自殺率ワースト県を救え、命の現場に密着

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5月9日(月)の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合 毎週月曜22:25)は、自殺対策NPO代表・佐藤久男が登場する。佐藤は、19年連続自殺率全国ワーストだった秋田県を20年ぶりに救い出した立役者で、人呼んで“日本の自殺対策のおとっつぁん”。NPO法人を運営し、悩む人々との“命の相談”を続けている。

秋田での自殺者の多くは、地元経済を支えてきた中小企業の経営者たちだった。佐藤は、15年間で1200人の経営者と面談し、自殺を踏みとどまらせてきた。佐藤が大切にしているのは、「暗闇の奥底で苦しむ人々に、一筋でも希望の光を灯す」こと。倒産を目前にするなど、深刻な状況に陥っている人々は、どうすればいいか判らなくなり、文字通り暗闇に迷っている状況に陥っている事が多いという。まず佐藤は、敢えてアドバイスをせず、徹底して話しを聞き続ける。何時間でも何日でも、心の底にたまった苦しみを吐き出させるのだ。その傍ら、複雑に絡み合った心の問題と経済問題を丁寧に切り分け、何かすぐに出来ることを見つけ、少しでも前進できたという一筋の光を感じてもらうことから始める。

さらに、弁護士・司法書士・臨床心理士・就労支援員など、あらゆる分野の民間相談員に相談できる窓口を設立。あらゆる問題に悩む人にあった解決策を提示できる枠組みを作り上げた。今、秋田大学とも連携して自殺予防の専門家を育成したり、行政や地元紙を巻き込んで、自殺予防の相談機関の情報を発信するなど、ネットワークを拡大させてきた。こうした連携は、「秋田モデル」といわれ、その中核に佐藤がいる。

今、佐藤は、秋田に代わり、自殺率ワーストになった岩手県での活動に力を入れている。釜石・大槌といった被災地で、経営的にも精神的にも不安定な旅館のおかみ、津波で母親を亡くした花屋の経営者の相談に乗っている。かつては自らも経営していた会社を倒産させ、自殺の一歩手前だったという佐藤。悩んでいたとき、仲間の経営者が自殺をしてしまったことから、この仕事を始めた。ギリギリの状態に立ったことがある自分にこそ、同じ立場の人にできることがある。現代社会のひずみと戦う佐藤の、命の現場に密着する。