10月20日よりMBS/TBSドラマイズムにて放送される連続ドラマ『左ききのエレン』(MBS、毎週日曜24:50~※初回は25:15~/TBS、10月22日スタート、毎週火曜25:28~)。原作は、cakesで連載され人気を博したかっぴーによる広告代理店を舞台にしたクリエイターたちの群像物語だ。
本作で、自らの才能の限界に苦しみながらも、いつか“なにものか”になろうともがき苦しむ広告代理店勤務の主人公・朝倉光一を演じる神尾楓珠さんと、圧倒的な芸術的才能を持ちながら、天才ゆえの苦悩と孤独を抱える山岸エレンに扮する池田エライザさんに、役へのアプローチ方法や、お互いの印象などを語っていただきました。
――まだ共演シーンの撮影はあまりないとのことですが、お互いどんな印象を持っていますか?
池田:光一がエレンのことをライバル視しているという意識があるのですが、まだ一緒にお芝居するシーンがあまりないので、演じてみてどうかというのは分からないです。でも神尾くんを見ていると素直にお芝居を受ける方だなという印象がありますね。
神尾:エレンとしてしっかり立ってくれているので、受けられるのかもしれません。存在感ありますからね、エライザさんは(笑)。緊張しちゃいます。
池田:実はうちのお兄ちゃんに(神尾が)似すぎていて、顔を見てたら全然話が入ってこなくて、いつの間にか話が終わってたり、“お兄ちゃんと芝居してるみたい”と感じたり……(笑)。うちの叔母からも「お兄ちゃんだね」と言われましたね。神尾くんは年齢が下なのですが、あまりそういう感じがしません。お芝居に関しては、“もう光一だな”と思いました。熱血くんが頑張るよりも、何を考えているか分からないアンニュイな人の方が、光一というキャラクターに厚みが出ると思ったので、すごくピッタリだなと感じました。
――お二人とも原作を読んでいたとのことですが、オファーを受けたときは、どんなお気持ちでしたか?
神尾:少年ジャンプ作品(2017年10月~「少年ジャンプ+」にてnifuniが執筆する「左ききのエレン」リメイク版が連載開始)の実写化に出演するのが夢だったので嬉しかったです。でも僕は、光一みたいに「頑張るぞ!」というパブリックイメージがないと思っていたので、キャスティングしていただけたことが驚きでした。光一は、悩んでも腐らずに前に進む姿が格好いいなと思います。
池田:以前から漫画を読んでいたのですが、私もエレンと同じ左ききで、名前もなんとなく似ているので、親近感は持っていました。連載が始まったときは、今よりも自分に自信がなかったので、エレンみたいな役はやりたいけれど、やれるか分からないという気持ちだったのですが、読み進めていくうちに、他の誰かに演じられたら嫌だなという思いが強くなっていきました。だからお話をいただいたときは、すごく嬉しかったです。
――天才と凡人というコントラストも作品の大きな魅力だと思いますが。
神尾:僕は凡人側を演じていますが、どうしても人は人と比べてしまいますよね。そのなかで「すごいな」とか「ダメだな」と思うことも多々ある。天才に対する憧れってあるので、光一には感情移入しやすいですね。
池田:私は天才を演じるうえで、プレッシャーが結構ありました。エレンを演じていて、人に理解してもらえない苦しみを感じることがありました。孤独ですよね。天才ゆえのモチベーションの保ち方とかも……。
――お二人が人を見て「天才だな」と感じたことはありますか?
池田:俳優さんって、少なからず努力のうえに成り立っているのかなとは思うのですが、私は役柄に対して自分が没入していくまでに時間がかかるタイプなので、パッと切り替えられる俳優さんに出会うと天才なんじゃないかと思ってしまいますね。直前まで雑談していたのに、本番になった瞬間豹変する。羨ましいなと指をくわえて見ています。
神尾:でも僕は(池田みたいなタイプの方が)天才なのかなと思っていました。
池田:いやそれは努力じゃないかな。私だってできればずっとしゃべっていたいもん(笑)。
神尾:僕はサッカーをやっていたときに「こいつ天才だな」と思うことは多かったです。サッカーはうまければ試合に出られるし、努力していなくてもメチャクチャうまい奴はいました。僕は一生懸命練習しているのですが、そいつらに勝てないから「なんだよあいつ!」って言ってふてくされているタイプでした(笑)。
――ご自身のなかで「これは天才だなと」思うところは?
神尾:僕は嘘をつくのがうまいですね。真顔なので……。冗談を言っていても、冗談にとられないことが多いです(笑)。
池田:何をやるにも集中力は高いかもしれません。楽器や水彩画なども、始めると丸一日でも集中できます。持続する力はあるかもしれません。
――どんなドラマにしていきたいですか?
池田:光一とエレンだけではなく、登場人物一人ひとりがすごく個性的なので、誰かに寄り添える作品になっていると思います。
神尾:普段、人が心のなかにしまって目をそらしていることを突きつけてくる作品。自分を見つめ直すきっかけになってもらえたら嬉しいです。
取材・文・撮影:磯部正和