風祭ゆき、ドッキリだと思ったハリウッド映画出演。「すごく感動した」タランティーノ監督のエキストラへの“演説”

テレ朝POST

端正な美貌とスレンダーな肢体で人気を集め、日活ロマンポルノの黄金期を支えた風祭ゆきさん。

ロマンポルノ作品と並行して、映画『セーラー服と機関銃』(相米慎二監督)、映画『殺し屋1』(三池崇史監督)、『江戸の旋風IV』(フジテレビ系)、『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)など多くの映画、ドラマに出演。

日活がロマンポルノの製作を終了後も実力派女優として活躍。映画『キル・ビル』(クエンティン・タランティーノ監督)、映画『ゼウスの法廷』(高橋玄監督)、『嫌な女』(NHK)、舞台『OH!MY GOD!』、『南十字星へのプレリュード』など幅広い分野で活動。2022年1月7日には、映画『弟とアンドロイドと僕』(阪本順治監督)の公開が控えている。

 

◆ハリウッド映画『キル・ビル』の撮影現場

2003年にはクエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』に出演。この映画は壮大な復讐(ふくしゅう)劇。史上最強といわれた女エージェントのザ・ブライド(ユマ・サーマン)が、結婚式当日にかつてのボスの襲撃を受け、夫と身ごもった子どもまで殺されて昏睡(こんすい)状態に。4年後、昏睡状態から目覚めた彼女はボス一味への復讐を実行していくという内容。

風祭さんは壮絶な戦いを繰り広げるクライマックスシーンの舞台となる「青葉屋」の女主人を演じている。

-『キル・ビル』に出演されることになったのは?-

「日本映画が好きなタランティーノ監督が三池監督の作品が好きで、『殺し屋1』に出ている変な人を呼んで』という感じだったらしいんですよ。だから、脚本(&出演)の佐藤佐吉さんとか田中要次さん、今はもう売れっ子の高橋一生さんとかもね」

-監督に最初会ったときはどんな感じでした?-

「恵比寿のウェスティンホテル(目黒区三田)に会いに行ったんですけど、英語で書かれた台本で『こういうシーンなんだけど、ここでこうやってああやって、あなたはこうやって』って1人で全部やってくれるんですよ。いらっしゃいませって言って、その後立ち回りがあってどうのこうのという役なんだけど、どう思いますか? やりますか?って聞かれたので、『Yes! of course!!!』って(笑)」

-ハリウッド映画に出たことはご自身ではどうでした-

「本当になんてラッキー、幸運だと思いました。監督に会った後、『決まりました』と聞いてからずっと、うんともすんとも言って来ないんですよ。

『本当にあるのかしら? あれはドッキリカメラだったんじゃない?』って思っていたら、ある日突然連絡が来て、それで慌ててパスポートをチェックしたりして、急に行くことになったんですよね。

成田の飛行場に行ったらボバ(田中要次)さんと佐藤佐吉さんと(高橋)一生ちゃんがいて、あと、青葉屋で演奏していた女の子バンドThe 5.6.7.8’sのメンバーもいたんだけど、『監督に会いに行って決まったと言われてからずっと何もなかったから、ドッキリカメラだと思っていた。本当に実現したね』ってみんなで言って(笑)」

-撮影現場はいかがでした?-

「ものすごい時間かかりました。真夏の北京で撮影だったんですけど、すごく暑くて、本番でクーラーを止めるから毎日40度以上になるような状態で。もう暑くて暑くて、みんな全部扮装して準備しているのに『まだ来ない、まだ来ない』って」

-風祭さんはタイトスカートのスーツでしたね-

「そうです。ウール地で手首のところに毛皮が付いていて、暑かったんです。撮っているらしいんだけど、全然広間まで来ないで、『まだルーシー・リュー一行の足元のアップです』とか『灯籠(とうろう)のアップです』という感じで、『青葉屋』の玄関から大広間に一行がやってくるまで3日かかったんです。4日目でやっと大広間に来たの。『ああ、待っていたよー』って(笑)。丁寧に丁寧に撮る人でしたね。もう映画が好きで好きでうれしくてしょうがないという感じでしたから(笑)」

-メイキング映像などを見ていると、目を輝かせて本当に少年のようですよね-

「そうなの。だから1本のはずが、前編、後編の2本になっちゃったの(笑)。撮りすぎてね」

-北京にはどのくらい行っていたのですか-

「3週間くらいかな。最初は1週間か10日で終わると言われていて、毎日毎日撮っていても、一向に私のところまで来ない。3週間くらいいても撮り終わらず、最後のシーンは1か月後くらいにもう一度行って撮ったんです」

-血まみれのラストシーンですか-

「そうです。あの血まみれのシーンには監督も出ているんですよ。死体の役で(笑)。だからあのシーンだけは『よーい、スタート』と『カット』は、チーフ助監督が代わりに言ってるんです。出たがりだから『必ず出る』って言って。それで『カット』って言われてはじめて起き上がって、拍手をうれしそうにやっていました(笑)。

