『Destiny』第7話、罪深い真樹(亀梨和也)との逃避行…でも奏(石原さとみ)はちゃんと“検事”だった

公開: 更新: テレ朝POST

<ドラマ『Destiny』第7話レビュー 文:木俣冬>

「やめて〜」「ばかなこと言わないで〜」――。真樹(亀梨和也)の奏(石原さとみ)のモノマネが最高だった。

それはともかく。やられた。

「それが私の犯したふたつめの罪だった」と奏が言ったものだから、てっきり逃げると思うではないか。でも、奏は逃げなかった。……と思ったら、逃げた。

視聴者を翻弄するように、大量のおせんべいをどんどんひっくり返して焼くように、『Destiny』第7話は次々に出来事がひっくり返っていく。奏の正義(愛)が試される。そして真樹の正義(愛)も――。

(※以下、第7話のネタバレがあります)

◆“大人と子供”の逃避行

一緒に逃げようと奏にシリアスに迫った真樹だが、一転、「冗談」とやせ我慢する。ほっとして帰る奏だったが、後ろ髪引かれて……。見上げればそこはまばらな星空。

その晩、病院を脱走した真樹は、長野行きの夜行バスに乗る。バスが出発するぎりぎりで乗ってきたのは……奏だった。

朝になり、真樹のベッドがもぬけの殻で「スタッフ総出で」探していると、貴志(安藤政信)は看護師から報告を受ける。

真樹がいなくなったことは、たちまち横浜地検中央支部の大畑(高畑淳子)にも伝わる。奏はケータイの電源を切っていて繋がらない。

事務官・加地卓也(曽田陵介)は大畑に、奏と真樹の関係を知っていますかと訪ねる。大畑はものすごい切れ者かと思ったのに、この件に関して初耳のようで一瞬ちょっと焦っているようにも見える。

奏がいないマンションの寝室では、机の引き出しから指輪をみつけた貴志の表情をカットを多く割ってたくさんの角度で見せることで、貴志の感情をわからなくしている。それが逆にこわい。角度によって全然違って見える。

貴志は奏をかばって、対外的には家で寝ていることにしてくれるいい人だ。でもこんなに耐えていると、どこかでブチ切れるのではないかと心配になる。

みんなの心配をよそに奏と真樹は逃避行中。真樹は嬉しくて踊り出したいくらいと言いながら、奏の手を握り、肩にもたれる。昔のドラマにこういう画、よくあった。そのまま死んじゃう? と思わせるやつだ。実際、奏が「死んだ?」とハッとなるシーンもあった。

真樹は重病なので、奏は彼のやりたいことを静かに受け入れている。奏はすっかり大人びていて、真樹は甘えん坊の子供。やっぱり、12年間、時間が止まった人(真樹)と、成長した人(奏)の違いは大きい。

このあと、貴志や祐希(矢本悠馬)のシーンになるが、レビューではそこは飛ばして、奏と真樹の場面を見ていこう。

◆奏はちゃんと検事であった

夜になって、車の中で星空を待つふたり。

真樹:「逆だな」
奏:「ん?」
真樹:「あのときと」

12年前のあの夏の日と逆で、いまは運転席に奏がいる。ライトを消すと満点の星。立ち位置は逆だけれど、星空は変わらず無数に広がり美しい。これこそ永遠不変。思い出される過去の夢のように幸福な時間が静かに息づいている。

過去と現在のシーンが交互に出てくるときの、石原さとみの変貌ぶりがすごい。朝ドラ『てるてる家族』(03年)の頃のようなまだ垢抜けないフレッシュな大学時代と、すっかり大人びて、仕事に自信をもったしっかり者の現在と、ほんとうに別の時代に撮ったように見える。

だからこそ「わたしたちはすでに35歳で」というセリフが刺さるのだ。「逃亡した被疑者とその担当検事」という立場の差よりも、年をとってしまった感、しかも相手は35歳なのに子供みたいで、奏ばかりが年をとってしまった感がずしりと重い。

リアルに考えすぎると、態度は子供みたいなのに、20代とは違って見た目が年をとってしまった(自分も含め)ことにちょっと落胆もするだろうなあとも思うが、そこは亀梨和也、心身ともに少年感をキープして見える。変わらない星空のように。

「真樹といると真樹のばかが伝染る」というセリフもいい。真樹はおばかさんの大学生のまま。でも、家に戻れば深刻になってしまうから、大学でばかでいられたときが一番楽しかったのだ。

「あの頃が一番幸せだった」と噛みしめるふたり。ほんとうにねえ、就職すると、学生時代がなつかしく思えるものですよとしみじみ、おばさん(筆者のこと)は思う。

あの頃に戻った奏が甘え声を出してふと横を見ると、真樹が気を失っていて死んだかと思ったら――死んでない。

感情を揺すって揺すって、朝になる。清々しい風を受けながら、奏は真樹に問う。

「真樹、何か隠しているよね」

昔の恋に溺れたように見えて、奏はちゃんと検事であった。真実を突き止めるために真樹を追ってきて、真樹の身柄を確保したと警察に報告するのだ。

ここで「やめて〜」「ばかなこと言わないで〜」と茶化した口マネが入る。奏は昔から真面目だった。

「真実って何?」と尋ねたときの真樹は真面目だ。彼は確かに、奏に愛情試し行為をしているのだが、そこには単に自分の罪を正当化してほしいということではない心情が潜んでいる。

もっと奥深く、自分を理解してほしい想いである。そして、奏は、彼の潜在的な期待どおり、真樹の真実にたどりつくのだ。

それは、放火犯はほかにいるということだった。

大畑(高畑淳子)は奏に、その証拠を地道に捜査して見つけるしかないと言う。大畑は、奏は単に真樹と逃亡したのではなく、目的があったと信用していたから、大騒ぎしないように留めたのだろうか。

何かあったら「そのときは私のクビが飛ぶくらいかしら」と言っていた大畑。世の中には保身にまわる人が多いというのに、自分がクビになって済ますという覚悟の仕方、かっこよかった。それも奏がきっと真実を突き止めてくると自信があったからなのかもしれない。

それより、問題は事務官・加地(曽田陵介)のほう。彼があやしい動きをしている。

そして最大の問題は、祐希だ。彼はボーダーのネクタイをしている。そして祐希のシーンで、彼に当たるブラインドの影によって、光と影がボーダーになっている。それらが何かを暗示するようにも見えていたが、やはり……。

真樹は、カオリ(田中みな実)をかばい、祐希をかばい……とチャラチャラして見えてかなりの友人想い。それだけ大学時代が楽しかったのだなあと思う。そんな真樹を奏は救うことができるのか。

あとは真樹の健康問題。生きていてほしいという奏の願いはかなうだろうか。

最後に。真樹のモノマネのほかにもう一点気になったのが、長野で真樹が捕まって手錠をかけられたとき、絶対離れない手のつなぎ方について話したことを奏に思い出させるくだり。

取り調べのシーンといい、恋人同士が熱情を燃やすための一種のプレイのようで、シリアスな犯罪を扱っているにもかかわらず、すべてが奏と真樹のイチャコラみたいにも見えるという、なかなかすごいお話なのだ。

※番組情報:『Destiny
毎週火曜よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局

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