マンガのドラマ化について原作者は何を思う?『グッドモーニング・コール』高須賀由枝先生に本音を聞いた

少女マンガ誌「りぼん」(集英社)で1997年から2002年まで連載され人気を博した『グッドモーニング・コール』を、フジテレビが福原遥白石隼也のW主演で初ドラマ化。2月12日(金)より、フジテレビの総合エンターテイメントサービス「FOD(フジテレビオンデマンド)」と動画配信サービスNetflixにて配信がスタートする。

本作は、両親の都合で1人暮らしをすることになった女子高生・吉川菜緒(福原遥)の部屋に、彼女が通う高校でイケメン「御三家」として有名な上原久志(白石隼也)が引っ越してくることから始まる同居ラブコメディ。中学3年生からスタートする原作の設定を高校生に移し実写ドラマとしてスタートする。

今回、原作者・高須賀由枝先生へのインタビューを行い、「意外な展開でした」というドラマ化の感想や実写化されても大切にして欲しいと願うポイントなど、原作者としての思いを聞いた。そして、『グッドモーニング・コール』を執筆していた日々から、現在、少女マンガ誌「Cookie」(集英社)にて連載中の続編『グッドモーニング・キス』に至るまでのマンガ家としての変化などを語っていただいた。


<インタビュー>

――19年前に書き始めた作品を今、実写化したいというオファーが来たときの感想を教えてください。

続編の『グッドモーニング・キス』は、連載中なので「最近、少女マンガの実写化も多いから、もしかしたら……」と思うこともありましが、『グッドモーニング・コール』は、描き終わってからも10年以上経っているので、「えええぇーーー!?」って本当にまさかの展開でした(笑)

――ドラマ化に当たり、スタートの設定が中学生から高校生に変わりましたが、原作者としてどのようなことを思いましたか?

設定の変更などについてはCookieの編集長に、「できる限り制作陣にお任せした方が良いよ」と言われていました。それに、メディア化された作品を持つ作者の方からも「作者には“こうなっていないとダメ”とか強いこだわりがあるので、できあがってきたモノとのギャップに苦しんだり、ストレスを感じたりすることがある」という話を耳にしていたので、私は基本的に口を出さないようにして編集さんにお任せしようと思いました。

――そんな中でも“ここだけは大切にして欲しい”というポイントはあったのでしょうか?

キャラクター像は大切にして欲しいということだけは伝えました。「この子はこういうことを言わない」とか「こういうことをしない」ということだけは脚本を見てチェックさせていただき、それ以外はお任せしますと。中学校3年生から高校生に設定が変わったことなどは全然気になりませんでした。

――あがってきた脚本をご覧になってどのように思いましたか?

すごく面白くて、ほとんど修正もありませんでした。それと本当に懐かしかったです。自分で書いた物語なのに「こんなエピソードあったんだ」と忘れていたのもありました(笑) 『グッドモーニング・コール』は私にとって初めての長期連載だったので、「ここで上原くんのキャラクターが確立されたのよね……」、「このときはすごく頑張って話を作ったな……」と、当時のことを思い出して感慨深かったです。

――生み出すのに苦労したエピソードは何ですか?

菜緒と上原くんがケンカするエピソードを作ろうとしたことがあるんです。二人が本気でケンカをして、どちらかが家を出ていき、仲直りをして、また一緒に暮らすことで二人の距離がグッと縮まるという構想でした。でも、上原くんがクールすぎて菜緒のくだらないケンカを絶対に買わなくて、どうしてもケンカにならなかったんです。それで担当さんに「上原くんが全然怒らないんです」と相談したら、「じゃあ、ケンカしなくて良いんじゃないの?」と言われました。私は「ケンカしなくちゃ盛り上がらない」と思っていたのですが、「盛り上がらなくても良いでしょ」と言われて、本当に目から鱗でした。それまで何とかして盛り上げなくちゃいけないと思っていたのに、キャラクター的にそうならないならしない方が良いと言われたんです。そこで初めて、展開で引っぱっていくのではなくて、キャラクターをしっかりと作って、彼らの関係性で物語を作っていくことに開眼したというのでしょうか。それは自分のマンガ家としての人生の中で大きな出来事でした。

――そうやって苦労して生み出された物語が、世界140カ国に配信されることについてどう思われますか?

