かがくの里10周年 生物多様性の側面からこれまでの道のりを振り返る【2024/2/4 所さんの目がテン!】

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かがくの里10周年 生物多様性の側面からこれまでの道のりを振り返る【2024/2/4 所さんの目がテン!】
かがくの里10周年 生物多様性の側面からこれまでの道のりを振り返る【2024/2/4 所さんの目がテン!】

2月4日(日)放送の日本テレビ「所さんの目がテン!」は「かがくの里10周年スペシャル」。前回に続き、10周年を迎えたかがくの里のこれまでの歩みを振り返りました。

カエルは里山において重要な生き物

2014年、里山再生と人と自然とのつながりを取り戻すことを目指して始まった長期実験企画・かがくの里。

10年前、最初にこの地を訪れた科学者は東京農工大学 農学部 シニアプロフェッサーの松村昭治先生。まず菜園を作る用意をし、田んぼに欠かせない水を確保するために穴を掘り、裏山を探してみると湧き水を発見。裏山から湧き水を引き込んで溜め池を作りました。

穴に水を入れただけの溜め池が後に多くの生き物を集めることになります。池を作って2か月、池にはオタマジャクシが泳いでいました。「ここに池ができたから産卵したんでしょう」と松村プロフェッサー。水辺ができたことで、カエルが卵を産み、オタマジャクシが登場したそうです。

カエルは里山においてとても重要な生き物。宇都宮大学 農学部 守山拓弥准教授は「カエルは農村の生き物にとって貴重かつ重要な役割を持っていて、いろんな生き物のエサになる。フクロウも、サギもイタチも(カエルを)食べる。一方で、害虫と言われているような作物に害をなす虫をカエルが食べるので、田んぼにとってカエルはありがたい」と解説。カエルは田んぼの食物連鎖で中間の位置にあり、生態系のバランスの要だそう。

しかし、カエルは地域によって絶滅が危惧されるまでになっています。さらに、守山准教授が調べたいと語るシュレーゲルアオガエルは、春から夏にかけて里の水辺で見かけることができましたが、冬眠する場所や期間などその生態の多くは分かっていないといいます。

守山准教授はここでカエルの生態を明らかにし、数を増やすことに役立てたいと現在調査を進めています。

かがくの里を始めて2年目には菜園に様々な作物が順調に育っていました。里を訪れた北里大学 海洋生命科学部 水族増殖学研究室 千葉洋明准教授が池の調査をするとクロスジギンヤンマのヤゴを発見。さらに、準絶滅危惧種に指定されているコオイムシや絶滅危惧種のタガメまで見つかりました。

池がいろいろな生き物の住みかになったことには、土に秘密が。池の隣の田んぼに土の栄養のため、たい肥を入れていました。

千葉准教授は調査のため、池と田んぼそれぞれの土を採取し水を入れて放置。水温が上がると大量のミジンコが発生。田んぼの土を入れた方にはホウネンエビというエビの仲間が見られました。千葉准教授は「これがたくさん発生すると、それだけ土の状態がいいから米の収穫量が上がる、縁起物として言われている」と話します。

水を張る5月頃から田んぼの水温があがり植物プランクトンが増え、それをエサにするミジンコやエビなどの動物プランクトンが増えます。田んぼと池は地下のパイプで繋がっているので、栄養豊富な田んぼの水が池に流れ込み、動物プランクトンを目当てにいろんな生き物がやってくるのです。

生物多様性が増す様子を残す「生き物図鑑」プロジェクト

このように里の生物多様性が増していく様子を記録に残そうと、「生き物図鑑」プロジェクトがスタート。

かがくの里を訪れた昆虫写真家・Tokyo Bug Boysの平井文彦さんと法師人響さんが池や水路を調査すると、ヒメゲンゴロウを発見。ゲンゴロウは今は数が少ないといいます。さらにシマゲンゴロウ、タイコウチ、ミズスマシなど、その後も貴重な昆虫を次々発見。

菜園の周りや裏山に夜のライトトラップを仕掛けると、ノコギリクワガタとミヤマクワガタがかかっていました。さらに、法師人さんが「ナマリキリガじゃん!」と驚きの声をあげました。「このキリガだけを求めて虫取りに出かける人たちが、狙っていっても取れない」という、とても貴重な昆虫です。