すごく感動したのは、青葉屋のお客さんたちがパニックになるシーンを撮る直前に、青葉屋の2階の大階段のところに監督がカメラを置いて、その横に立って『エキストラの皆さん聞いてください。あなたたちは今まですばらしいエキストラでいい芝居をしてくれました。でもね、これからは、ここから撮るのは、ただのすばらしいエキストラじゃダメなんです。世界最高のエキストラになってください。ここからパニックのシーンがはじまるんです』ってシーンの説明をしたんです。

同時に中国語と日本語に通訳をしながらね。それで監督はカメラの横に立ってチャップリンの映画の『独裁者』みたいに演説しているんだけど、カッコいいというか、すごいインターナショナルなシーンに出くわしたというか、そこにいられてすごく良かったって感動しました。監督のすごいいいせりふで」

-そこも映画みたいですね。あの作品を経験したことで変化は?-

「やっぱりタランティーノさんもすごく映画が好きだし、淀川(長治)さんの言葉じゃないけど、映画って本当にいいなあって。よく『映画は監督のもの』って言うじゃないですか。確かにそうだと思うんですけど、でも、その画の中に存在できるということは、すごく幸せだなあって思います」

©2020『弟とアンドロイドと僕』FILM PARTNERS

※映画『弟とアンドロイドと僕』
2022年1月7日(金)よりKino cinema横浜みなとみらいほか全国順次公開
監督:阪本順治
配給:キノシネマ
出演:豊川悦司 安藤政信 風祭ゆき 本田博太郎 片山夕 吉澤健 ほか
孤独なロボット工学者・桐生薫(豊川悦司)は、子どもの頃からずっと、自分が存在している実感がないまま生きてきた。そんな不安を打ち消すため、「もう一人の“僕”」として、自分そっくりのアンドロイド開発に没頭していた。そんなとき、ずっと会っていなかった異母兄弟の弟(安藤政信)が現われ、平穏な生活が脅かされることに…。

◆阪本順治監督と初タッグ

2022年1月7日(金)から公開される映画『弟とアンドロイドと僕』では豊川悦司さん演じる主人公の父親で病院の院長(吉澤健)と不倫関係になり、略奪婚する元看護師・山下春江役を演じている。

-阪本順治監督とは初めてですか?-

「はい。最近は自主映画みたいな作品が立て続けに何本かあったんですけど、監督が『岬の兄妹』(片山慎三監督)という作品を見て、私のことを思い出して声をかけてくれて。だからテレビドラマもいいし、舞台も好きですけど、何か映画って独特のものがありますね。

私は最初にやったのがテレビ映画という言い方をしていたフィルムで撮っていたドラマでしたし、最初にやった新藤(兼人)組の『竹山ひとり旅』にしてもそうなんですけど、映画は永遠に残るというか。日活もまた最近昔の作品をリマスターしてくれて、きれいなのをまた作ってくれたりしていますしね。

こういうことに声をかけていただいたりとかするというのがすごくうれしいです。すごくいいところでやらせていただけたなあと。やっぱり映画はいいなあって思います。だからどんなにささやかでも映画は絶対にやりたいという感じはあります」

©2020『弟とアンドロイドと僕』FILM PARTNERS

-脚本を読まれたときにはいかがでした?-

「『阪本監督って、こういうのを書いちゃうんだ。おもしろいなあ』って思いました。それで、このセットがどうしても見たくて、私の出番は終わっていたけど見に行ったんです。すごくすてきなセットでした」

-細部に至るまでものすごく計算され尽くしたという感じでしたね-

「そうなんです。すごいですよね。だから私は『どこか借りるんですか?』って聞いたら『いいえ、セットを組むんです』と言うから、『すごいなあ。今どきそんなセットを組むなんて』って思いました」

-アンドロイドの豊川さんもすごかったですね-

「すごいです。豊川さんだけど、ちゃんと違うというか(笑)」

-脚本を読んで映像は想像できました?-

「いいえ、どうなるんだろう、どういう風に作るんだろうとしか思えないというか。自分のところはともかく、アンドロイドのあたりなどは全然想像もつかなかったです」

-風祭さんは豊川さんのお父さんが院長だった病院の元看護師さん-

「はい。それで院長と関係ができて結果的に略奪して息子を出産。院長の奥さんは自殺してしまうという悲惨な話ですけど」

-豊川悦司さんとの共演はいかがでした?-

「お芝居にすごくまじめに取り組んでいて、演じる役に徹底してなれるというのはすごいなあと思いました。それで、休憩時間のときは全然そんな感じじゃないんですよね。ちょっと雑談するとすごく優しくて。

