長谷部誠「良い選手だったら使われる」日本代表とクラブの両立は乗り越えるべき壁と断言

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長谷部誠
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元サッカー日本代表の長谷部誠が、3月20日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。ドイツ・ブンデスリーガにわたり14シーズン、37歳になった長谷部が、海外挑戦のワケやドイツでの成長、日本代表の価値について語った。

2008年、24歳で浦和レッズからヴォルフスブルクへ移籍した長谷部。この時、浦和はACL、Jリーグ、カップ戦、天皇杯とタイトルを次々に獲得し、クラブとして絶頂期。しかし、長谷部自身はケガなどもあり日本代表から外されている時期でもあった。「自分の中で何かを変えなくてはいけないと思って、行っちゃえ! という思いだった」と移籍を決断した当時の心境を告白。最初はイタリアのクラブからのオファーに決めかけていたが、決定する2週間ほど前にドイツからもオファーが届き、「ドイツの方が自分に合っていそう」と直感で決めたという。

新天地でチャンスはすぐに訪れた。2008年2月2日、ビーレフェルト戦。ベンチスタートの長谷部だったが、急に交代出場が決まった。当時、マガト監督から「お前が一番やりたいポジションは?」と聞かれて「ボランチをやりたい」と伝え、すぐに起用された。そのポジションには元ブラジル代表のジョズエがいて、「次の週の練習から思い切り削られた(笑)」と当時を振り返った。

ポジション争いで洗礼を受けながらも出場機会を増やしていった長谷部。この時、ハードな練習で知られ、鬼軍曹と呼ばれたマガト監督の教えがその後のキャリアに大きく影響を与えたという。例えば、走りの練習であれば「今日は1000mを6本やる」と練習内容を伝えられることが多いが、マガト監督の場合はエンドレス。10本走ったところで選手たちが「さすがに終わるだろう」と思っても、「まだだ!」と言って11本、12本と回数を重ねていったという。長谷部は「(今にして思えば)若いチームだったし、メンタルを鍛えたかったのだと思う」と理解を示した。そうした厳しいトレーニングを通して、フィジカル面だけでなくメンタル面も鍛えられた。ちなみに、当時の練習については「やりたいやりたくないじゃなくて、もう無理」とその厳しさを表現した。

番組MCの勝村政信が、「わずか数年でキャプテンを任され、大きな信頼を得るまでに、自身に変化があったのか?」と尋ねると、長谷部は、ほかの選手とクラブに行ってコミュニケーションを取るなど、少し変えた部分はあるものの、特に変えることはなく、根本の部分は日本で培ったパーソナリティによるものだと説明。「自然と周りの人たちが信用してくれるようになった」と話した。

また、長いブンデスリーガでの生活の中で、日本人選手と同じチームに在籍した経験も少なくない。福田は得点を重ねているチームメイト鎌田大地の活躍について「長谷部の助言があったから?」と尋ねると、長谷部は「僕がどう見られているかわからないですが、後輩の面倒見とかそんなに良くないんですよ(笑)」と言って、「自分で道を切り拓かないと良くないと思っていますし、大地は自分でどうにかするタイプ」と鎌田自身の力で手繰り寄せた活躍だと伝えた。

そして、チームのシーズン最高速度として話題となった「最速時速33.3km」については、「36㎞とかの人もいるので、33.3kmがすごく速いわけではない」としながらも、浦和レッズ時代に50mを計測した際に、坪井慶介やエメルソン、田中達也といった俊足プレーヤーたちに次ぐ記録だったことを明かし「意外と速いんです」と、普段のプレースタイルからはあまり感じさせないスプリント力にも多少なりの自信を持っていることを明かした。

また、ベテランと呼ばれるようになってから特別なトレーニングをしているのか聞かれると「試行錯誤して新しいことを取り入れるより、これまで自分がやってきたことの継続を大切にしている」と言い、練習量についても「年を重ねると疲れがたまりやすいので少なくしていった方が良いというイメージがあったのですが、なるべく練習して限界まで追い込むことで保てていると思っています」と話した。

続いて話題は日本代表からの引退について。「代表の負担がなくなったのでプレーが良くなったと言ってくれることがある。そういった一面もあるかもしれないけれど、日本代表という場所は、サッカーをやるモチベーションとしては本当に大きなものでした。日本代表としてドイツから日本に帰ってプレーすることは誇りで、そのためにドイツでも頑張ろうと思った。日本に帰ったら美味しいご飯を食べて、日本語で話せるのも、いい気分転換にもなったりするんですよ」と、日本代表があったからこそモチベーションを保てたと振り返った。

さらに長谷部は、日本を背負うプレーヤーたちにメッセージ。「日本代表の活動がクラブでの活動に対してどうこうという感覚は持ってほしくない。もちろんレギュラー争いはどこにいってもあるし、日本代表でプレーして帰ってきたらポジションが無くなっているというのもわかる。それでも、日本代表でプレーすることは、それ以上のものを得られると思っている」と熱弁。「本当にいい選手だったら過密日程でもクラブの監督は使う。だから日本が強くなるため、僕らがもっと上に行くためにはそこは乗り越えなくてはいけない。リオネル・メッシクリスティアーノ・ロナウドに対して、疲れているから使わないとは言わない」と提言した。

次週3月27日の放送も長谷部が出演。移籍や監督、現役生活について語っていく。

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