宮沢賢治はなぜ人々の心をひきつけるのか? 言葉の表現の可能性に迫る

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MCに伊集院光武内陶子アナウンサーを迎え、古今東西の「名著」を読み解く番組『100分de名著』(Eテレ、毎週月曜22:25)で、3月は「銀河鉄道の夜」「春と修羅」などの作品で今も多くの人に愛される宮沢賢治(1896~1933)をピックアップ。代表作を絞るのも難しいほど多面的な作品群に4つのテーマから光を当て、宮沢賢治の奥深い世界に迫っていく。原田郁子(クラムボン・ボーカル)が、童話の朗読を担当、映画監督の塚本晋也が詩の朗読を担当、指南役には山下聖美(日本大学芸術学部教授)を迎える。

3月13日の第2回は、「永遠の中に刻まれた悲しみ」と題して、心象スケッチ「春と修羅」、童話「やまなし」などを読み解くことで、人間にとっての言葉の表現の可能性に迫っていく。

この「春と修羅」は単なる詩集ではないと山下教授はいう。既存の詩の枠内におさまらない新たなものを作りたいという野心と気概が込められた作品なのだ。心象スケッチとは、ただ単に一人の人間の心のうちを描くものではない。心象とは、宇宙や無限につながるものであり、人間の心象を描くというのは、個人的なものを越えて普遍的なものをスケッチすることだと賢治はいいたかったのだという。妹トシの死への悲しみを刻印した一篇「永訣の朝」も、単に個人の悲しみだけではなく、トシが自らの身をもって示した「人間は死ぬ存在である」という絶対的な真実をこそ記したかったのである。