この映画の撮影は一昨年だったんですけど、豊川さんは『半分、青い。』(NHK)に出てらしたじゃないですか。そのときに豊川さん演じる漫画家の先生が、昔飼っていたペットの絵がおうちに飾ってあるんだけど、その中にボルゾイがいて、たまたま豊川さんが外を見ると2匹のボルゾイが散歩しているというシーンがあって、そのシーンで使われたのがうちの犬たちだったんです。

動物プロから話があって連れて行ったんですけど、豊川さんはセットで窓の下を見ているという画なので、実際には本当の犬は見てないんです。犬は全然別のところで散歩しているシーンを撮影して編集したので。

休憩時間のときに豊川さんに『じつはあのボルゾイ、うちの犬なんです』って言ったら、『えーっ? そうなの?』って驚いていました(笑)」

-阪本監督はいかがでした?-

「最初にお会いしたとき、すごく穏やかで『映画監督でもこういう紳士っているんだ』と思ったんですね。映画監督は紳士じゃないということじゃないんですけど」

-見た目もカッコいいですしね-

「そう。かっこいいですよね。でも、阪本監督は現場に入ったらタランティーノさんと同じで、少年がそのまま大人になったみたいな感じなんです。本当に夢中になって、ワクワク楽しそうというか、ちょっとわがままっぽいところもあって。

三浦半島の岬のほうの高台の病院の一部をお借りして、窓の外の広いルーフバルコニーのところに雨を降らすスタッフがホースを準備していて、それに加えてライトも照らさなきゃいけないんだけど、結構風が強くて雨の降らせ方なんかも大変なんですよね。

阪本監督は『あそこ雨が足りない。雨が足りないよ』とかって言うんですが、最初にお会いしたときと雰囲気が違うなあって(笑)」

-映像も美しく、ミステリアスで印象に残る作品ですね-

「そうですよね。何かある種のおとぎ話みたいな要素もあって。ずっと雨が降っているじゃないですか。絵もきれいで、この古いおうちも色加減がものすごく好きで、何か日本の感じとちょっと違うセピアっぽい感じですてきですよね」

エンツォ

ヴェイロン

◆ドッグショー、パソコン、ウクレレ、カメラ

私生活では2003年に作曲家・長谷部徹さんと結婚。夫婦で愛犬のボルゾイを各地で開催されるドッグショーにも参加されているそう。

セクシーなイメージの風祭さんだが、レーサー志望だったほどの車好きでクレー射撃、カメラなど趣味も幅広い。PC(パソコン)のスキルも高く、映画監督やスタッフ、女優仲間にPCの基本操作を教えにいったり、車のウェブサイトの作成や管理も行うほど。

「好きなんですよ。電脳というか電子ものが。だからパソコンは結構早くからやっていました。人がやっているものはやりたくてしょうがないというか、手を出したがって(笑)。

車が好きで、ポルシェが好きなので、ポルシェのディーラーのところに出入りしていて、そこで作っているオーナー向けの雑誌があるんですけど、見よう見まねで編集というか、デザイン、割り付けっていうのかな? まだWEBサイトなんてほぼない頃ですけど、すごい高いソフトを買ってインストールして。手でやるよりも早くてきれいだし簡単なので、それでやるようになり、そのうちウェブサイトの作成と管理もやるようになりました」

-カーレーサー志望だったとか-

「レーサーになりたかったんです。新聞記者の人たちのグループの1人がクラブを作っていたので、それでA級ライセンスも取ったんですよ。それでライセンスを取ってレーシングコースで練習もしたんですけど、結局出してもらえなくて」

-いろいろなことができてすごいですね。今後はどのように?-

「できるっていうわけではないんですけど、何でもやりたいんです(笑)。映画にまた声をかけていただけるチャンスがあれば、絶対に参加したいと思っているのと、あと舞台は今までやっていたようなものもやりたいし、それから今本当にライフワーク的に1年に1回、朗読劇とピアノ演奏のコラボをやっていて、それをだんだん広げていきたいという欲もあります。

父が写真家だったので私も撮ってみたいなと思って写真も習ったりして。写真の先生がなぜかウクレレをはじめて、先生の弟子たちのグループ写真展のパーティーで10人ぐらいのグループで弾くんだけど、みんな結構上手で楽しそうで、いいなあって。

そうしたら主人が何年か前に衝動買いをしたウクレレがあって、『これあげるからやりなよ』って言うので、せっかく楽器があるんだからやろうと思って、一昨年からはじめたんです。だからウクレレの弾き語りもやりたいのね。歌も歌いたいし、何でもやりたいの(笑)」

チャレンジ精神旺盛で、やりたいことがたくさんあると目を輝かせて話す風祭さん。スレンダーなプロポーションと端正な美貌が際立ち、愛車で颯爽(さっそう)と走り去る姿がカッコ良かった。(津島令子)

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