ナマリキリガは全国的に発見例が非常に珍しく、生態もよく分かっていない幻のガで、法師人さんは「このかがくの里の森の底力を思い知らされた」と感嘆。

こうした昆虫の発見を経て2022年に発売された「里山の生き物図鑑」は6度も重版される大ヒットとなりました。図鑑の発売後にも続々と新たな昆虫が見つかっており、昆虫たちの住処として作った「インセクトホテル」には、葉っぱを綺麗に切り取り巣材として巣に持ち帰るハキリバチの姿が。さらに、フクロウが巣立った後の巣箱を調査すると、猛禽類の巣以外ではまず見られないコブナシコブスジコガネを発見。図鑑に載せられていない、ニワハンミョウも発見しました。

さらに畑では、平井さんが「2022年にジュウシホシクビナガハムシを初めて里で見た」「普段野山を歩いてても見かけないのに、アスパラガスを植えた直後から生まれて初めてその虫をここで見た」といいます。

「かがくの里ではいろんな作物を作っていて、毎年作るものが変わって、毎年違う害虫がいる」と株式会社地球工作所の斉藤秀生さん。多種多様な実りがある菜園であることが昆虫の多様性につながっているようです。かがくの里ではこれからもおいしい野菜を作りながら、豊かな生態系を守っていきます。

フクロウは生態系の頂点

この10年、小さな生き物だけでなく大きな生き物もやってきました。

2015年、里に現れた最初の大きな野生動物はイノシシでした。この頃、畑を荒らすイノシシの被害に悩まされていたかがくの里。「茂った森ではクマもイノシシも安心して人里に降りてくるので、間伐をしてほしい」と長岡技術科学大学 野生動物管理工学研究室 山本麻希准教授。

そこで林業家の西野さんも加わり裏山の間伐が始まりました。その後、森が明るくなったことでイノシシの被害は激減。日の光も差し込むようになった裏山に注目したのは守山准教授。「(かがくの里は)木と木の間がすごく空いている。手入れをしていない森だと小さな木がボサボサっとあって鳥が飛ぶスペースが少なくなる。環境としてフクロウが住んでてもおかしくない」と考察し、フクロウプロジェクトが始まりました。

その目的を守山准教授は「フクロウは生態系の上位種、生態系の頂点。こういった種類をアンブレラ種と言います。フクロウが減ってしまうとフクロウの餌であるネズミなどが増えてしまって、そういったものが食べている植物の種子が減っていってしまう危険性がある」と解説。

フクロウは普段巣を持たず木の枝などにとまって過ごしているのですが、繁殖期には、樹洞という木の空洞を巣として使い子育てをします。しかし樹洞は古木に多く、比較的新しい里の裏山にはありません。そこで西野さんの協力のもと樹洞の代わりとなる巣箱を作り設置し、24時間撮影出来る赤外線カメラで観察することになりました。
 
2021年6月、この巣箱にやってきたのはムササビ。その後、長距離を滑空するダイナミックな姿の撮影に成功。ムササビが現れるようになったのは、エサとなるドングリなどが豊富にあるからと考えられます。

また、ムササビも樹洞を巣として使う生き物のため、西野さんはムササビ用に底を深くした巣箱を作り設置。すると約1年後、再びやってきたムササビは巣箱の中へ。すると数日後出産。出産後には母乳を与える姿や子どもたちを抱きしめ、毛づくろいをし、夜になると元気に動き回る赤ちゃんに対し、ぐっすり眠るムササビママの姿などかわいい姿を見ることができました。

さらに、この巣箱にはキツツキの仲間のアオゲラも訪れました。アオゲラはエサをとるために木に穴を開けるのですが、それが樹洞になり他の生き物の住みかになることから生態系に及ぼす影響が大きい、キーストーン種と呼ばれる大事な種です。

そして、地域によっては準絶滅危惧種に指定されているサンコウチョウも発見。夏に繁殖のため日本にやってくる渡り鳥で、里近辺で暮らしていました。かがくの里は、昆虫などのエサとなる生き物が豊富なため、それを捕食する哺乳類や鳥類がやってくるのです。

フクロウが巣で産卵するところはなかなか映像で確認することはできませんでしたが、ついに巣箱につがいのフクロウがやって来て、昨年3月に産卵を確認。メスのフクロウはほとんど巣箱を出ることはなくなり、オスのフクロウがメスのエサを持ってくる役目を行い、産卵から29日後には孵化したヒナの姿を確認しました。

メスフクロウが持ってきたエサを食べすくすくと成長したヒナは、 孵化から1か月後巣立ちの時を迎えました。

このように、多種多様な生き物がいて生態系のバランスが保たれていることを確認できているかがくの里は、昨年「自然共生サイト」に認定されました。自然共生サイトとは、民間などの取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定するもの。今後も、ますます自然豊かな里山になるよう取り組みを続けていきます。

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