二宮和也の俳優としての力量や人柄、撮影時のエピソードについて、『潜水艦カッペリーニ号の冒険』の馬場康夫監督が明かした。
2022年1月3日(月)21時より放送される二宮和也主演、有村架純共演の新春スペシャルドラマ『潜水艦カッペリーニ号の冒険』(フジテレビ)。

第二次世界大戦中に運命的な出会いを果たすことになる、厳格な日本海軍軍人と陽気なイタリア人たちの国境を超えた友情と恋を描く本作でメガホンを取るのが、ホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫だ。
馬場が「一気に引き込まれた」という実話に着想を得て、数々のヒットCMを世に放つトップクリエイターの澤本嘉光が脚本を執筆。構想から25年の時を経て、CG技術を駆使した壮大なスケールで映像化が実現することとなった。
映画「私をスキーに連れてって」(1987年)、「彼女が水着に着替えたら」(1989年)などの監督としても知られる馬場だが、テレビドラマの演出を手掛けるのは本作が初となる。そんな本作への思い、主演の二宮や有村らキャスト陣について聞いた。
<馬場康夫監督 インタビュー>
――25年前、実話に着想を得てとのことですが、どのような経緯があったのでしょうか?
知人のイタリア人からこの潜水艦の話を聞きました。潜水艦で潜っている間に敵と味方がひっくり返っちゃったなんて、「そんなことあったの!?」と一気に引き込まれました。
世界で一番軍規が厳しくお国のために命を捧げようという決意のある帝国海軍軍人と、かたや「食べて歌って恋をして」が人生のキャッチフレーズともいえるイタリア人が、同じ潜水艦に乗って戦っていたという話が、カルチャーギャップがあって、すごく面白いと思ったんです。
そのとき、フジテレビの石原隆さん(現・日本映画放送社長)に伝えたら共感してくれて。「いつか映画にしたいね」と、どうしたら企画が成立するか、話をしていました。
紆余曲折ありながら、今回フジテレビさんが腰を上げてくれて、二宮さん主演、有村さん共演という形で一気に話が進んで。そのときには、ドラマ化を前提に話をしていました。
――脚本の澤本さんにはどのタイミングで依頼したのですか?
澤本さんが映画「ジャッジ!」(2014年)や映画「一度死んでみた」(2020年)を書く前にお願いしていました。最初のプロットから、何度も何度もブラッシュアップを重ねて。おそらく近頃の日本のドラマで、最初のプロットから撮影までにかかった時間と手間は、この作品がNo. 1なんじゃないかと思います。
当初、澤本さんと考えていたのはコメディでした。それが、脚本が進むにつれ、コメディもありつつ人間ドラマを描く部分が大きくなっていきました。
満を持してのドラマ化を知っていた二宮和也が、クランクアップの挨拶で…
――着想から25年。まさに満を持してのドラマ化になるのですね。
そうですね。これだけ時間がかかったので、“みんなの思い”という意味で言ったら、相当なものです。二宮くんも、この企画が25年前からあったもので、そこから紆余曲折あり、自分が乗った(参加した)ことで実現したというのを知っていて、クランクアップの時の挨拶でそのことに触れてくれて。それはうれしかったですし、すごく感謝しています。

