伊藤沙莉が言われるとうれしいこと、「○○と言う勿れ」という“言われたくない”言葉を語った。
毎週月曜21時よりフジテレビで放送されている、ドラマ『ミステリと言う勿れ』は、菅田演じる天然パーマがトレードマークの主人公・久能整(くのう・ととのう)が、淡々と自身の見解を述べるだけで事件の謎も人の心も解きほぐしていく、令和版・新感覚ミステリー。
第1話の放送後に見逃し配信がフジテレビ歴代最高を記録するなど、話題を集めている本作で、整を事件捜査に巻き込む新人刑事・風呂光聖子(ふろみつ・せいこ)を演じる伊藤にインタビュー。撮影現場の裏側や、2022年の抱負を聞いた。
<伊藤沙莉 インタビュー>

──原作を読んだ草ヶ谷大輔プロデューサーが「風呂光役は伊藤さんしかいない」と思いキャスティングしたそうですが、オファーを受けたときの心境はいかがでしたか?
私はどちらかというと強気な女性をやらせていただくことが多いので、意外な目の付けどころだなと思いつつ、だからこそ声をかけていただけたことも、頑張る女性を演じさせていただけることもうれしかったです。
風呂光は芯の部分で言うとすごく強い女性ですが物腰が柔らかく、ポンコツなわけではないですが、刑事としてはまだ新人のおどおどした感じがある役。今までに演じたことのないキャラクターを演じさせていただきました。
──オファーを受けるにあたり、迷いはなかったですか?
ないですね。基本的に「ちょっと待ってください!」とマネージャーさんが慌ててしまうくらい、私自身にはNGがないんです。なんでも「やります!」とすぐ言ってしまうので、マネージャーさんがコントロールしてくれないと、パンクするほど受け持ってしまうという癖があります(笑)。
ただ、私、お芝居や公共の場ということは関係なく、もともとリアクションが大きいんです。狙っていなくても、シンプルに反応をしたら変顔になっちゃうということが結構ありまして。そうなると風呂光役が成り立たないので、普段のおちゃらけた雰囲気を引っ込めるのが大変でした。今回、今までで一番控えめの演技をしていると思います。

──そこにつながるのかもしれませんが、菅田将暉さんが「伊藤沙莉さんは、今回が一番綺麗に見えた」とホームページにコメントを出されていましたね。
なんか、そう言ってくれているみたいですね(笑)。うれしいです!ひたむきに見えたのかな。やっぱり、今までどちらかと言うと三枚目の役が多かったので、ギャップが大きかったのかもしれないです。
この前、バラエティ番組の収録で菅田さんにお会いしたのですが、「『ミステリと言う勿れ』でファン増えるんじゃない?」と言われたので…期待しています(笑)。

──原作の漫画はご存じでしたか?
正直言うと、読んでいませんでした。ただ、スタイリストさんや私の周りにいる方にファンが多い作品だったので、タイトルを耳にすることはすごく多かったです。
出演が決まってから漫画を読んだのですが…整が発する言葉や考え方、知識が、心理学をもとにしているからこそ万人をうなずかせることができるもので、すごい作品だなと感じました。
「そうか。そう考えればそんなにイラだつこともないか」と、自分の中になかった考えを知って、納得する瞬間は気持ちがよくて、好きですね。“考えること”のヒントをたくさん与えてくれるところに魅力を感じる作品です。
──原作や台本を読む中で、風呂光役をやるというのは、すぐにイメージできましたか?
「なんでこれが私?」ということは、意外と思わなかったかもしれないですね。風呂光は堂々と態度や言葉に出さないながらも、揺るぎない“何か”を持っていることが感じられて、その揺るぎないものを軸に、なんとか頑張ろうとしている様に共感ができたので。風呂光なら、(考えていることが)分かるし、愛せるし、疑問なく寄り添うことができると思えました。
──伊藤さんご自身が大切にしてる揺るぎない“何か”がもしあれば、お聞かせください。
私の場合は、「なるべく笑っとく」とか、そんな程度です(笑)。ただ、小さいことでも続けていると、意外とその人間を作っていくんじゃないかなと感じるんですよね。一つひとつの小さいことが積み重なって、人はみんな唯一無二なっていくんだろうな、と。

──とても人気のある作品が原作ですが、風呂光を演じるうえで意識したことはありましたか?
今回、風呂光を私がやる意味は絶対に持たせたいなと思っていて。原作は絵であり、動いていないのでモノマネのしようがないんですけど、ファンの皆さんの頭の中で動いてしゃべっている風呂光が崩れ落ちないように、なるべく(原作ファンからの)「違うんだよ!」という雄たけびが出ないように、風呂光にとにかく寄り添いました。
あとは、演じながら菅田さんや監督に「こういうことでいいと思いますか?」と、かなり相談もしましたね。「いいって、言ったよね!」と、責任を細々と分散させて、ずる賢く演じていました(笑)。
──タイトルにちなんで、「最近身近にあったミステリ」をお聞かせください。
この前デパートに行ったときに、フロアマップを見に行ったら、前に女性がいたので、私は後ろから遠目に見ていたんです。そうしたら、その人がすごい勢いでバンって振り向いて、ぶつかりそうになり、「ちょっと!」みたいに文句を言われて。私はちゃんと距離をとっていたのに。
とにかくびっくりしちゃったんですけど、そこまでして急いで行きたかったお店って、どこだったんだろう…というミステリです(笑)。
正直、自分勝手だなと思いましたけど、私はすでに『ミステリと言う勿れ』に出会っていましたから。イラだつこともなく、整のように「この人は、なんでこんなことをするんだろう?」という考え方ができて、すごく冷静でした。『ミステリと言う勿れ』のおかげで、以前よりも広い心が持てている気がします(笑)。

──もう一つ、タイトルにちなんで、伊藤さんご自身に「○○と言う勿れ」という言葉はありますか?
「男らしいと言う勿れ」ですね。私のことを知らない人ほど、男っぽさを感じているようで、よく「男らしいね」と言われるんですよ。そう言われることで、自分の中にある、小さな小さな乙女心が周囲に気づいてもらいづらくなるんですよね。そうなると…プライベートを充実させることができなくなっちゃいますから(笑)。「男らしい」と言わないでほしいです!
逆に、友だち以外の人が乙女心に気づいてくれると、本当にうれしくて、「(照れながら)そうなんですよ~ふふふ!」と言っちゃうかもしれません。ただ、ちょっと複雑かもしれませんが…「かわいい」とかそういう言葉は、言われるとどうリアクションをしたらいいか分からないので、言葉に出さなくて大丈夫です(笑)。
──最後に、ドラマ『ミステリと言う勿れ』からスタートした2022年の目標をお聞かせください。
今回の風呂光役もそうですが、今までやったことのない役に挑戦できる気がしているので、どんどん新しい自分と出会っていけたらいいなと思っています。そして、今年こそ、実家の家を建てたいです!
──大きな目標ですね!建てられそうですか?
少し無理かも(笑)。でも、今までは夢としてお話していましたが、ちゃんと目標レベルに持っていって、現実的に家を建てることを考えたいなと思っています。
