世界を経験した永里優季、男子サッカーでも「違和感なし」

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永里優季
永里優季

元なでしこジャパンの永里優季が、11月7日放送のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京系、毎週土曜24:20~)にゲスト出演。女子プロサッカー選手初の男子リーグへのレンタル移籍を果たし世界を驚かせた永里が、移籍の真相と手ごたえを明かした。

代表ではワールドカップ優勝やロンドン五輪銀メダル獲得に貢献、ブンデスリーガで得点王に輝き、チャンピオンズリーグを制覇するなど、数々の偉業を成し遂げてきた永里。そんな彼女が新たな挑戦の場に選んだのが男子サッカーリーグ。9月に神奈川県社会人サッカーリーグ2部のはやぶさイレブンへの移籍を発表すると、FIFAが「歴史に名を刻む移籍」とコメントするなど世界中を驚かせた。

もともと男子チームの中でやりたいという思いがあったという永里。様々な経験をする中で「その先に何があるのか?」を考えた時に、身体的なスピードやフィジカルが上回る男子サッカーの世界に行きついた。「そこで発揮できる技術を身につけたいと思い始めて、5年くらい前から本格的に目標にしてトレーニングを変えていきました」と明かした。

そして、挑戦がこのタイミングになったのは様々な偶然があった。その1つは「新型コロナ禍」。アメリカのリーグ戦が1か月で終了することになり、残りのシーズンをどうするか考えた。そしてもう1つが、兄・源気が地元・厚木のはやぶさイレブンでプレーしていることだった。

スーパースターの歴史的な移籍をきっかけに、地元・厚木は大盛り上がり。記者会見には25社を超える報道陣が集まった。また、地元企業からはスポンサーの問い合わせが殺到。メインスポンサーの会社のホームページはアクセスが激増。電気料金の一部をチームに寄付する「はやぶさプラン」は契約数が4倍に膨れ上がるなど、様々な面で永里効果が表れている。

なでしこジャパンの元エースはプレーでも影響を与えている。ミニゲームでは、細かい足さばきで男子を翻弄するなど随所に永里らしさを発揮。チームメイトで元日本代表の永井雄一郎は「ボールを蹴る、止める技術は素晴らしい。彼女がボールを持っている時の相手との間合いの作り方、その距離感は本当に上手い」と称賛。兄・源気も「引っ込み思案のイメージだったのですが、フランクに話しかけて、チームの雰囲気を明るくするのが上手になった」と変化を感じたようだ。練習中も笑顔でコミュニケーションをはかりプレーイメージを共有、道具のセッティングも率先して行うなど、性別の壁を自ら取り払って積極的に働きかけていた。

そして訪れた公式戦。2-1とリードした後半41分、ベンチスタートだった永里が、ついに女性選手初となる男子リーグのピッチへ。2トップの一角としてプレーし、後半アディショナルタイムには、相手のクリアミスをダイレクトにつないで起点となり、兄・源気のゴールを演出するなど短い出場時間の中で存在感を示した。

この活躍の裏にはプレースタイルの変化があった。「フィジカル的なスピードが相対的に劣るので、早く動き出すようにしている」と明かし、ドイツからアメリカに移った際、アメリカの方がスピーディで、そこに適応した経験があったため、はやぶさイレブンでも「大きな違和感はなかった」という。元Jリーガーの阿部敏之監督も「相手の嫌なところに常に動きを繰り返して、コンタクトをうまくすり抜けて起点になっていた」と、男子選手も参考にするべき動きだと評価していた。

男子と戦えるプレーヤーという前人未到のステージへたどり着いた永里。来シーズンからは再びアメリカ女子プロリーグへと活躍の場を移すが、世界で経験を積むうちに日本に対する思いに変化があったという。「自分の切り拓いた一歩が女性にとって新たな道標になるかもしれない」。そう考えた永里はTwitter、Instagram、note、blogなどのツールを活用し、自身の経験や考え方を発信。例えば「スポーツと性」といったこれまで日本ではタブーとされてきた話題にも深く切り込んでいる。

番組MCの勝村政信は「今、男子チームに移籍したことは、20年、30年と経った時に、永里さんがいたからこうなったんだって必ず言われるようになると思う。本当に未来が楽しみ」と永里の挑戦を称賛していた。

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