沖縄戦の記憶、鮮烈すぎて眠れない高齢者も…『ハートネットTV』

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8月15日(月)の『ハートネットTV』(Eテレ、毎週月~木曜20:00)は、シリーズ 戦後71年「忘れられない、雨~認知症と沖縄戦の記憶~」を放送する。「この季節になると、戦争を鮮明に思い出し苦しむ認知症の方が多いんです」6月、沖縄の高齢者施設や病院を訪ねると、こうした声を多く耳にする。4月1日に始まった地上戦が激化していったこの季節になると、当時の凄惨な記憶が克明に蘇る。長年、封じ込めていた恐ろしい記憶が……。

戦中、日本軍基地が置かれた津堅島(うるま市)。島唯一の高齢者施設「いこいの家」では、みんなで千羽鶴を折っていた。戦争で亡くした家族や友人を悼み、平和を願う。冨里ミツさん(85)は、認知症のため日常の新しい記憶は抜け落ちることが多いが、戦時中、爆撃で母を亡くした時の惨状は鮮明に思い出し、辛いという。

精神科医の蟻塚亮二さんは「痛みを伴う記憶は先鋭化して残り、それ以外が脱落する。沖縄の認知症の人は、最も強烈な記憶として地上戦の記憶が鮮明に残っていく」と語る。

沖縄戦の最高齢の語り部・北中城村に住む安里要江さん(95)も、昨年認知症を発症してから、記憶の整理がつかなくなり苦しんでいる。夜暗くなると、生後9ヶ月の娘が餓死した真っ暗な壕にいる錯覚に陥り、夜一人で過ごせなくなった。

71年目の沖縄で、認知症の高齢者たちはどのような記憶と向き合い、誰に何を伝えようというのか……。人に最後まで残される“記憶”に向き合う意味を考えたい。