――二宮さんとご一緒して、どんな印象を抱きましたか?
さすがクリント・イーストウッドが惚れ込んだ人で、“格が違う”と思いましたね。僕は「硫黄島からの手紙」をはじめ、二宮くんが出ている作品は全部見ていて、彼の技量は分かっていましたが、本当にお上手でした。
二宮くんから、現場で変な質問をされたこともないですし、一番驚いたのは、イタリア語が完璧だったこと。現場でイタリア人がみんな驚くくらい、ものすごい長いフレーズでも立て板に水のごとくしゃべるんです。本当に完璧に入っていて、ちょっと呆れるくらいでした。イタリア語のセリフは一度も間違えなかったですね。
あまりに上手いので、どうやって特訓したのか聞いたら、翻訳アプリにイタリア語のセリフで話しかけ、正しい日本語が出るまで繰り返していたそうです。外国語のセリフの練習方法として素晴らしいし、さすが、頭がいいと思いましたね。“二宮メソッド”と言っていいんじゃないでしょうか。
あと、二宮くんが演じた速水は、台本から想像できる速水のイメージとは全然違って、数段よかったですね。
――二宮さんの役者としての最大の魅力はどこだと思いますか?
僕は芝居の専門家ではありませんが、作品を見るとき、それがどんな役者さんであっても、その役者さんとしてお芝居を見るし、おそらく多くの人がそうなんじゃないかと思うのです。結局、“その人でしかない”んですよ。
ですので、役者の魅力は、その人のパーソナリティや人間力、それまで培ってきた経験だと思っていて。これまで一緒に仕事をしてきた俳優さんたちもそうですが、今回、二宮くんと仕事をしてそれを一段と思いましたね。クリント・イーストウッドも、二宮くんの演技が上手いからだけではなく、人柄に惚れたんじゃないのかな、と思いました。そんなに長い時間しゃべったわけではないですけど、とても面白い方でした。

二宮と有村は4年前の『紅白歌合戦』の司会だったと聞き、「緊張しまくった(笑)」
――ヒロインの有村さんはいかがでしたか?
有村さんは、僕が思っていたよりもロートーンで演技をされていたのですが、撮ったものをつないでみたら、素晴らしかった。このドラマが、グッとシリアスで感動が深くなった最大の要因は、有村さんかもしれないと思いますね。
もっと楽しく弾けた感じの芝居もあったかもしれないけど、全体に地に足が着いてしっかりした話になったことは、僕は超表目に出たと感じています。有村さんの芝居の計算には、参りました。
――8年ぶりのドラマ共演だという、二宮さんと有村さんのコンビネーションはいかがでしたか?
合っていたと思います。撮影の時に、4年前の『NHK紅白歌合戦』の白組と紅組の司会だったというのを本人たちから聞いて。「僕は、紅白の司会を務めた2人のドラマを撮っているのか!」と、緊張しまくったのを覚えてますね(笑)。
――二宮さん演じる速水の思い人を、元宝塚トップスターの愛希れいかさんが務めています。愛希さんは今回民放ドラマに初出演とのことですが、いかがでしたか?

やはりお上手ですね。映像作品だと、画面がアップになるので、表情のちょっとしたニュアンスが出ますが、舞台はその逆。オーバーなくらいの芝居を求められます。だから、舞台から映像に入った人は、「演技をちょっと抑えて」と言われることが多いのですが、愛希さんは、最初から映像に合わせたお芝居をしていました。どこかで練習してきたとしか思えないくらい、素晴らしかったです。
――本作の物語の鍵を握るイタリア人役の漫画家でモデルのペッペさん、料理研究家のベリッシモ・フランチェスコさん、オペラ歌手のパオロさんは、現場でどうでしたか?

僕は役者さんの芝居にあまり言うことはないのですが、あの3人に関しては生涯で初めて細かく言いました。あれほどの量のセリフを言ったことがない3人ですが、演技の経験がほぼ無いようには絶対に見えないと思いますよ。
芝居はある意味大ざっぱなんですけど、それぞれのキャラクターがちゃんと出ていて、それが演出どうこうではなくて、作品とうまくはまっていて。ペッペなんか、通訳も務めてくれましたし、みんなすごくよくやってくれた。3人とも遅刻なんかもすることなく真面目で。本当に感謝しています。
――監督は、テレビドラマ初演出とのことですが、映画との違いは感じましたか?
映画なら2ヵ月かかるところを1カ月ちょっとで撮るスケジュールなので、一瞬不安になりましたが、僕はすごくせっかちなので、テレビドラマのリズムとむちゃくちゃ合いました。
「これならできる」と思いました。スタッフもとても優秀で、驚きました。
――美術も大変、凝ったものになっているそうですね。
そうですね。特に潜水艦はテレビドラマのレベルではないほどすごいです。部分的にセットを作り、あとは模型を作ってCGで再現しています。潜水艦の中でお芝居をするようなテレビドラマはなかなかないですし、そういったシーンは珍しいと思いますよ。ぜひご覧ください。


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