<コラム>『新宿野戦病院』がん治療を拒む男を説得すべくSMルームへ呼び出し、鞭で叩き、毛筆で耳裏を弄ぶ…これぞ新しい医療ドラマ!

公開: 更新: めざましmedia
<コラム>『新宿野戦病院』がん治療を拒む男を説得すべくSMルームへ呼び出し、鞭で叩き、毛筆で耳裏を弄ぶ…これぞ新しい医療ドラマ!

 

<コラム>『新宿野戦病院』第6話

前回の第5話が、あまりにも本格社会派医療ドラマ的でありながら(ホームレスの命と国会議員の命、どちらを優先させる?というエピソード)、そっから見事にすかしてくる(ホームレスのシゲさんを救おうとするも亡くなってしまったのに「(偲ぶのは)医者の仕事じゃねー!」と突き放す)という、まさに、この、『新宿野戦病院』でしか描けない!!新しい医療ドラマの誕生!!ブラボー!!という気分だったのに、今回の第6話は?というと…。

妻を病気で亡くし、医師を信用できなくなってしまった男(高峰啓三:生瀬勝久)が、がんに罹患してしまう…。治療を拒むその男を説得するため、主人公たちは、彼をSMルームへ呼び出し、鞭で叩き、亀甲縛りを施し、毛筆で耳裏を弄び、やがて彼は了承、無事手術は成功するのだった…。

って、うん、マジで、どういうあらすじ!?!?

あらすじの、冒頭=「医師を信用できない男を説得」と、その結論=「無事手術は成功する」自体は至極普通。普通っていうか、あたりまえ、そうせざるを得ない展開、なんだけど、間になんでか挟まっちゃってる「SMルーム」(って言い方合ってんのかな?)に「鞭」に「亀甲縛り」に「耳裏」ってさ、うん、マジのまじで、どういうあらすじなの?!!?。

いや、まずね。うん、まずね。妻でも家族でも、病気の発見が遅れたことを誰かのせいにして、医師を信用できなくなってしまって「自分は医者にはかからない!!」っていう、そういうエピソード、具体的には思い出せないんだけど(おい!)、どっかで見たことがある(よね?)、そんな気がしてならない、まさに医療ドラマあるあるのエピソードだと思うわけ。

で、ましてや、その医者嫌いの男=啓三ってのは、前回ラストの “引き”でもある、主人公の大きな秘密=ヨウコ(小池栄子)が医師免許を持っていないという事実を握る人物、なわけだから、そんな大きな弱みを握る男を、握られている側が救うことで、両者が救われる…。

そんな展開へ、持っていくには、絶好のシチュエーションだし、用意周到なエピソードの準備だと思うの。だけどだけど、なぜかそこに、SMが挟まちゃって、鞭だのなんだのの、その挙句、(耳裏関連で)「親子ですねぇ?」ってさ、ねぇ!?どういう、どういう、あらすじなの?!

しかも、なんなら、その医者嫌いの男に、説得を試みた主人公たち、ってのは、一人は嬢王様に扮してて、もう一方(高峰享:仲野太賀)は、自分の父が嬢王様に弄ばれている姿を遠隔リモートで眺めて指示出してるだけ…ってさ。

医療ドラマとして肝心な、っていうか医療ドラマには絶対不可欠の、むしろその部分を、ドラマ上では大きなヤマ場にするべきはずの、治す行為=手術シーンは一切なし、ってさ。

主人公2人は、無免許と美容皮膚科とはいえ、一応、医師、だってのに、手術すらしてないからね!?超肝心の“オチ”である「手術は成功する」には、主人公たちは一切関わっていなくて、なんでか、その「説得」の部分に、「SM」を持ってきて、それに、全力で、時間を割く、ってさ、うん、マジで、どういう、あらすじ(しつこい)…いや、このドラマ、新しい医療ドラマの誕生!!!だよね!!!(結局)

いや、でも、医療ドラマ=手術が基本だとすると、今回は医療ドラマ的な部分はほぼないから、今回は、ブラボー!!は、自粛しとくか(なんで!?)。

このドラマのいいところは、とてつもない“爆弾”を、いとも簡単に、あっさり、平然と処理するところ!!!

はい。というわけで、前回があまりにも感情のバイオリズムが激しくて、かなり医療ドラマ寄りな内容だっただけあって、今回はそれより違う一面を見せて、バリエーションを増やして、作品としての深みを増そう…という、そういう意図すら感じられる、長い連ドラの中にある、ある意味、箸休め的な回にも思えたんだけど、描かれるエピソードの中心が「SM」ってさ、よる10時のプライム帯に放送していいのでしょうか?(誰に!?…いやでも、物語の中心が「SM」ってのは曲解ですね)いろんな意味でハラハラしちゃいましたよ。

だけどだけど、そうは言うけど(僕が)、今回のお話も、ドント・シンク・フィール(考えるな、感じろ)の精神で言うならば、取り上げられた事象はちょっぴり過激かもしれないんだけれど、そこで描かれるのは、親子愛(と夫婦愛)なわけだから、総じて、オッケー!変形ハートウォーミングってことで、総じて、オッケー!っていう、そういう、ことで、オッケー、ですよね???(だから誰に!?)

んで、このドラマのいいところは、ドラマ内に散りばめられた、とてつもない“爆弾”を、爆弾を爆弾とも思わないで、いとも簡単に、あっさり、平然と処理するところだよね?(急に)

例えば、今回のお話の肝…、いやこのドラマ全体の肝といっていい、ヨウコの出生の秘密問題ですよ。

これって、もっと引っ張って、ドラマ的にももっと劇的に描いていいはずなのに(はずきさん:平岩紙のエピソードは劇的ではあったけど、あれを経て、もっと劇的な展開があると思うじゃん?)、実はヨウコは、最初から気づいてた…とか、舞(橋本愛)の“秘密”についても、ここまで、第6話まで、引っ張ったともいえるけど、ここまで引っ張ったのに、結構あっさり享に知られて「オヤジでも、ぶたれたことあるのに!!」という超パワーワードで茶化しちゃうとかさ、その辺のさじ加減がとてつもなくスマート!!

僕の大好きな作品に、山田太一先生の『ありふれた奇跡』(2009年/フジテレビ)ってのがあるんだけど(またしても急に)、そのドラマでは、主人公2人のお父さんが、実は女装の趣味=秘密を持っていて、その秘密が最終回まで誰にもバラされない…っていうお話があるんですよ。

で、それについて、宮藤官九郎さんが山田太一さんとの対談の中で触れていて、最後まで秘密をバラさないことに対して、すごく感心をされていたんです…。それを思いだしたわ…(急にね)。

だって、この“秘密”の描き方、一方はあっさりバラして、一方は最後までバラさないという、対照的、ではあるんだけど、そのどちらにも共通するのは、スマート!!!ってこと、僕は、勝手に、宮藤官九郎さんに、山田太一イズムを感じました!!ありがとう!!(うん、だから、誰に!?)