福島とウクライナの真実を照らすアート マリコ=ゲルマン 戦火の祖国への思い

公開: 更新: カンテレTIMES
福島とウクライナの真実を照らすアート
マリコ=ゲルマン 戦火の祖国への思い

『ザ・ドキュメント もやい 福島に吹く風』

99日(金)深夜125分~225分(関西ローカル)

2011年に起きた福島第一原子力発電所事故をアートで表現する「もやい展」。“もやい”とは荒縄の結びから転じて、人と人のつながりを意味している。主催者である和歌山出身の写真家・中筋純さんを中心に人と人とのつながりを描いた『ザ・ドキュメントもやい 福島に吹く風』を9日(金)深夜125分からカンテレで放送する。

中筋さんは廃墟撮影の一環で、チェルノブイリ(チョルノービリ)原発に行き、今もなお続く事故の現実を目の当たりにする。東日本大震災の原発事故後は福島にも通い続け、5年前、福島に思いを寄せる人々のアート展「もやい展」を始めた。来場者の1人だった井上美和子さんは語り部となり「もやい展」で朗読劇を披露。井上さんは祖国の惨禍に心を痛めるウクライナ人アーティストに来日を呼びかける。アーティスト、マリコ=ゲルマンはチェルノブイリ原発事故で胎児被曝し、甲状腺障害に苦しむ人生を送ってきた。来日に応えたマリコは、祖国と福島で甲状腺に問題を抱える人々の思いを作品に込める。

 マリコは「私の人生を測れるものを探そうと決心し、毎日飲んでいる薬の数で測れると思ったので、薬の包材を集めることにしました。2年間集めて、随分な量の包材を見たとき、私は薬局のおかげで生きていると思いました。私と同じ問題を抱えているけど、話せない人たちがたくさんいるので、この問題について他の人たちに説明する必要があると考えました。小さい頃によく入院していたことから、ウクライナの病院で一般的に使われているガラスブロックを社会から隠された人の体に見立てて、薬の包材を中に入れることにしました。そして、ガラスブロックに光を当てることで、同じ問題を抱える人たちが少しでも注目されたら、他の誰かがこの問題について語ってくれると思ったんです」と作品を制作するに至った動機について語った。

 マリコは4年前にもガラスブロックを使った作品をウクライナで披露している。今回の作品との違いについて聞いてみると「4年前に作ったガラスブロックの作品は“私の叫び”でしたが、今回は経験をシェアしたかったので、この作品への参加を呼びかけました。何人かの方が薬の包材を送ってくださって、甲状腺がんを患った女の子の話も聞くことができました」と説明した。

 作品を制作する上での苦労について「最大の苦労は、戦争のことで私がとても敏感になっていることでした。毎朝、ニュースを読むことから始まりました。当時、両親がチェルニーヒウという国境近くにいて、そこにはロシア軍がいました。福島の人たちともっと時間を過ごしたかったのですが、心の余裕がなく、空っぽで、時には罪悪感を覚えました」と話した。

 マリコ=ゲルマンのアートに込められた祖国と福島への思いをぜひ感じていただきたい。

【番組概要】

◇タイトル 『ザ・ドキュメント もやい 福島に吹く風』

◇放送日時 99日(金)深夜125分~225分(関西ローカル)

◇スタッフ

ディレクター:宮田輝美

撮影:登島 努

編集:北山 晃

プロデューサー:萩原守