攻 村田功二教授、実際に母屋を建てる「でか木の家」永和工務店棟梁・金澤良行さんとの間で、話し合いが何度も重ねられました。

デザイン発表の8か月前、母屋プロジェクト関係者が一堂に会し発表されたのが茅の内部を表した50分の1の骨組み模型です。

屋根を構成している材木は裏山の丸太を使う設計です。この屋根の骨組みに使うのは、約7mの丸太28本を想定。

屋根の丸太を中心で支えるのが、心柱と言われる約7mの2本の太い丸太の上に、棟木と言われる丸太をかけた鳥居のような形のもの。草ヶ谷さんは「不安定な構造になるのを円形にすることで、安定した、力学的な形状と考えております」と説明しました。

金澤さん率いる「でか木の家」永和工務店は創業41年と長く地元で愛されてきた工務店で、木材の扱いに優れ非常に美しい家を建てることで有名ですが、今回のような丸い形の家を建てるのは初めてだそうです。この日は、今後どうやって建てていくか図面と模型を元に整理することになり、一旦持ち帰ることになりました。

後日改めて集まり、3Dで制作した想定イメージを見ながら具体的に建てる上の懸念点を話し合いました。

骨組みについては、まず高さ7mほどの心柱の上に、棟木と呼ばれる太い丸太を乗せ鳥居のような形を作ります。

次に心柱と棟木を囲う壁を作ります。そこに棟木を削って垂木と呼ばれる、屋根の基礎となる丸太28本を乗せていき、つなぎ合わせる計画です。

しかし金澤さんには懸念が。一般的な住宅では、垂木はスペースを開け平行に設置するので職人さんが間に入り作業できますが、今回の垂木は長さ約7m、1本の重さは約215kgの丸太を円形に密に繋げます。非常に重く、人力では動かせない丸太と棟木を組み合わせるとき、スペース的にも作業ができないのではないか?という点です。

さらに金澤さんは「クセを取るのが大変」と、丸太の形に合わせて接合部を削る「しゃくり」についても不安視していました。通常は、工場で現場と同じ形で木と木を合わせながら加工するのですが、丸太は角材と違い重くてそれぞれ形が違うので難しいといいます。

その後、他にも足場をどうやって組むかという問題や家の基礎工事、屋根の葺き方など様々な課題を話し合うこと1年。心柱の上に乗る棟木が決まりました。それが直径約45cmの太い杉の木です。

この棟木に、垂木となる丸太の形に合わせた接合部を削る「しゃくり」。重い丸太でも工場で作業できるよう、平林さんは、棟木と垂木のデータを3Dにしてパソコン上に再現していました。

これには金澤さんも「すごいな平林さん!」と絶賛。これを展開図に起こしプリントアウトして木に貼り、作業を行っていくという想定です。

母屋の骨組みに使う木材集め

骨組みに使う木材集めでも様々な苦労がありました。2022年1月、「母屋プロジェクト」のスタート直前には、里の裏山の整備のため間伐した杉の木を隈さんたちに見てもらったところ母屋の材料に使えそうということで、切り倒した木の葉からゆっくり水分が抜ける「葉枯らし乾燥」という昔ながらの方法で乾燥させていました。

半年後の2022年6月。これ以上、山に置いておくと木が腐り始めるので、ある程度の長さに伐って運び出すことになりました。

伐った木をみんなで山から下ろし、地元の中野製材所で丸太のまま保存してもらうことに。この丸太を28本の垂木に使うつもりでしたが、垂木は今回最も作業が難しい場所で、できるだけまっすぐな方が工事がしやすいといいます。しかしかがくの里の間伐材は、裏山が長年整備されておらず光が入っていなかったことで、光を求めて伸びたせいで少し曲がってしまっていました。

そのためこの丸太は製材所でカットし角材に。母屋の床下や壁の中に入る柱など、色々な建材として利用することになりました。

一方、垂木に使う真っすぐな丸太については、金澤さんが知り合いの株式会社互光林業 小峰光之助さんを紹介してくれました。かがくの里から40分ほど離れた場所にある長年、間伐が続けられてきた整備された山。この程よく間引かれた環境では、太陽光をまっすぐ浴びた杉の木は真っすぐ育っています。

その中でも曲がりの少ない木を選んで伐ってもらい、葉枯らし乾燥し2か月後、約8mに切って中野製材所に運び込みました。

丸太のまま建材として使う場合、通常は高圧洗浄機などを使って皮を全て剥き乾燥させます。

ただ今回、垂木に使う丸太には隈さんのこだわりがありました。それは、できるだけ樹皮をつけたまま使いたいということ。樹皮を残すことで自然に森に溶け込む感じが出るといいます。ですが、樹皮がついたままだと乾燥が非常に進みにくいという問題があります。

そもそも建築に使う木はなぜ乾燥させる必要があるのか?村田先生と、木材乾燥の専門家・京都大学 森林科学専攻 研究員の山田範彦さんを、阿部が訪れました。

村田先生は「木材の中の水が抜けていってどんどん乾燥していきます。そうなってくると木材の変形が起こるのです。きちんと家を建てているのにその後でゆがんだり曲がったり反ったりしたら、ドアが開きにくくなったり」と解説。

山田さんは「一番は収縮すること」と木の収縮について話します。乾燥して水分が抜けていくと木は収縮します。すると、木が曲がったりねじれたりするので家を建てる前に乾燥させるのは不可欠な作業なのです。

阿部が葉枯らし乾燥ではダメかと聞くと、村田先生は「葉枯らし乾燥というのは原理的には、枝を残して葉っぱから(水分が)抜けてるってことですよね。あの枝に繋がってるのは、木の外側だけなんですよ」と、葉枯らし乾燥だけでは中心の色が濃い部分の水分が抜けないといいます。

さらに「樹皮がついたらもっと乾燥しにくい」「樹皮は木が立っている時に乾燥を防ぐためのもの」と村田先生。

しかしせっかくの隈さんのこだわり。皮付き丸太をどう実現するか村田先生たちが考えたのは、樹皮には、木を乾燥から守る外樹皮と樹木の生長に関わる内樹皮という2種類がありますが、乾燥を進めるために外樹皮だけを剥くということ。

通常、水圧バーカーなどを使い圧力で一気に両方の皮を剥きますが、今回は手作業で、できるだけ内樹皮を残すようにむいていくことに。

大工さんたちを中心に阿部はもちろん、隈研吾建築都市設計事務所の平林さん、番組プロデューサーもフル稼働し3週間かけて予備も含め40本の丸太の外樹皮をむき終えました。

続いて、この丸太の背中側に背割りといわれる切れ目を入れていきます。

こうしないと、水分が抜けて木が縮むときに色んなところが割れ、建材として使いにくくなるそう。また、乾きにくい中心部の乾燥が早まることが期待されます。

その他に心柱もかがくの里から伐りだして、母屋に使う全ての材木を天然乾燥よりも短時間で水分が抜ける農業用ハウスに入れて乾燥。

母屋の材料は他に、茅はもちろん茅葺き屋根の下地に使う細い竹も近所から集めるなどそのほとんどを、かがくの里周辺から手に入れています。

母屋を建てる場所も日当たりなど考えベストな場所を隈さんに決めてもらい、準備が整いました。ますます完成が楽しみです。