全少女マンガの中で『イタズラなkiss』が一番好きで、マンガ家人生の目標とも言える作品です。ドラマ化のお話を頂いたとき、『イタキス』のドラマが台湾や中国などで大人気になって、俳優さんたちもすごい人気だったという話を聞いて、「『グッドモーニング・コール』でも同じようなものを目指したい」と言われたときは本当に驚きました。本当に光栄だと思いましたし、福原さんや白石さんにも同じように人気者になって欲しいですね。

――ドラマ用に作られたキャラクターが『グッドモーニング・キス』に登場すると伺いましたが?

そうなんです。原作の『グッドモーニング・コール』には一切出てきていない桜田通さんが演じる菜緒の幼なじみの篠崎大地くんというキャラクターなのですが、ドラマスタッフの方々とお話ししているうちにイメージが沸いてきて、マンガに出せそうだなと思って打ち合わせしたらサクッとできちゃいました(笑) 先日発売したCookieの最新刊(3月号)から出ています。

――篠崎大地くんもそうですが、外部から刺激を受けてイメージが沸き上がることは多いですか?

最近はすごく多いです。『グッドモーニング・キス』では、上原くんが大学院のドクターコースに行くくらい勉強ができる人になっていて、それを描くために、地元の理系の大学院に取材に行かせてもらいました。そうしたら研究室の方々が素敵な方たちで、2年半前に初めて取材に行って以来ずっとお付き合いさせていただいていて、月イチくらいで一緒にごはんを食べに行ったりしています。皆さん面白くて、あるときは「ギリシャで国際学会があるから行きます?」と言われて、そんな機会絶対にないからとついて行ったり、フランスの研究所を1週間くらい取材させていただいたり、これまでの私の人生の中では絶対に感じられないような刺激を受けています。モノの考え方が全然違う人たちと出会うことで、こんな世界があるということを知って、それを作品に活かせたらと思っています。そうやって日常の体験の中から拾ったきっかけを昇華しているので、もはや創作ではないですね(笑)

――以前とは創作スタイルに変化があったのでしょうか?

私は18歳でマンガ家になって、その頃は『りぼん』という雑誌で描いていたのですが、それが本当に忙しくて、外に出ていく暇もなくて、外部との接触はほとんどなくなっていきました。そうすると自分の中だけで「うーん」って考えなくちゃいけない。それに当時は若いですし、豊富な体験があるわけでもないので、妄想しながら描いていました(笑) 今なら経験を咀嚼して作品に活かすことが自然にできるようになりましたが、若いときは、日常に転がっていることを描けば良いと言われても、自分が経験したことや感じたことではマンガのネタとしては弱いだろうと思っていましたし、当時はそこから物語を生み出すだけの術を持っていなかったから、「もう何も出てこない!」と、いっぱいいっぱいになりながら描いていました。

――『コール』から『キス』に至るまでの先生自身の成長がマンガ家として大きく寄与しているんですね?

自分が大人になって、人生を俯瞰することがある程度できるようになってきたことが大きいと思います。若いときは目の前で起こっていることだけしか見られていなかったのですが、物事には様々な角度があることがわかり、その視点でマンガを書けるようになったので、色々な価値観を持った血の通ったキャラクターを描けるようなったと思います。

――ドラマをご覧いただく方にメッセージをお願いします。

今回、ドラマ化していただくことになりましたが、現場にお伺いしてもとても良い雰囲気で、スタッフ・キャストの皆さんが本当に大事に作ってくださっているのが伝わってきます。連載中の『グッドモーニング・キス』の原点となるキャラクターたちと世界観がどのように広がっていくのか、私も楽しみにしています。